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もうひとりの堕天使
「そこっ!」
きっぱりとした、鮮明な声。トーンは低く、暗い印象。
「あんた、誰よ?」
「ああ、あたしのことね。あたしはシツン。まあ、ピンと来ないでしょうね。そうねぇ、リーシュと同じ類の同僚よ」
「は?あんたも堕天使?」
左腕が剣になっている。全身に網目マークが施されてて、それが失恋マークのひびとわかるのはちょっと時間がかかる。左目が隠されていた。
「そうよ。あたしはシツン。失恋の天使。リーシュとは同期。恋愛の神・ヴィーテは知っているでしょう?ヴィーテは愛、美しさ、恋を司る神。でも彼女は二重人格で、もうひとつの性格がある。その性格は失恋を司るのよ。あたしはそっちのほうに仕えてた。でも、自分の意志で飛び出してきたわ」
「は?お前、バカじゃないのか?天界ではなんでも保証されんだろ?」
「そうだけど?あたしはリーシュと同級生。リーシュはいつもあたしに依存してた。あの子は依存していないと生きていけないもの。それに、裏で働いているってのが嫌いになった。だから、飛び出してリーシュとともに行動し始めた」
「ってことは、リーシュは今何処にいるか知っているのね?」
はあ、というため息が、わたしたちの希望を打ちのめす。
「今、何処にいるか知らないわ。探してちょうだい。どうせ、異変のことでしょ?あなたたち。リーシュはなんにも知らないと思うわ」
「はあ?なんでわかんのよ、そんなことが」
「長年付き合ってきたカン…とだけ言っておこうかしら。絆よ、絆。どこぞのエルフよりもこのカンは当たるわ」
そんなスピリチュアルなこと…。信じるわけ無いじゃん。
「どうせなら下級神かのところへ行きな。そうね、御守りの神様のところはどう。あいつならちょうどいい塩梅よ。それに、手土産ももらえるし」
「ああ…御坂のとこ?」
「そこしかないでしょ」
御坂真守。彼女は身分は低いが神で、御守りを司る。御守りを作る程度の能力を持ち、手土産に今の状況にあった御守りをくれるいいやつだ。効き目も信頼されている。
「あとは…半人半神でいいなら、レイン・アイルズ。もっといるだろうけど、あいにくあたしは堕天使だから。詳しくは知らないけど、こんなもんでどう?」
「ああ、ありがとうな。さて、由有。行くぞ」
「…あんたの行動力だけは認めてやるわ」
次は…やっぱり、真守のところかな。