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『箱入り姫は、愛されすぎて身動きがとれません!』
第1話:世界で一番不器用な「国宝」
その国の第一王女、ちぐは。
彼女が窓辺に立つだけで、庭の薔薇が恥じらって萎れると言われるほどの「国宝級」の美女。
透き通るような肌に、星を閉じ込めたような瞳、そして誰もが見惚れる艶やかな髪……。
けれど、彼女には一つだけ、国を揺るがす致命的な弱点があった。
「……ねえ。これって、どういう状況かしら?」ちぐはは困惑していた。
現在、彼女の左右の手は、二人の執事によって恭しく捧げ持たれ、もう一人の執事は背後から彼女の髪に指を絡ませている。
「どういう状況も何も、ちぐは様。貴女の靴紐が1ミリ緩んでおりましたので。私が締め直す間、安静にしていただくためです」そう言って、足元で膝をつき、宝石を扱うように靴に触れるのは、筆頭執事の**レオン**。
冷静沈着、けれど瞳の奥には狂気的な独占欲を隠している。
「レオン、それは建前だろ? 俺はただ、ちぐは様が寂しそうな顔をしていたから、こうして体温を分けて差し上げているだけですよ」右手を頬に寄せ、蕩けるような笑顔を見せるのは、年下の小悪魔執事**シオン**。
「お二人とも、姫様が困惑しておいでです。……ちぐは様、耳元が赤くなっておられますよ。可愛いらしい」背後から、吐息がかかる距離で囁くのは、包容力の塊のような年上執事**カイル**。
「……あ、赤くないわ。これは、その、部屋が暑いだけよ!」ちぐはは顔を真っ赤にして、視線を泳がせる。
そう、彼女は生まれた時から「お姫様」として愛でられすぎて、恋愛偏差値がマイナスレベルに不器用なのだ。
彼らの視線が「忠誠心」なのか「愛」なのか。今のちぐはには、まだ知る予知もなかった。