消(イレイズ)③

鎖を引き出し 瞳を紅く輝かせている｜燐《りん》・ ｜凍矢《とうや》を洗脳し、両手から光を放ち 瞳を同じく輝かせている｜消《イレイズ》は 互いに睨み合ってる。 ｜消《イレイズ》:「こんな感じで戦うのは初めてだな ｜鎖《チェイン》。模擬戦や組手ではない、純粋な命のやり取り…… 俺が満足するまで壊れてくれるなよ」 燐:「凍矢 行くよ」 ｜消《イレイズ》:「チッ！ まだその名で呼ぶのかよ、俺は｜消《イレイズ》。｜睦月凍矢《むつき とうや》は もう目覚めねぇんだよっ!!!」 ダンっと地面を蹴ると 激しい戦いが始まる。左腕に鎖が巻き付くと 鋭い刃に変わった。どうしても｜鎖《チェイン》を使うとなると遠距離メインになるため、燐は少しでも戦略を増やすため 手甲に剣先を足したような フィクション世界では【手甲剣】と呼ばれるような武器を作り出した。ツインダガーと手甲剣が激しくぶつかり 高い金属音のような音が鳴り響く。｜消《イレイズ》に触れてしまうとジュッと音と共に消えてしまうが 薄い鎖を何重にも重ねているため 表層が削られるだけで済んでいる。だが それだけで戦えるほど 凍矢は甘くなかった。 燐「うぐっ!!!」 凍矢の蹴りが燐の頭部に命中し、こめかみから青い血が流れている。 ｜消《イレイズ》:「女にしては なかなかやるが、まだ甘いな。｜鎖《チェイン》、その｜鎮静の指輪《邪魔物》を取ってやるから大人しくしてろ」 凍矢が指輪に触れようとした瞬間だった。 ｜消《イレイズ》:「！！！？　凍矢！ おい凍矢!! 大丈夫か!!!?」 　突然｜消《イレイズ》が凍矢の名前を呼び始め、後ずさり始めたため、燐たちの頭の中は【？】が埋め尽くしていた。 --- 凍矢の精神世界 --- 凍矢:「りん…… りん…… どこにいるの？　イレイズさまぁ……。怖いよ…… 俺を一人にしないで……。りん…… りん…… どこいるの？」 ｜消《イレイズ》:「バカな！　あれだけ深く洗脳したのに覚醒したのか!!?　いやそれより、かなり不安定になってしまっている!!! くっ!!!」 　身体はガタガタと小刻みに震え、大の男が大粒の涙を流し、光の消えた 焦点の定まってない目で下を向きながら 手探り状態で あてどなく探し回っており、いつ【壊れてもおかしくない】程に危険な状態だった。同じようなセリフをボソボソと呟いており ｜消《イレイズ》が精神世界に現れたことにも気づいていなかった。 凍矢:「りん…… りん…… どこにいるの？　怖いよ…… 俺を一人にしないで……。イレイズさまぁ……怖いよ……たすけて……」 ｜消《イレイズ》:「凍矢！ 凍矢ァ！ 大丈夫か!!!?」 　自身の主として心酔している｜消《イレイズ》の声が聞こえると 声の方向や気配を頼りに這いずるように移動し、ジーンズ→Tシャツへと すがるようにして話しかける。 凍矢：「イレイズさまぁ……。怖いよ…… りんが……遠くに行っちゃう……。怖いよ…… イレイズさまぁ…… たすけて……」 ｜消《イレイズ》:「もはや 別人格や相棒関係を通り越して《《依存》》だな。燐が生きている・存在することが 凍矢の存在意義となっちまっているのか。凍矢を洗脳したが 俺も別に壊す気はないし、せっかくの《《餌場》》を逃したくはない。まぁ 俺自身は【不老不死】だし、ゆっくりと見守るか。 ・・・・・・凍矢、これからも お前はお前の存在意義を、【芯】を貫いていけ。もし揺らいで だらしなくなっちまったら 俺はいつでもお前を乗っ取ってやるから 覚悟しとけよ？」 　｜消《イレイズ》は悪戯っぽい笑みを浮かべ 優しく凍矢を抱きしめると 全身が光の粒子となって凍矢に吸収される。凍矢の震えが止まり 滝のような汗が流れていた。 鎮静の指輪を填めると 目に光が宿り 発光していた瞳も赤色に戻った。 凍矢:「お、俺は…… 一体何を……？」 燐:「とうやぁ よかったぁ…… __ﾌｯ__」 凍矢:「燐？ 燐!!? 大丈夫か!!?」 凍矢にもたれかかるようにして 燐は気を失ってしまった。 ヘイル:「燐なら大丈夫だ、トランサーとしての力を使いすぎたのと 凍矢を心配しすぎたんだよ。 命に別状はなさそうだな」 バングルを戻し 獣化が解除されたメイアとヘイルが凍矢に近づいてきた。もちろんヘイルの目は緑色に発光していた。 凍矢:「メイア…… ヘイル…… その、色々世話をかけたな。メイア、生体兵器なんて言ってしまってすまなかった。こんなこと 今となってはタラレバになってしまうんだが 俺は燐を取られてしまうんじゃないか という焦燥感に駆られていた。もう俺といてくれないんじゃないかって…… ただの意地っ張りだったんだ」 凍矢は左手で燐を抱きつつ 右手で前髪をクシャッと握りしめている。 メイア:「ううん、気にしないで。この力は私の一部、私の生き方なの！ 相棒のヘイルにだって 邪魔はさせないんだからね。燐も凍矢も しっかり休んだ方がいいよ」 凍矢:「メイア ヘイル。 記憶探し、俺にも協力させてくれ！ 拳と拳でぶつかり合って俺も 燐と同じ気持ちになれた気がする。｜逢間市《この街》のことなら 俺達に聞いてくれ。生まれも育ちも ずっと逢間市だからな」 ニィっと笑うと 気力が限界を迎えたのか 凍矢はそのまま後ろに倒れてしまう、そこはメイアが受け止めてあげた。 メイア:「いいコンビだね、燐と凍矢って。 ねぇ ヘイル、私達って もう何年一緒にいるっけ？」 ヘイル:「｜研究所《ラボ》に誘拐されてきたのが5歳の頃。俺は その時から見てきたから もう15年は一緒にいるか。ただ、キメラとして完成したのは15歳の頃だから メイアと完全融合してまだ 5年ってところだな」 メイア:「これからも私のこと 支えてくれる？」 ヘイル:「__ﾌﾌｯ__ 俺は俺だ、好きにやらせてもらうさ。その中には ご主人様と共にいるってのも含まれてるぜ？」 コツンっとメイアのおでこをつつく。 メイア:「まーーーた ご主人様ってwww まぁいっか 最強のキメラと最強の人工知能…… これからもよろしくね」 メイアとヘイルはグータッチを交わすと ヘイルは燐を メイアは凍矢を抱き抱えて 事務所まで連れ帰る。ベッドに2人を寝かせると、起こさないように出ていった。