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no title
酔生夢死
日替わりお題の「滅亡」を若干使って書きました~
登場人物は部誌で出した子たち。百(もも)と玲(れい)です
いつか部誌作品も掲載したい
「地球最後の日には、何したい?」
ふとそう尋ねると、隣で退屈そうにギターの弦を爪弾いていた百がえ?と呆れたような声を上げる。
なんだいなんだい、恋人のそんな、他愛ない質問にも答えてくれないほど忙しいのかい。とてもそうは見えないけどね!
心の中だけでそんな反論をしていると、隣から聞こえていたギターの音が止む。
すらりとした白い指が、薄く化粧の施された顎に触れる。考えるときの百の癖だ。
「なんだっけ? 地球最後の日?」
「そう。百ならどうするのかなって」
なんてことのない雑談だ。真面目で優しい百はきちんと考えてくれているらしいけど。
なんだか罪悪感がある。ここまで真剣に悩ませるつもりじゃなかったのに。別に、ギターを弾きながらだろうと僕は一向にかまわない。なんなら、僕は百がギターを弾く横顔が結構好きだし。
「じゃあ、玲なら? 玲はどうするの、その、地球最後の日」
「君と一緒にご飯を食べるけど?」
何を急に言い出すかと思えば。そんな分かり切ったことを聞くなんて全く百ってば。
僕はそもそも料理をするのが好きだし、ここ最近付き合い始めた可愛い可愛い恋人のご飯を食べる姿が大好きなんだから。
その恋人はといえば、一番初めに話を振った時と同じような呆れと、嬉しそうな笑いが混じった表情でこちらを見つめていた。
「それ、私も君のご飯食べなきゃいけないなら、私も地球最後の日は君とご飯を食べることになりそうだね」
そうだ、盲点。彼女はほかにやりたいこともあるかもしれないのに。まだまだ大学生なんだから。
地球最後の日も大学の講義はあるだろうか、わからないけど彼女のような人は、地球がいつ終わるとしても、それがわかっていたとしても、ルーティーンを曲げられないのだろう。
いつものように起きて、顔を洗って、ご飯を食べて、大学に行って。そんな、なんの代わり映えもしない日を、「地球最後の日」として大切に大切に生きるのだろう。
そんな彼女を僕ごときがご飯に誘うなんておこがましいか?
「まぁ、良いんだけどね。毎食君のクリームシチューにしようよ」
「毎食ぅ? 多くない?」
「多くない。私好きだからすぐ食べられるよ? ……話してたらお腹空いた~。何か作ってよ!」
自由気ままにふるまう彼女を見つめつつ、僕は当たり前のように終末を共に過ごそうとしてくれた目の前の恋人への狂おしいほどの愛情に身悶えしていた。
「すき……!」
「え? 何急に。怖いんだけど」
冷たい声。でも、そんな風にけなすような態度を取ろうとしても、にじみ出る僕への愛。なんて愛おしい恋人なんだろうか、この子は!
致死量のキュンとする気持ちに押しつぶされて、座っていた椅子から崩れ落ちた僕を、彼女が実に冷ややかな目で眺めていたのは。そして、見下すような視線に被虐欲が少々動いてしまったのは。本当にここだけの話である。