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File No.3
白…掃除屋
黒…掃除屋
灯…仲介人
燕…運び屋
三宅…依頼人
場所さえ決まればあとは早い。
燕によって運ばれた佐々木の箱詰めを空き部屋で開封し、適当に殴ってから放置。それから、灯を介して三宅に連絡すれば1時間もせず彼らは地下街へやって来た。
「そっちの部屋に置いて…じゃなかった、いらっしゃるから、気が済むまで好きにやっちゃって。あ、料金ちゃんと振り込んだよね?」
「はい。……ありがとうございました」
「…んじゃ、“後悔”してね」
三宅が部屋に入った後、白は自分の仕事道具を取り出した。
彼が|佐々木《復讐相手》を殺すならば、必然的に後始末が必要である。灯が白のところへ依頼を持って来たのも、ただただ後々オプションとして提案するのが面倒だったからだ。
「まあ、初心者さんだし…1時間くらいか」
「金」
白の独り言を灯が遮る。
「あ、金ね。1割だっけ?」
「2割。とっとと払えよ。借金取りに追われたいか?」
「あの兄弟嫌いなんだけど」
「じゃあ払え。今すぐ」
「はいはい」
スマホで送金完了。最近の裏社会はデジタル化が進んでいる。
ふと、扉が開いた。予想以上に早い。
「あ、終わった?」
部屋の中には、首と胴が離れ離れになった|佐々木《死体》が転がっている。光を失った目が恨むように白を見つめた。
三宅は扉に手をかけたまま沈黙。さすがに初めての殺人はショックが大きいのだろうか。
「三宅さん」
灯がつとめて明るい声を出す。部屋に虚しく反響した。
「これで依頼完了、ということで…戻りましょうか!」
「……灯さんは、人を…殺したことが」
「ないですよ!だから三宅さんの気持ちは分かりませんね!!」
そこは同情してやるところじゃないのか。
「いーからさ、はやくソレ戻してよ。掃除するから」
依頼人をソレ呼ばわりする白も白で狂っている。いや、依頼が完了した今はただの“他人”ということか。
「じゃあ、帰りましょう!あ、静かにお願いしますね!」
灯は、三宅を半ば引きずるように門へと連れていった。
「…かわいそうに。知らなくて良いことを知ってしまったからには、あなたはもう元に戻れませんよ」
何も言わない三宅に、灯は張り付けた笑みのまま続ける。
「どうします?このままここに留まりますか?」
「……はい」
頷いた瞬間、三宅の頭部が破裂した。
「あなたは一般人なので、この世界にはいてはいけませんよ!大人しく帰ってくださるなら見逃しましたけどね〜。…って、もう聞こえませんか」
動かない三宅の胴体をそのままに、灯は門の向こうへ足を向ける。
地下街と違ってやたら明るい“街”は、たぶん今日も変わらず明るい。
この街が、影であり続けるから。