公開中
7 ヒメユリの独白
ヒメユリ視点
私はヒメユリ。
花の国に暮らしていた、百合の精霊だ。
私は一年前に死んだ。あの時はヘマをしちまったよ・・・。
ああ、こんなこと言われても、君にはわからないよな。きちんと順を追って説明するから安心してくれ。
まず、私達の存在について、だな。
簡単に言えば、私達は宇宙人だ。つまりは、地球とは違う星___精霊の星に暮らしていた。
その星には、花の国、空の国、宝石の国、音の国、水の国があった。
そして、その国全てに面する湖、フェミニ湖が全ての元凶だったんだ。
フェミニ湖は水の国にたった1人で暮らす、アクア女王が管理していた。だが、アクア女王は何者かに暗殺され、フェミニ湖に有害物質が流された。
そう、クラリスが開発した、怪異症候群のウィルスだ。
怪異症候群のウィルスは飛沫感染はせず、水を通して感染する。これだけ聞けば「え、そんなんすぐ収まりそうじゃない?」って思うかもしれないね。でも、そうじゃないんだ。
あのウィルスは特殊でね。水に溶け込みさえすれば、爆発的に増殖しながら広がってしまうんだ。そして、それを知らずに水を飲んだ国の人々は、次々に怪異に変貌して暴れ始めた。花の国以外の国は全て滅亡してしまったんだ。
私は宝石の国、空の国、音の国の人々と関わりがあったから、一部の人は助けることができた。でも、怪異と戦っている最中に私はフェミニ湖に落ちたんだ。
多分その時に、水を飲んでしまったんだろう。それでもすぐには気づけなかった。その時私は3国の人々に頼み事をしたんだ。「私が死んでしまったら、みんなの力を私の仲間に託してくれ」とね。
そして仲間たちのところに戻った時には、私はもう手遅れだった。
すでに怪異に変わりつつあったからな。
サクラ「ヒメユリちゃん?ヒメユリちゃん⁉︎」
ヒメユリ「すまない、サクラ・・・。私、感染しちまったみたいだ」
サクラ「ヒメユリちゃん!絶対助けるから!」
ヒメユリ「いや、いい。もう私は助からない」
サクラ「そんな!みんなで生き延びようって決めたじゃん⁉︎」
ヒメユリ「サクラ、わかってくれ。私は・・・君達をこの手で殺したくないんだ」
サクラ「いや、いやあぁぁぁぁぁぁ!ヒメユリちゃん!ヒメユリちゃぁぁぁぁん!」
スミレ「もう無理よ!早く諦めて!」
サクラ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!嫌だ!死なないで!“どこにも行かないで!”」
ごめんな、サクラ。私は生きていられなかったよ。けど、そのお詫びになるかわからないが・・・。幽霊となってずっと君を見守っているよ。
幽霊の暮らしも意外といいものだ。割と自由がきくしな。
さてと、サクラの夢の中で、また会いに行こう。私が知る情報を伝えなきゃいけないしな。
おっと、かなり自分語りが長くなってしまったな。
話を聞いてくれてありがとう。
亡くなったヒメユリのキャラデザ
https://firealpaca.com/get/88vjudoV
裏話
実はヒメユリの由来は、沖縄の『ひめゆり学徒隊』から来ています。
怪異に1人立ち向かい、サクラ達を守って亡くなったという設定から、ヒメユリが妥当であると考えたんです。
この物語に込めたメッセージは、『戦争の悲惨さ』『病の恐怖』です。戦争の要素を入れつつ、怪異になる病気に立ち向かうストーリー・・・つまり、コロナ禍から立ち直りつつある今の日本を風刺した物語なんです。