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いじめっ子視点 沢山のぬいぐるみに囲まれて #12
12話です。
私―――早藤エリカは密かにイライラしていた。
今日の昼休み、いつものように竜馬が美春に構っていた。
だから、私はその隙に彼女のパンを奪った。彼女を困らせるためだ。
それが、どうしたことだろう?
昼休み後、竜馬が教室に帰ってくることはなく、
美春もケロッとした顔をしている。
許せない。《《彼女は不幸じゃないと》》。
イライラとした黒いものを抱えながら私は家へ帰る。
あぁ、家だ。
「エリカ。おかえりなさい」
「ただいまぁ、ママぁ。」
家には沢山のお客さん。
ママは子供向けの英会話教室を開いている。
私は、お客さんたちに愛想を振りまく。
ここでの私はとってもいい子だ。
さすがママの子と、お客さんに言ってもらえるような。
私は、小さい子供達の相手をする。
海外からあまり帰ってこないパパが帰ってくるたびにお土産に置いていく大量のぬいぐるみ達で。
「エリカちゃんはいつもいい子ね」
「ふふ。ありがとうございます。」
「うちの子にも見習ってほしいわ。」
「そう言ってもらえて、エリカも嬉しいと思います。」
ニコニコ。愛想笑い。
愛想笑いが貼り付いて離れない。
普通に笑おうにも、この家では何かの呪いにかかったかのように、他の表情ができない。
ニコニコ。ニコニコ。
お客さんが帰った後でも、それは変わらない。
「今日、学校どうだった?」
晩ご飯の支度をしながらママが聞いてくる。
私は愛想笑いを顔に浮かべて完璧な回答を考える。
「今日も楽しかったよぉ!未来ちゃんといっぱい話してぇ、楽しくお弁当食べてぇ」
「そう。楽しそうでママも嬉しい」
ニコニコ。誰に強要されてるわけでもないのに、愛想笑いをやめられない。
ママの笑顔。あれは本当に愛想笑いじゃない?
わからない。どこか芝居じみて見えてしまう。
いい子でいなきゃ。なんのために?誰のために?
唯一、いい子でいなくていい学校。
いや、友達の前では結局いい子。
私はぼんやりと、美春を初めて憎んだ時のことを思い出した。
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授業参観。
この世にこんなに惨めな思いをするものがあるのだろうか?
パパはいない。ママは、ママ友とおしゃべりしてる。
そんな私の視界に入ってきたのは、美春の両親。
別に、両親共に来ている人なんていっぱいいる。
けど、なんで美春だけ目に入ったのか?
簡単だ。私にないものを持っているから。
綺麗な容姿も、温かい両親も。
私より、友達もいないし、陰気なくせに!
下にみていた美春に、私より幸せになられるのが嫌だった。
取り繕わないその性格で愛してもらえるのが妬ましかった。
羨ましい。妬ましい。⋯憎い。
その日から、私は美春をいじめ出したのだろう。
いじめだってことに気づかぬまま。
いや、本当は気づいているけど、見て見ぬふりをしているのだ。
いじめなんてしていない良い子だと、自分で思いたいのだ。
あとがき
裏設定
エリカは最初、ひらりという名前でした。
なぜエリカにしたのか。エリカという花があります。
ネガティブな方の花言葉が彼女にぴったりだな、と思ったから付けました。
他にも、エリカにはとっても素敵な花言葉があるので、よかったら検索してみてください。