マジカルドクター～入学～

「ふぁ・・・」 朝が来た。横には私の彼氏、パセリがいる。付き合って１年ちょっと。彼の端正な横顔に、朝日が差し込む。 「ふふ・・・」 髪をなでる。いつもはやりすぎると怒られるから、今のうちに堪能する。 「う・・・ん」 唸り声をあげて顔をしかめる。サッと手をのける。見つかったら、怒られる。 「おはよ、パセリ君」 「ん・・・バーベナ・・・」 「なぁに？」 「邪魔。どいて」 「分かったよ～。そんなに怒らなくてもいいじゃん」 いつも通りの塩対応。でも、彼と私にとってはいつものこと。慣れている。それより、何か失敗したときの方が彼は怖い。だから、何も失敗しないように細心の注意を払って毎日を過ごしている。 --- 「バーベナ」 「なぁに？」 「ここ来て」 「うん！」 今日は休み。なので彼もまだ優しい。最近は忙しそうで、中々近くに寄れなかったから、横に座れるのが嬉しかった。 「これ知ってる？」 「なにこれ？薬？」 「いや、ラムネだよ」 「ラムネ？」 近くに寄った私に、小さな薬のような「ラムネ」を差し出した。 「・・・くれるの？」 「うん。最初は怖いけど、大丈夫・・・」 「へ？」 「あぁいや、なんでもない」 彼は何かを呟いたけど、何て言ったか聞こえなかった。 「じゃあ、もらうね！」 そう言って口にした私を見て、彼が笑った気がした。 --- 「わ・・・」 口にした途端、身体がふわふわして、何でもできる気がして、ずっとこのままでいたいな・・・。 「気持ちいいだろ？心が軽くなるだろ？」 「うん・・・いい、なぁ・・・」 彼の一言一言が、心地よい。楽しい・・・！ でも、その時間はすぐ過ぎ去った。 気づけば一時間たっていた。 何か、大事なこと・・・学校で注意されていた事があったような気がする・・・。忘れてしまったけど。ただ、きっと今の私にはいらない記憶。無駄な記憶。学校といえば、よく保健室にサボりに行っていたなぁ。先生に「保健室はサボる為にあるんじゃない」って怒られた・・・。あぁ、もう一度、もう一度あれを体験したい。今の私はきっと正気じゃないんだ。あの「ラムネ」を食べることで本来の私になっているんだ。だって、 あんなに楽しいんだもん