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2.メフィスエル
僕の物心がついた頃には、父はもういなくなっていた。
母によると、事故に巻き込まれただとか、
まぁ、その母もいなくなっちゃったけど。
だから、僕は今、1人だ。
もう寂しさも無くなったけど。
僕の父は悪魔で、母は天使だったらしい。
つまり僕はハーフってこと。
でも、後から知ったんだけど、元々天使と悪魔は仲が良くなかったみたいで、僕の両親は殺されたんだって。
法律ってのがあるらしい。お互い関わってはいけません!みたいなね、
だから、その裏切り者の子供の僕は、指名手配されてるってわけ!
で、僕は考えたのさ、天界と魔界に僕の居場所がないのならば、人間界に行けば良いのでは…と、
だから、今は人間に化けてる。
人間を騙すのは簡単だからね、僕が捨てられたって言ったらみんな信じてくれたし、村でお世話してくれることになった。
「メフィー?いるー?」
…
「はーい、いるよー」
と、僕は答える
村、と言っても小さな村だ。当然、田舎だ。
透き通るような空気、はっきりと聞こえる鳥の鳴き声、川の流れる音。
場所選びは正解だったようだ。
さっすが僕、センスある!
「ちょっと、これ運んでちょうだい!」
と、おばさんはまた叫ぶ
別に、聞こえるからそんなに叫ばなくていいのに。
今日は村で僕の歓迎会だ。元々人が少ない村だから、こうやって歓迎会を開いたりするらしい。
僕が歓迎されてる側だってのに、なんで手伝わなければいけないのかと、ちょっと不満があるが、まぁいい。
僕が人間じゃないことはバレてないはずだ。バレても別に村ごと燃やせば問題ないだろう。
歓迎会が終わって、日も沈み、あたり一面真っ暗になる頃だった。
ぐっすり寝ていたというのに、周りから叫び声のような悲鳴が聞こえた。
外から聞こえてきている。
僕は、外に出て様子を見に行った。
だけど、僕が外へ出て行った時にはもう叫び声も聞こえなくなっていた。
村のみんなが《《何か》》に殺されたみたいだ。
しばらく歩くと、人影が見えた。村の人だ!と、思い近づいた。
だけど、背中に羽が生えてるように見える。もしかすると、天使か、悪魔なのかもしれない。
僕を追ってきたのだろうか?
もうちょっとよく見たら、どうやら悪魔っぽい。
それに、僕を追ってきたんじゃなくて、人間界を悪魔のものにするだとかそういう計画があるらしい。
「なーんだ、心配して損したじゃないか。」
すると、連中が一斉に僕の方に振り向いた。
どうやら僕、無意識に声に出していたみたいだ。
「おい」
わっ、なんかこっちに歩いてきてる。
とりあえず逃げよう。そうしよう。
だから走った。どこへ走れば良いのかわからないけど、とりあえず走った。
めっちゃ速い。追いつかれそう。
僕はその辺の家に隠れた。多分しばらくは見つからない。多分。
「うぅっ…ぐずっ」
なんか、泣き声っぽい聞こえてくる…。もしかして、まだ生きてるやつがいる?
僕はその声の主を探した。
だけど、どこにもいない。物置とかか?と、思い開けてみると、やっぱり。
中に子どもがいた。
しばらく泣いていたが、その子も僕に気がついたみたいで、泣くのをやめた。
「…お兄ちゃん、だれ…?」
と、聞かれた。
歓迎会に参加していなかったのか?いや、おかしい。村のみんなが参加してると聞いた。
じゃあこいつは村の子どもじゃないってこと…か?
「あー、僕の名前はメフィスエル」
そいつが急に黙ったと思ったら、顔に笑いを浮かべ、こう言った。
「みつけた。」