公開中
だいすきな君へ、おめでとうと愛してるを。
生まれてきてくれてありがとう。
「…はー、っ疲れたー」
パソコンから目を離し、大きく伸びをする。時計は正午を回っていた。
今日は7月28日。俺の誕生日だ。
でもどうやら皆忙しくて、まだ誰からもお祝いされていない。
流石に10年の絆やし、祝われんとかそんなわけはないはずやねんけど…でも、ちょっと不安になってる。
祝われんかったらどうしよ。嫌われてたらどうしよ。
そんなわけないとは思ってんねんで?だって優しいし面白いし最高の仲間やから。
でも…うーん…
ぐるぐると考えていると、不意にスマホが震える。
着信音だった。
「んー、だれ……っえ、なーくん…?…も、もしもし?」
『ジェルくーん!!!!誕生日おめでとうっっ!!』
なーくんの元気な声に圧倒される。
それと同時に、ぶわっと顔が熱くなった。
祝われただけやん。何照れてんの。
「ぁ、う、ん…あ、りがと…」
『ん?え…も、もしかして、俺祝うの最後だったりする…?ごめんねぇ、忙しくて…』
「い、いやちゃうねん!!っていうか1番最初やから!!大丈夫!!」
『え!ほんとぉ!?やったぁ!!』
嬉しそうな声に釣られて、俺ももっと嬉しくなる。
優しいなぁ、なーくん。
「んへ…ありがとうな、なーくん」
『ん〜?そりゃ祝うよ、大好きだもん』
「っ……」
大好き。その言葉に期待しそうになる。
仲間としてやから。わかってる…
俺と違う「大好き」ってことくらい、わかってる。
『…ジェルくん?どーしたー?』
「あ、んーん…!なんもない!」
『そぉ?それならいーんだけど…ちゃんとおやすみもしなよ〜?働きすぎは良くないからねっ!』
なーくんが言えることちゃうやろ。毎日働きづめのくせに。
「わかっとるよ。そういうなーくんもやで?」
『俺はー…俺はいいの!こう見えて強いから!』
「何言ってんの…すぐ倒れるくせに」
『そんなことないし!!…あ、てかさジェルくん』
「ん?」
『俺の仕事終わったらさ…会える?』
少し低めの声でそういうなーくん。
こういう声の時は、大体何か大切な話がある時で。
俺なんかしたかな。休んでないのバレたかな。
そんなことを思いながら、なーくんに向かって話す。
「会えるけど…どうしたん?」
『ちょっと、言いたいことあってさ。終わったら連絡するね、じゃ!』
「またな〜」
電話が切れたことを確認して、ゆっくりスマホを置く。
そして、椅子に足をあげて膝を抱えた。
「…なになになになに!?!?!」
まじで何!?言いたいことって何!?!??
活動に関係すること?なーくんなんかあったんかな。
それとも俺のこと?俺の心のこと?なんか考えてくれたとか?
それともなんか変なことバレたか…あーもう、わからん!!!
「もぉぉぉ、ほんまになんなん…!!」
俺の悲痛な叫びが、涼しい空気に溶けて行った。
ー
「…あつ、」
早く着きすぎた。
もう夕方やのに、太陽の光は俺を刺し続ける。
会社の近くの広場にぼーっと立ち尽くす俺のことは、誰も見てなかった。
今ここで「ジェルでーす!!」って叫んだらなんかあるんかな。
そんなことを考えてやめた。バカすぎる。
と、遠くから走ってくる人影が視界の端に見えた。
「ジェルくーん!!!!遅くなってごめんっ…!!」
「全然待ってへんよ〜、お疲れ様」
そう笑いながら、コンビニで買った缶コーヒーを差し出す。
俺もコーヒーを開けながら、なーくんの話を聞いた。
「えっと、今から…出かけます!!」
「おー…どこいくん?」
「それは秘密!!ななジェルデートだからねっ!!」
「で、デート……なんや」
まただ。また期待してしまう。
もう…まじで嫌やねんけど、この恋愛センサーみたいなやつ。
なーくんが好きすぎる。恋愛的に。まじで。
「そう、デート!じゃあ行くよ〜!」
「あーあー、引っ張らんといて…」
嘘や。手引かれんの嬉しがってるくせに。
ー
「ね、これ乗るよ!」
「え…観覧車?」
「そう!結構すごいでしょーここ!」
手は握られたまま、俺はなーくんと一緒に観覧車に乗った。
隣じゃなくて向かいに座られてちょっと落ち込む。
「おー!綺麗!!」
「綺麗やなー…高いし」
活動のこととか、最近のこととか話してるうちに、観覧車はあっという間に頂上へ。
俺は少しはしゃぎながら、窓の外の棒が真っ直ぐになる瞬間を見ようと視線を外へ向ける。
すると、いきなり顎に冷たい感覚。
「っえ、な…ぇ、」
なーくんの手だった。顎クイ。
そのまま顔が近づく。
「ジェルくん、好き。付き合ってほしい。」
ちゅっ。
小さな箱の中に、小さなリップ音。
大胆すぎる告白だった。
「…………は!?」
理解が遅れてしまった。顔が熱くなる。
告られた。観覧車で。キスされた。観覧車で。顎クイされた。観覧車で!!
いや、王道といえば王道かもしれんけど王道じゃない。何言ってるんや俺。
「ねぇ…告白の、返事は…?」
「ぁ、えっ…と………俺で、よければ…お願い、します」
「…!!いいのっ、!?」
「ぇ、うん…」
「やっっったぁ!!」
なーくんが俺に抱きつく。その拍子にゴンドラが揺れた。
「っわ、ちょ、揺れてる!!揺れてるから!!ちゃんと向かい側座って!!」
とか言いつつも、手は自然になーくんの背中に添えられている。
抱きしめ合ったまま、観覧車は1番下についた。
ニコニコなお兄さんが扉を開けてくれて、見られたことにやっと気づく。
もう遅かった。
ー
お祝いで俺の家にきてくれた他のメンバー。
誕生日会と称されたこれからの時間の前に、俺は皆に話を始めた。
「…ということで、…なーくんに告られました」
目の前にいる4人に事情を説明する。
「あの、僕誕生日祝うはずで来たんですけど…!」
不機嫌な声、でも笑顔なるぅちゃん。
「ええええっっ!!なーくんジェルくんおめでとおお!!!!!」
明るい声、本気で喜んでくれる莉犬。
「ななジェルさすがだね〜、おめでとぉ!!」
いつものガサガサな声、でも優しいころん。
「おめでと。なーくんジェルに心配かけんなよ〜?」
優しい低い声、誰よりもかっこいい笑顔なさとちゃん。
「かけないもん!!働くだけだもん!!」
ちょっと怒ってる声、でも可愛い、なーくん。
「信用できひんわ…そういって無理すんねんから」
そして、俺。
「あ、ジェルくん!こっち見て!」
「ん、どしたぁ?」
「愛してる!!」
なーくんの声が部屋に響いた。
「俺もジェルくん愛してるー!!」
「僕もまぁ、愛してますよ?」
「僕も愛してるー!!」
「俺も愛してる。」
「っえ、みんなまで……ほんま、やめてやぁ…」
あつい。顔あつい。めっちゃ赤い気がする。
それと同時に、頬を伝う冷たいもの。
泣きながら笑う俺を、皆は楽しそうに、抱きしめてくれる。
最高の誕生日プレゼントだった。
愛されてるんだろうなぁ…大好きな人を幸せにしてくれる皆が大好きです。