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痴女検査
約3600文字。
女子生徒のみが対象で、保健室にて行われる、とある検査があった。
入学当初はとても受け入れられなかった。
でも、今では学生生活に設けられるテスト勉強のように、わたしにとっては避けることができないイベントで、なおかつテスト明けのように待ち遠しい存在になっていた。
|件《くだん》の検査名を「痴女検査」という。
〇学一年生の時は「痴」という漢字を習っていなくて、痴女とは何なのか全く知らなかった。けれど、その漢字を習うときには脳内で判を押すくらいにはなっていた。正確に言えば脳内ではなく「濡らした秘唇で判を」……なのだが。
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テスト一週間前だというのに、保健室前の廊下にいる。
わたしの名前が呼ばれた。
「|天音《あまね》 |里奈《りな》さーん。どうぞ」
こういう時、あ段から始まる名前なのは出席番号的に得だと思う。
「……はい」
わたしは、もう待ちきれない感じで体育すわりの群れから立ち上がる。冷たかった廊下の床の空気がお尻に張り付いた気がした。が、実際は違った。
おもらしをしたように、体操服の短パン全体に湿り気が帯びている。恥ずかしくなって若干内股ぎみで保健室の入り口に歩いていった。
女性の看護師さんは何やら能面のような笑みを浮かべて、わたしをなかに案内する。
保健室内は、いつもとは違い、三つの区画に分けられるようにして、黄色いパーテーションで区切られている。どれも内診台が見え、どれも同学年の子が寝かせられている。
一応体操服は着ているようだがマトモに着ていなかった。お腹から下は裸。つまり、短パンは脱がされており、〇学生の未成熟さがあらわとなっている。その付近に白衣を着た人がそれを診ている。それとは――
検査というより診察をしているところを客観的に見てしまい、今からされることを思い浮かべてしまった。するっと短パンとともに下着を下げると、ふたを開けたようにとろりとしたものが滴っている。女性器は濡れ濡れに、液体がへばりついていた。
これはおもらしだと思いたかった。でも……とプライドと羞恥心を刺激してきた。
「里奈さん、準備ができ次第こちらに来てください」
わたしはその声のままに、パーテーションの裏側に赴いた。
声を掛けた女性看護師と男子の保健委員、その中央にある内診台にて、わたしはあお向けになった。
看護師さんが足を乗っけた台を動かした。少し脚が折りたたまれる形で斜めに配置した。
露わにさせた。
「えーっと、里奈ちゃんで大丈夫かな」
外来医師は名前を確認して、わたしはこたえた。
すると、予定通りに女の子の入り口部分に手を伸ばしてきた。
くちゃり、くちゅ、くちゅ……
「んんっ」
表面を触られただけなのに……声が。
私の器官はもう、すっかり準備が整っている。
検査はとてもシンプルだった。
〇学進学後、月一回はこれが行われる。
痴女検査。アソコをいじくられて糸が引いたら「痴女」認定。
実際、この検査で痴女ではないとされた女子生徒は一人もいなかったと思われる。
思春期の第二次性徴の部分を直接触っているので糸が引かざるを得ない。それに、検査時間短縮のために、事前にクスリを飲まされているのである。服薬すれば30分もしないうちに秘唇の奥は熱くなり、頭がぼーっとする。飲んだら最後、性欲を発散させないと何も考えられないようになる。
思い出してみれば、あれは|頒布《はんぷ》されてはならない代物で、即効性がある所が覚せい剤の一種を思わせた。
|襞《ひだ》に沿ってひと通り具合を確かめたあと、男性医師は「張り型Bを」、といった。女性看護師から渡されたそれは、実物を見ていなくても形は分かった。勃起したちんちんだった。
医師は、挿れるね、と前置きしたのちに挿入した。
ぐちゅ、ぐちゅ……
「はあ、はあ、んっ」
それの、一番主張の激しい部分が中を通過していくのが分かる。でも、それが途中で止まってリターンする。そのあと、連続的な動きをした。
発情スイッチを強制的に押され、どうなるのか。それがこの検査の目的だった。
オマンコが発情したら「痴女」認定。
もう発情していた。廊下で待たされているときから。
今もスポンジで擦るようにして、膣内を磨かれている。リズムは一定ではあるが、挿れる角度に緩急があって、ほどよく左右に突かれている。オマンコをいじって、わたしを別の生き物に変えているみたい。
近くに男子の保健委員がいる。同クラスのイケメン君だった。
その人が立ち上がり、内診台のそばに近寄った。
わたしの体操服を無断で触れ、胸を露出させられた。膨らみを軽くもみ、そのままの勢いで少し立っていた両乳首をつまむ。突起からの刺激で口から甘い承認の声が漏れる。それで察知したのか、保健委員の彼はごそごそと短パンをさわり、股間の何かを取り出した。
わたしの近くに差し出された。
とても近くに、差し出されている。
勃起していて、皮が剥かれ露出されていて。
舌を伸ばせば、届く程度の位置に。
それがあった。
どうぞ、とそれが言っていたように誘う。
フェラするか、おちんちん欲しい宣言をするか。それとも、痴女にならないか。こんなの差し出されたら、誰だって痴女になるに決まってるじゃん……。
わたしは自ら舌を伸ばしていた。
口にくわえ、吸ったり吐いたりを繰り返した。チューブ状でできた人工呼吸器みたいだった。
わたしには直ちに必要なものだった。
どう見ても痴女になっていたのに、心は痴女と認めていなかった。
だが、身体の方は差し迫った状況にいた。
張り型の前後運動はとても魅力的に身体を揺らしているが、せいぜい五センチくらいの挿入にとどめ、奥まで差してくれない。最も体温を発するところに、届かない。だからいつまでも達してくれない。意地悪をしているのだ。
「先生、もう待てないです……」
舐めながら、切り離されたように、身体がピクピクと動く。
我慢しきれず口に発したが、プライドが邪魔をして欲しいと直接言えない。だからだろうか。
「何がですか?」
張り型を動かしている男性医師がやさしく問いかけてきた。手は止めない。深度は浅く。上下左右に突く。それが一番意地悪だ。
「えっと……」
「言わないと分かりませんよ。ねえ?」
ねえ? と言われた目線は、わたしの顔よりも舐めていてさらに硬さが増した物に留められていた。がまん汁の味がした。
「おちんぽ、おちんぽ……、んっやっ……」
「おちんぽなら、もう入ってるじゃないですか」
「そんなんじゃ、そんなんじゃ、なくてぇ、もっと、もっとなのぉ……」
「もっと、何ですか」
絶頂に近づいているというのに、どうしてか頂にたどり着かないでいた。
富士山の五合目と七合目を、行ったり来たり。
それがいきなり下山しきってしまった。
「もっと、硬いのっ、あんっ」
下半身に入れたところが空っぽになってしまった。医師は卑猥な笑みを浮かべていた。たぶん秘唇は陸に上がってしまったイソギンチャクみたいに、ヒクヒクしていたことだろう。
口の方はまだ吸えていた。それがありがたい。だが、それも医師の様子をみてか、一歩下がって強制的に取り上げられてしまった。口寂しい。股も寂しい。
こうなると、わたしのする行為は懇願一択になってしまう。
穴を埋めるために、はしたなく、エロく。
内診台にただ乗せられたわたしは、目的を忘れていた。
「もっと、挿れて……」
「どこにですか?」
「ここ、ここに」
自らのワレメを割り開き、男性検査員にお願いするのだ。
覚えば最初の検査からこれをしていた。
最初は1時間以上我慢して、膣肉を極限まで柔らかくしてのチャレンジだったが、今はもう十分かそこらでこのポーズをしている。
「お願いします。わたしの身体を、本物のおちんちんで、犯してください」
「どうですか」
医師は保健委員に目を配る。わたしのことは路傍の石のごとく存在感がない。
やがて、「しょうがないオマンコ穴ですねぇ」といって、男性と男子の欲しかったものが手に入った。
交互に、中で。
「あ、あ、あっ、おちんちん、おちんちん入ってきたっ……、奥まできたぁ」
「大好きですか?」
「大好きぃ、おちんちん大好きぃ」
律動が繰り返されていくごとに満たされ、中に出されるごとに性欲が消失していくどころか増していった。
やがてすべてが終わったあと、検査を終えた時にわたしは思った。
痴女じゃない人って、いるのかなあ……って。
クスリの効果が切れるまで、女子トイレの個室で自身の余韻を慰めていた。指を入れると出された物が少しずつ吐き出されていく。少なくとも昼前まで、完全に性欲が切れるころにはテストを迎えていた。
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この検査は元々、性欲強めな女子生徒をあぶり出し、性的指導をするため行われてきたらしい。
平成時代から伝わる負の遺産で、秘密裏にこの学園にて行われていたらしい。
しかし、わたしが卒業生となり、元号が令和になって数年。どこから漏れたのか知らないが、先進的な取り組みとして少子化対策専門の雑誌に取り上げられ、瞬く間に世間に伝わる。
この|度《たび》急速な少子化対策により全国にも義務化された。一刻も早く痴女を増やすことが少子化対策である、と政府は思っているようだ。わたしもこれに賛同したい。