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断り
うっときた。クラスメートは全員で21人。
「2人組、ペアを作りましょう」
確実に1人余り、その余り物がどこかへねじ込まれるシステム。このシステムを作ったやつを、1週間分、いや1ヶ月分のパワーを込めて殴りたいほど、残酷。
結局わたしは、色々あって幼馴染の|桃花《ももか》と組むことになった。正直、ぐいぐい来る桃花は好きと嫌いの間にある。嫌いでもなく、かといって特別好きでもない。そんな微妙なラインに、彼女は立っている。
人権学習で、ペアになって発表する。人権について考え、2人の意見をまとめ、発表する。桃花は、「アイディアは出すから、まとめるのと発表するの、お願い!」と遠慮なく頼んできた。
ここで、わたしの1番嫌いで消えてほしいスキル発動。その名も、「全然大丈夫だよ」。効果は、どんなに無理でも必ず頼み事を引き受ける。イコール、断れない。本当に大丈夫な時があっただろうか。いや、ない。反語が使えるほど、わたしはこのスキルが大嫌いだった。
「うん、大丈夫だよ」
自然に出来た言葉を、デジタルのように取り消したい。
「本当!?ありがとー!」
面倒くさい。喋るのはどちらかというと嫌いで、みんな聞いてないと思うと途端に面倒くさくなる。どうせろくなアイディアも出せないくせに、と内心毒づく。やるせない気持ち。
「えへへ、|美弥《みや》ちゃんありがと!」
別に好きでやっているわけではない。こういう子を見ると、世渡りが上手だと本当に感じる。日本人は、嫌だと思った時、嫌だとはっきり言えない。そういう弱点を上手に、見事について、自分の思い通りにする。こういう子でありたかった。えっと戸惑って躊躇しても、持ち前の軽やかで明るい笑顔で、愛想を振りまき、途端にその気にさせる。こんな平々凡々な枠におさまりたくない、とは少し違うかもしれなかった。
その後、淡々とわたしはまとめていった。普通なアイディアが出た。またしても、桃花は言う。
あ、メモ取らなきゃ。
そう思った。メモは必然的に必要だ。あー、面倒くさい。また桃花に頼られるのは鬱陶しい。
今回扱っているのは、『頼る関係』。桃花ばっか頼って、わたしは受け身。受動的。
「あの」
頼られるのが断れないのがダメなんじゃない。
「え?」
「メモ、取ってくれない、かな」
頼ることが出来ないのがダメだ。
きっと、自然に頼ることが出来るようになるのなら。
きっと、自然に断ることが出来るはずだ。
あれれ〜めちゃくちゃキラキラハピエンじゃ〜ん