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君との思い出についていく 1話ー3
みたらしだんご
ファンレターいただきました!本当にありがとうございます!
今回もぜひ最後まで読んでください!
(遅くなってしまいました…すみません(´-﹏-`;))
* * *
逃げるように帰ってきてしまったが、大丈夫だろうか。
病院で穂樹くんに会ってドキッとしてしまったが、バレてないだろうか。バレてないといいのだが…。
旅行…。旅行するのは大好きだが、今の自分では、クラスメートや彼氏と行くのは少し抵抗がある。双葉や家族と行くのは問題ない。
だったら、嘘をつかずに本当のことを言ってしまえばいいのかもしれないが、心配されてしまうのも嫌だし、別れを告げられるのも嫌だ。こんなのわがままなのかもしれないけど、本当に嫌なのだ。
明日はデートをすることになっているが、気まずくならないだろうか。初デートなのだから、楽しいデートにしたい。気まずさが残るデートにだけはしたくない。
スマホを取り出し、連絡先の中から双葉のを選び、電話する。
『もしもーし』
「あ、もしもしー?」
『どうしたの、柚?』
「あのさ、双葉って付き合ったことってあったよね」
『うん、もちろん。今もいるよ』
「そうだよねぇ。…ん?」
『ん?』
「彼氏いるの?」
『うん、いるよ。あれ?柚に言ってなかったっけ?』
「えっー!」
『うるさいよ!』
「ご、ごめん…」
初めて知った。双葉に彼氏がいたなんて。最近、別れた話は聞いてたけど、もうできてるなんて衝撃的すぎた。
きっと、私が双葉に彼氏がいるって言ったときの双葉の気持ちと一緒だ。反応も一緒な気がする。
『それで?彼氏となんかあった?』
「今日、病院で会ってさ」
『え、病院で?』
「うん、そう。で、帰るとき、一緒に帰ったんだけど、途中で逃げるように帰ってきちゃってさ。まぁ、 そこは、別にいいんだけど、明日、デートでさ。気まずさが出てくる気がしてさ…」
『その前にさ、彼氏くんに病気のこと言ってるの?』
「言ってないよ」
『なんで、逃げるように帰ってきたの?』
「話をしてて、旅行の話が出てきたんだよね。その時私、変な返事しちゃって。それで、嫌になって、逃げるように帰ってきた」
『なるほどね。柚はさ、彼氏くんと旅行に行きたいなって思ったりする?』
「行きたいなぁって思うけど、今の私じゃ、少し躊躇するかな…」
『そっか』
数分沈黙が続き、双葉が喋った。
『まぁ、普通にしとけばいいんじゃない?』
「えっ…?」
意外だった。もっと、なんかあるのかと思っていたから。
「なんで?」
『だってさ、変に話に触れても、余計に気まずくなると思わない?だから、普通にいつもどおりにしてればいいと思うよ。まぁ、個人的な意見だから、そのとおりにしても、しなくても、どっちでもいいよ』
「そっかー」
考えてみればそうかもしれない。気まずくなりたくないなら、話に触れなければいいだけの話だ。
『参考になった?』
「うん、なったよ。ありがと」
『ううん、全然。また何かあったらいつでも連絡してね』
「うん、ありがとう。またね」
『うん、またね』
そして、電話を切った。
私は未だに、驚いていた。それは、双葉に彼氏がいたこと。
メモにはまだ書かれていないから、双葉は言ってなかったんだと思う。新たに、双葉の項目に付け足しおかなければ。
メモのアプリを開き、【双葉】と書かれた項目に付け足す。
【現在彼氏あり】
今日は、明日に備えて早く寝た。
アラームが鳴り、起き上がる。部屋を出て、リビングに向かう。
「おはよう、柚」
「うん、おはよう」
「早く朝ごはん食べなさい」
「え、なんで?」
「だって、今日デートなんでしょ?」
「ん?デート?約束なんてしてたっけ?」
「メモ開いてみたら?」
「うん」
メモのアプリを開き、彼氏の項目を見ると、
【明日は穂樹くんとデート!11時くらいに自分のマンションのロビーで待ち合わせ】
と書かれていた。
「思い出した?」
「ううん、全然。でも、双葉と電話したことだけ覚えてるよ」
「何を話したかは覚えてるの?」
「ううん、そこまでは覚えてないな」
「そっか。まぁ、とりあえず早く食べなさい」
「はーい」
穂樹くんとデートか。どんな感じになるるんだろう?少し不安もあるけど、ワクワクもある。
朝食を食べ終え、自分の部屋に戻り、学校に提出物を終わらせる。終わらせ、時間を見ると、11時半くらいだった。
準備をし、ロビーに向かう。
まだ時間があるため、メモを見ていた。
【彼氏くんから逃げるように帰ってきてしまった。次の日はデートだというのに…。双葉に言われた通りにはしておくが、どうなるかわからないから少し不安…(双葉に言われたことは双葉の項目から)】
このメモを見ると少し不安になる。なぜ逃げるように帰ってきてしまったのかは、まだメモを見てないからわからないけど、気まずくならなければいいなと思っている。
いろいろメモを見て、昨日どんな事があったのかを頭の中にインプットした。
11時頃、ロビーに入るドアを見ると、穂樹くんがやってきた。スマホをカバンの中に直し、穂樹くんのところに向かった。
「待った…?」
「ううん、全然」
「なら、良かった。じゃあ、行こうか」
「どこに行くの?」
「んー、遊園地とか?」
「いいんじゃない?」
「じゃあ、決定で」
駅に向かって歩いているが、沈黙が続いている。この沈黙は決して気まずさがあるわけではなかった。
少しすると、沈黙を断ち切るかのように、穂樹くんが喋った。
「昨日さ、話したの覚えてる?」
「覚えてるよ。昨日はごめんね」
「ううん。全然いいんだけど、1つ疑問に思ったことがあって」
「うん、何?」
「椎菜って旅行嫌い…?」
「…え」
こんなこと聞かれるなんて思ってなかったため、固まってしまった。きっと、昨日のことがあってそう思ったのだろう。
こういう時、本当のことを言うべきなのか。でも、いつかは言わなきゃいけない時が来ると思う。それが今なのかは、私にはわからない。
「言いたくないなら、大丈夫だよ。無理にいう必要ないし。ただ疑問に思っただけだから」
「…」
そう言われると、言わないと可哀想に思ってしまう。穂樹くんは意を決して質問してくれたはずなのに、私はそれに答えないというのはどうなのだろうか。
「…嫌いってわけじゃないんだよ。好きだよ。でも、ある事情があって、穂樹くんと行くのには少し躊躇してて…」
「ある事情ってのは…?」
「そ、それは、今はまだ言えない。言うときが来たら言うね」
「分かった。答えてくれてありがとう」
私は言うことにした。病気のことは隠して。でも、いつかは言わなきゃいけないから、そのときはちゃんと言うけど、それがいつ来るのかわからない。明日かもしれないし、もっと先かもしれない。
色々話をしながら、遊園地に向かった。
遊園地に着いて、すぐレストランに向かった。今はお昼どきでたくさん人がいたが、なんとか席につくことができた。
「はぁーお腹すいたー」
「だな。食べるかー」
そのとき、突然、穂樹くんが胸に手を当て、苦しそうにした。
「…大丈夫!?」
「う、うん。だ、大丈夫。ちょっと、トイレ…」
「あ、うん」
結構苦しそうにしていたが、大丈夫だろうか。しかも胸だったから、心臓…?心臓があまり良くないのだろうか。
穂樹くんは私よりもひどい病気なのだろうか。もしかして、トイレで倒れちゃったりして?本当に大丈夫なのだろうか。
数十分経って、穂樹くんが戻ってきた。
「だ、大丈夫…?」
「うん、大丈夫。ちょっと腹が痛くなっちゃって」
「で、でも、手を当てたところ、胸だった…けど…」
「…と、とにかく、大丈夫だから。心配しないで」
「う、うん」
本人がそう言うなら信じるがやはり少し心配だ。心配しなでって言われても心配するに決まってる。だって、彼女だから。
別に、穂樹くんが好きとかじゃなくて、彼女の立場として心配している。
昼食を食べ、たくさんのアトラクションに乗り、家に向かった。
「ここまででいいよ」
「分かった」
「気をつけてね。大丈夫?」
「うん、大丈夫。椎菜は心配しなくて大丈夫だよ。ピンピンしてるから」
「うん、分かった」
「うん、じゃあ」
そう言って別れた。
もしも、病気ならばいつか言ってくれるだろうし、本人が大丈夫だというのだから、大丈夫だと思う。そう自分に言い聞かせた。
でも、少し片隅に心配があった。だって、胸に手を当てていたのだ。きっと、いつか言ってくれる。そう信じていた。
冬休みに入り、雪もつもり始めた。
穂樹くんと付き合って3週間が経った。穂樹くんとは距離も縮まってきて仲良くなってきた。
登下校も一緒で、穂樹くんは双葉とも仲良くなった。
ある日、穂樹くんからメールが届いた。
【おはよう。元気?1月に入ってから、有名な温泉に行こうと思ってるんだけどいい?しかも、寝泊まりなんだ。いい?】
泊まりということはほぼ旅行だ。すごく行きたいが、やはり2きりだとためらってしまう。
仲良くなったとはいえ、あのことを伝えていないから、行こうと思えない。
母に相談すると、
「じゃあ、紅琳さんと行けば?2人だけで行くのも危ないし」
と言われた。
紅琳さんというのは、私の兄の彼女だ。だがお願いするのは少し申し訳ないなと思ってしまう。だって、友達ではないし、1回しか会ったことがないのだ。
紅琳さんに連絡すると、
【全然いいよー。予定空いてると思うし】
とあっさりOKしてくれた。
紅琳さんはOKだが、穂樹くんがOKしてくれるかどうか。
【いいけど、私の友達も連れてってもいいかな?】
【うん。いいよ。その子は事情を知ってるの?】
【うん、知ってるよ】
紅琳さんは私の病気のことは知っている。兄が紅琳さんに言ったらしい。
【じゃあ、いいよ。日にちはまた連絡する】
【了解!】
温泉に行くと言っていたがどこの温泉に行くのだろうか。楽しみになってきた。だが、少し不安もある。あんな事にならなかったらいいのだが…。
最後まで読んでいただきありがとうございます!m(_ _)m
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