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【短編小説】世界はどうせ紛い物
32XZ年 冬。
我々は『新たな世界』を量産することに成功した。
大きさは直径30cmほどで、時間の進みもかなり早いが、れっきとした『星』だ。
空気があり、水があり、地があり、生き物が生き、繁殖し、進化していく。
正に、『第二の地球』だ。
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私はとある研究者である。
『第二の地球』と呼ばれる小さな星を観察している。
休憩時間で喫煙室で一服していると、研究員がそっと扉を開けた。
研 「鶴見教授!『第二の地球』に新たな変化が見られました!」
鶴見「おや、報告ご苦労。今そちらへ向かうよ。」
私がそう言うと、研究員はお辞儀をしてから部屋を出ていった。
そろそろ休憩も終わりか。私も彼方へ向かおう。
そんなことを考えながら、私はタバコを灰皿へ押し付けた。
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『第二の地球』では、多くの国が戦争を起こしていた。
原因は食料と資源と土地の奪い合いか。
最近、『第二の地球』の様子がおかしくなりつつある。
食料や土地を巡る戦争が後を経たない。生物の数が激減している。
恐らくだが、この状況で資源や食料を与えたところで、戦争は終わらないだろう。
このままでは、良い実験結果は得られそうにないな…
……処分するしかないか…
そう考えついた私は、研究員にそのことを伝え、ある冷却装置を用意させた。
これは『第二の地球』を急激に冷やし、生態活動を終わらせるものだ。
そのまま壊すのもいいのだが、流石に可哀想だからな。
せめてもの|慈悲《やさしさ》だ。
完全に冷却されるまで、約1時間といったところか。
これだけ早ければ、楽に逝けるだろう。
私は『第二の地球』をその冷却装置の中へ放り込んだ。
そして、無造作にその装置の蓋を閉める。
私は、研究員に新たな『第ニの地球』を用意させた。
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新たな『第二の地球』では、新たな生命が生まれ始めている。
これなら、一ヶ月後には先ほどまでの状態に戻るだろう。
私は安心していつもの椅子に腰掛ける。そしてデスクにあるコーヒーを手に取
**バタンッ!!**
いきなりドアが開いた。
反射的にその方角に目をやると、研究員が目を見開いて立っていた。
鶴見「どうしたのかね!?なにがあったんだ!?」
そう聞くと、研究員は私に叫んだ。
研 「………地球の気温が急激に下がっています!!」
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私と研究員は外へ飛び出した。
と、その瞬間凍てつくような突風が私たちを襲う。
鶴見「…!!一体なぜ……!!?」
研 「それだけではありません!!空を見てください!!!」
そう言われ、私は空を見上げる。
その瞬間、私は目を疑うものを見た。
鶴見「……!!?今はまだ昼の11時だぞ!!!??」
空が、まだ昼なのにも関わらず、暗闇に覆われていたのだ。
研 「今、世界中の研究者が原因を調べております!!」
鶴見「……!!!治る気配は!!?」
研 「今のところ見られていません…」
そう話している間にも、気温は下がっていく。
鶴見「…!!!とりあえず中へ入るぞ!!」
研 「!!はい教授!!!!」
---
………どこかで。
研 「教授!!世界中で凍死者が出ています!!!」
…………………どこかで見たことがある。
研 「我らの元の地域も限界です!!エネルギーが切れます!!!!」
………………………ああ。なるほど。
研 「教授!!!!ご決断を!!!!!!」
そう言うことか。
鶴見「…………もう無理だ。」
研 「はぁ!!?急に何をいっているんですか!!!!!!」
鶴見「我らに助かる術は、もうない。」
研 「なぜそう言い切れるのですか!!??!?」
鶴見「…………私は……いや、我々は……………」
--- 「我らによって作られたのだから。」 ---
研 「………は…?」
鶴見「我々は今、《《冷却装置の中にいるんだ。》》」
研 「誰に!!なんで!!!!!??」
鶴見「外の研究員によってだよ。理由は…争い事が原因かな。」
「……我々は、彼らの『実験道具』に過ぎなかったのだよ。」
研 「…………!!!そんな………!!!!!」
--- ………ここは……………この世界こそが………… ---
--- ……………『第二の地球』だったのか……… ---
**ビー!ビー!**
**『エネルギーが底をつきました。電力を全て遮断します。』**
人間味のない機械音声が、研究室に響き渡る。
その瞬間、一気に体温が奪われていくのを感じる。
彼方此方から、できるだけ暖かい場所にいようと争う声が聞こえる。
--- ……………ああ。 ---
--- 世界なんて、全て作り物だったのか。 ---
--- ……きっと、我々だけではないはずだ。 ---
--- 「自分たちは大丈夫」「この世界こそが本物」 ---
--- そう思いながら今ものうのうと過ごしている人間が、きっといるのだろう。 ---
--- なあ? ---
--- **私を見ている君よ** ---
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研 「神城教授!生命反応が完全になくなりました。」
神城「わかった。そこに置いておいてくれ。後で処分する。」
『第二の地球』の処理は無事終わった。
たった1時間で冷却を終わらせるとは、なんとも便利な道具だ。
あれだけ早ければ、きっと楽に逝けただろうな。
………我々は命を操れるようになった。
彼らは我々によって、生死を決められる。
なんと哀れなんだろうか。
ああ、『神』というのかこんなものなのだろうか。
さて。次の新たな『第二の地球』はどうなるかな?
次の実験結果が非常に楽し
**バタンッ!!**
研 「神城教授!!」
神城「なんだねっ!!!!私は今休憩中だ
研 「地球の……!!!」
--- 「地球の気温が、急激に落ちています!!!!」 ---
こんにちは、「読書が好き🍵」です。
今回は「読者に干渉してくる系」を作りたくて、今作に至りました。
結構いい出来じゃないですか?
アドバイスやリクエストがあれば、ぜひ教えてくださいね。
それでは、またどこかで会いましょう。