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#02
--- 夕方 ---
廊下で、ルドとエンジンが顔を合わせる。
「なぁルド、レイラのこと嫌わないでやってくれ」
エンジンはいつもの調子で言う。ルドは「は?」と不審そうな顔をした。
「なんでだよ」
エンジンは少し目を伏せて、言葉を続けた。
「昔、レイラはずっとザンカ以外の人と交流がなかったんだ。だから、あいつのことを……」
言葉を遮るように、ルドが尋ねた。
「そういや、レイラとザンカを保護したのって何年前なんだ?」
「なんだよ、いきなり」
「なんだって……ザンカは17歳で、レイラが16歳だろ?だから、気になっただけだろ!」
エンジンは一瞬呆れたような顔をして、ため息をついた。
「……お前、ザンカの年まで知ってんのキモいぞ」
ルドはムキになり、エンジンの胸ぐらに掴みかかった。
「レイラから聞いたんだよ!」
「ふっ。ザンカとレイラ、同い年だぞ」
その言葉に、ルドは固まる。
「はぁ!? あの女、嘘つきやがって!」
「んまぁ、ルド。これだけは覚えとけ。あいつは嘘なんてつかねぇぞ」
「は?」ルドは理解が追いつかない。
エンジンの口元が弧を描く。
「レイラの誕生日、あと数ヶ月先だぜ」
「はぁ! ふっざけんな! てめぇ!」
ルドが叫び、エンジンに殴りかかろうとする。エンジンはそれをひらりとかわし、からかうように笑っていた。
ルドは叫びながらエンジンに殴りかかろうとするが、エンジンはそれをひらりとかわし、笑い声を響かせた。
「はぁ、怒るなよルド。どうしたんだよ、そんなにムキになって」
「うるせえ! 嘘つきは嫌いだ! レイラは俺に嘘をついた! ふざけやがって!」
「だから、あいつは嘘なんてついてねぇって言っただろ?」
ルドは息を荒くして、エンジンを睨みつける。
「嘘じゃねぇか! あいつは俺に16歳だって言ったんだ!」
「16歳だろ?」
エンジンの返答に、ルドは一瞬言葉を失った。
「は……?」
「16歳だよ。ただ、誕生日がまだ来てねぇって話だろ」
エンジンは肩をすくめて、ルドをからかうように続ける。
「お前、レイラに年齢聞いた時、ザンカにも聞いたのか?」
「……いや、レイラだけだ」
「だろうな。あいつはザンカの年齢まで言ってないし、お前も聞かなかった。だから、お前は勝手にレイラがザンカより年下だと思い込んだだけだ」
「ぐっ……!」
ルドは言い返せず、悔しそうに歯を食いしばる。エンジンの言葉が、ぐさりと胸に刺さった。自分が勝手に勘違いしていたのだと理解し、怒りの矛先を失った。
エンジンはルドの様子を見て、笑いをこらえきれずに、腹を抱えて笑い出した。
「あははは! お前、マジで面白いな!」
「うるせえっ!」
ルドは顔を真っ赤にして、恥ずかしさでいっぱいになった。
「てめぇ、俺を馬鹿にしてんのか!」
「いやいや、馬鹿にはしてねぇよ。ただ……」
エンジンは笑いながら、ルドの肩をポンと叩いた。
「ほら、言ったろ? あいつは嘘なんてつかねぇって。ただ、お前が勝手に勘違いしただけだ。それをあいつのせいにするのは違うだろ?」
ルドは何も言い返せず、俯いた。エンジンの言葉に、何も言い返せないほど正論だった。
「ま、いいじゃねぇか。レイラの誕生日、楽しみにしとけよ」
そう言って、エンジンはルドの横を通り過ぎていった。
ルドは一人、廊下に立ち尽くし、悔しさと恥ずかしさでいっぱいになっていた。そして、レイラに会った時に、どういう顔をすればいいのか分からなくなっていた。
🔚