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クソデカ縊死体
原作:『|縊死体《いしたい》』
原作著者:夢野久作
どこか**めっちゃ遠く**の公園の**巨人用の**ベンチである。
**プリクラで加工したかのように大きな**眼の前には**一〇〇**条の噴水が、**めっちゃ**夕暮の**めっちゃ**青空高く高く**ぶち**あがっては落ち、**ぶち**あがっては落ちしている。
その**クソデカい**噴水の**やかましい**音を聞きながら、私は二三**〇〇**枚の夕刊を拡げ**はちゃめちゃに**散らしている。そうして、どの新聞を見ても、私が**百年以上**探している記事が見当らないことがわかると、私は**口を裂いて**ニッタリと冷笑しながら、ゴシャゴシャに**何百枚か**重ねて押し丸めた。
私が**百年以上**探している記事というのは今から一箇月**と千年**ばかり前、**ゴーストタウンと化した**郊外の或る**クソでかい**空家の中で、私に**丸三日**絞め殺された**世界一**可哀相な**三メートルを超える**下町娘の死体に関する**ビッグな**報道であった。
私は、その**クソでかい**娘と**マリアナ海溝ほど**深い恋仲になっていたものであるが、或る夕方のこと、その**クソでかい**娘が私に**向かって光の速度で**会いに来た時の**片手にいくつも持った**桃**が握りつぶされた時の**割れと**あまりの体格に引きちぎられた**振袖姿が、あんまり美し**くてもう尊死し**過ぎたので、私は**息の根を止められそうな**息苦しさに堪えられなくなって、彼女を**ゴーストタウンと化した**郊外の××踏切り附近の離れ家に**死にかけながら**連れ込んだ。そうして**鼓膜が破裂するほどの声で**驚き怪しんでいる**クソでかい**娘を、イキナリ一思いに**自らの命を賭けて**絞め殺して、やっと**地面が凹むほどのクソ重い**重荷を卸ろしたような気持ちになったものである。万一こうでもしなかったら、俺は**世界を破壊しかねない**キチガイになったかも知れないぞ……と**心底**思いながら……。
それから**クソデカくなった**私は、その**クソデカかった**娘の**クソでかい**|扱帯《しごき》を解いて、**クソでかい**部屋の**クソでかい**鴨居に引っかけて、|縊死《いし》を遂げたように装わせておいた。そうして**クソでかいながらも**何喰わぬ顔をして**クソでかい**下宿に帰ったものであるが、それ以来私は、毎日毎日、朝と晩と二**〇〇**度ずつ、おきまりのようにこの**めっちゃ遠い**公園に来て、この**巨人用の**ベンチに腰をかけて、入口で買って来た二三**〇〇**枚の朝刊や夕刊に**プリクラで加工したかのように大きな**眼を通すのが、**百のうちの**一つの習慣になってしまった。
「**クソでかい**振袖娘の**バカでかい**縊死」
といったような**世界で最も高名な**標題を予期しながら……。そうして、そんな**クソでかい**記事がどこにも発見されない事を**毎日地球を回って**たしかめると、その**クソでかい**空家の**大気圏をゆうに越える**上空に当る青**黒**い青**黒**い大気の色を**首が折れそうになる程**見上げながら、**口を裂いて**ニヤリと一つ冷笑をするのが、やはり**百のうちの**一つの習慣のようになってしまったのであった。
今**生**もそうであった。私は二三**〇〇**枚の新聞紙をゴシャゴシャ**月と同じサイズ**に丸めて、**巨人用の**ベンチの下へ**大谷をこえる三百キロの速度で**投げ込むと、バットを一**〇〇**本口に|啣《くわ》えながら、その方向の**どす黒く**曇った空を**体がひん曲がるくらいに**振り返った。そうして例の通りの**絶対零度の**冷笑を含みながら**全長三百メートルの**マッチを擦すろうとしたが、その時にフト**遥か遠くに見える**足下に落ちている一枚の新聞紙が眼に付くと、私はハッとして**息が止まるほど**息を詰めた。
それはやはり同じ日付けの夕刊の社会面であったが、誰かこの**巨人用の**ベンチに腰をかけた**クッッッッッッソでかい**人が棄てて行ったものらしい。そのまん中の処に掲だしてある**宇宙一**特種らしい三**千**段抜きの**銀河系を丸めこむほど**大きな記事が、**プリクラで加工したかのように大きな**私の眼に**10まんボルトの**電気のように飛び付いて来た。
空家の怪死体
××踏切附近の廃屋の中で
死後約一個月を経た半骸骨
会社員らしい若い背広男
**クソでかい**私はこの新聞記事を**握りつぶして粉砕する勢いで**掴むと、夢中で**めっちゃ遠い**公園を**超高速で**飛び出した。そうしてどこをどうして来たものか、××踏切り附近の思い出深い**どでかい**廃家の前に来て、茫然と突っ立っていた。
私はやがて、片手に**思いっ切り**掴んだままの**粉砕された**新聞紙に気が付くと、慌てて前後を**首が捻じ曲がるまで**見まわした。そうして誰も通っていないのを見澄ますと、思い切って**世界で最も大きいと評される**表の扉を開いて中に這入った。
**どでかい**空家の中は殆んど真暗であった。その中を探り探り**バカでかい**娘の死体を吊るしておいた奥の**クソでかい**八畳の間へ来て、**クソでかい**マッチを擦って見ると……。
「……………」
……それは|紛《まご》う方ない**バカでかい**私の死体であった。
バンドを**クソでかい**梁に引っかけて、**クソでかい**バットを啣えて、**クソでかい**右手に**クソでかい**マッチを、**クソでかい**左手に**クソでかい**新聞紙を掴んで……。
**バカでかい**私は驚きの余り気が**眼下に伸びるバカ長い足よりも**遠くなって来た。**全長三百メートルの**マッチの燃えさしを取り落しながら……これは警察当局の**前代未聞の**トリックじゃないか……といったような疑いをチラリ**チラリチラリチラリチラリチラリチラリ**と頭の片隅に浮かめかけたようであったが、その瞬間に、思いもかけない**バカでかい**私の背後の**ドス黒い**暗やみの中から、若い女の**耳をつんざくほどのやかましい**笑い声が聞えて来た。
それは**バカでかい**私が絞め殺した**クソでかい**彼女の声に相違なかった。
「オホホホホホホ……**クソでかい**あたしの思いが、おわかりになって……」
(引用元:青空文庫)
底本:「夢野久作全集3」ちくま文庫、筑摩書房
1992(平成4)年8月24日第1刷発行
初出:「探偵クラブ」
1933(昭和8)年1月
入力:柴田卓治
校正:しず
2000年5月19日公開
2012年10月5日修正