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好きな人の好きな人
「好きです!」
これが私の限界だ。顔は真っ赤、耳までも赤い。でも、これは私の全力だ。
この思いが先輩に届いたとしたら、いや、届かなくても、後悔はない。
私はしっかり前を向いた。
先輩への気持ちを知ったのは、憧れだった美術部に入部してすぐだったと思う。
繊細で、透き通るように綺麗な絵を描く先輩に、一目惚れしてしまった。
帰りのホームルームがおわると、私は一目散に美術室に向かう。そこには必ず、一番乗りで先輩がいる。
窓際のいつもの席で、静かに準備をしている。
私はそのとなりで、先輩と話ながら準備をする。
先輩は、最近はよく青い絵を描いている。
北極の寒さを連想させる海、その日の夕焼け混じりの空、そして地球。
先輩は青い絵の具をふんだんに使って、その情熱をかきあらわす。
私はそのとなりで茜色の絵を描く。
理由はまだ教えられないけど、夕焼けや朝焼けをよくかいている。綺麗で、残しておきたいと思えるから。
部活が終わり、運が良いと先輩と帰れることもある。時間があったら、学校近くの公園で女子会をして帰る。
先輩と話せるだけで、心が踊る。
この思いをいつか伝えなければならない。これ以上抱え込めない。
先輩。あなたは私のことをどう思っているの?
「○○、帰ろう。」
珍しく先輩から誘ってきた。
グッドタイミング。
今日は時間があるから、どこかで告白しよう。
学校を出ると、赤と青が入り交じる、綺麗な夕焼けが広がっていた。
いつも通り、公園に寄る。
なんだか先輩の様子がおかしい。
気まずい雰囲気が流れる。
「あっ、あの。先輩!」
ん?と先輩が首をかしげる。
「好きです。」
驚くほど自然な声が出た。
先輩は、少し驚いたようなかおをし、顔を赤らめた。
「私も、好き。」
え?今なんて...?
「葵衣(あおい)、好きだよ。」
「先輩。」
名前で呼んで?と、耳元でささやかれる。
「あ、茜先輩。」
「何?」
「好きです。付き合ってください。」
先輩はニコッとはにかんだ。
「はい。」
ああ、私は今、幸せだ。
好きな人の好きな人。それは私だった。
思いが届いた。
赤と青が入り交じる夕日が私たちを祝福した。
「私が青い絵を描いたのは、葵衣が好きだからだよ。」
「私が茜色の空を描いていたのは、先輩が好きだからです。」
ただの帰り道が、キラキラして見えた。