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冬 なめらかホットコーヒー
今年の冬は、去年より寒いと、|森 芽鶴《はやし めづる》は思う。
今日は、大学が休みの日なので、そこらへんをぶらぶらしていようと思っていたが、目的地を特に考えていなかったので、ふらふらしているままだ。
寒いし、あったかい飲み物を飲もうか。そうだ前、|莉穂《りほ》が居た時に、おすすめのカフェがあるって写真付きで説明してしていたな。
そう思い出に浸っていると、ちょうどそのカフェを見つけた。
寒い体を温めてくれるような、オレンジ色の看板をしている。
カランコロン
躊躇なく、吸い寄せられるように入っていく。
「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」
そう言っている人を見てみると、ほんのり赤っぽい化粧をした店主さんがいた。
そして、言われた席につく。
「こちらが、メニューです」
そう渡された表には、あったかい飲み物の数々があった。
その中で目についたものが、「ホットコーヒー」だった。
そういえば、莉穂が、この季節になると、よくいてくれたな、ホットコーヒー。
「ホットコーヒーお願いします」
「わかりました」
しばらく待っていると、コーヒーの匂いが漂ってきた。
懐かしく感じたので、厨房を覗いてみた。
どうやら、2種類のコーヒー豆をブレンドしているようだった。ミルクを入れると、ふわっと優しい湯気が舞い、飲むのが楽しみになってきた。
やはり、懐かしく感じる。
「どうぞ。こちらホットコーヒーです」
「ありがとうございます」
そう言って受け取ったコーヒーは、ずっと思っていたが、懐かしい見た目、匂いだった。
一口飲んでみると、一筋の涙が出てきた。莉穂の味だ。
莉穂は、家庭的な女性で、人付き合いが良く、寒い冬には、ホットコーヒーを淹れてくれた。
ニコニコしている莉穂とは、一生を共に過ごそうと考えていたのに、それは一瞬で崩れ去った。
そのことを思い出して、涙を流し、もう一口、コーヒーを口に含み、あの時のことを思い出す。本当は、思い出したくなかったはずなのに。
あの時は、雨が上がり、虹が出ていた。
そんな時、うちに来るために莉穂は自転車に乗って向かっていた。
近くに、同じく自転車に乗っている男の子がいて、横断歩道で向こうへ渡ろうとしていた時、滑って転んでしまった。
大型トラックは、それに気づかず進もうとした。それに気づいた莉穂は、男の子を守るために、男の子を押し出し、ぶつからないようにした。ただ、莉穂が大型トラックの下敷きになってしまった。即死だったそうだ。莉穂は、命を奪われた。
でも、これは誰も悪くない。でも、だからこそ、誰に怒りの矛先を向けていいのか分からず、1年間、ずっと引きずっていた。
莉穂に、一度でもいいから会いたくて。でも、今日なんとなく来薇に会えた気がした。
全部飲みきり、お会計をしようとレジへ向かった。
「お会計は10円です」
「えっ!安いですね」
「えぇ。私の一番価値あるものと考えるのは、思い出ですから」
俺は会計を済ませ、外へ出た。
俺、夢に向かって頑張るよ。来薇。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
次回最終話、なぜ店主は思い出にこだわるのか、店主がこのカフェを開いた理由とは…。
それらの謎が解明されるお話です。
それではバイ彩また次回~