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檻ノムコウ雨ハ笑ウ 1
②雨、檻です
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【人物紹介】
・宮園 礼(みやぞの れい) 15歳。ユイの相棒。おっちょこちょいだが性格は良い。美人。身長は高め。
・春架 唯(はるか ゆい) 15歳。レイの相棒。冷静沈着で大人っぽい。美人。身長は低め。
・Z ???
私、宮園礼はある人から聞いたあの噂を確かめにココに来た。
「……。ユイ、来たわ。」
「OK。レイ、ターゲットUにミッションmをして。」
ミッションmって言うのはまあ確認しよっかの略。私はユイの言葉に合わせてターゲットに近付いた。
「あの、私、園礼美夜って言うんですけど最近引っ越してきた者で…ココは何処ですか?」
「あ、羽乃です。…………工場、ですね……」
Uは、言葉を濁した。あ、園礼美夜って言うのは私の隠れ名。偽名ってやつ。
「そうなんですね!ありがとうございます!」
「あ、いえ。」
私はUに握手を求める。Uは戸惑っていたけれど何とか握手成功。
「ユイ、ミッションaを。」
「ん。」
Uの頭上から雨が数滴落ちる。
「ひゃっ。…………」
「やはり。ユイ、撤退よ。」
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「ふわぁっ。眠。ユイ?」
私は昨日の夜のミッションを思い出し少し顔を顰める。私はいつも通りユイとの通話画面を開く
「おはよ、レイ。」
「ん〜おはよ」
「Uはやっぱ雨記憶感知症?」
「うん。記憶見たけどそうっぽい。反応もね。Zの事も分かるかも」
「そっか。あ、じゃあね、ばいばい」
雨記憶感知症とは雨の記憶を自分の記憶のように感知してしまう症情の事。表向きは絶対に治らないけど裏では特別な光にしばらく当たれば治る。
雨記憶感知症の力を悪用する人もいるらしくそれを捕まえるのが私達、「デビル」の役目。
私は今までの症状発症者リストのファイルを引っ張ってき、Zと書かれたページへ行く。
「待っててよ、Z。」
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「こちらユイ。応答を。」
「レイです。出入り口付近に待機中。」
今日はあのミッションの日から3日が経って二回目のミッションの日。
「ユイ、ミッションtを実行します。」
tは取り敢えず捕まえとくかの略。
「OK。レイ、気をつけてね」
私はターゲットが出てくるのを待つ。待つ事20分程。ターゲットが中から少し大きめのバッグを持って出てきた。
「あ、また会いましたね、羽乃さん。」
「……園礼さん?」
ここまでは作戦通り。
「あの。少し来て欲しいところがありまして。」
「……?分かりました…」
私は上にいるユイにゴーサインを出す。
「この上です。ほら。」
「え?何処ですか?ひゃっ……!」
Uの上からまた雨を数滴落とす。でもこれは雨では無くて麻酔水みたいなもの。普通の雨記憶感知症患者は悪用していなければ雨しか感知しないはず。なのにUは反応した。つまり悪用済という事。
「レイ。Uをデビルに。」
「ミッションhを行います。」
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「ん…………。」
「あ、起きられましたか?早速ですが。雨記憶感知症ですね」
「……何故それを。」
Uは訳ありっぽい。
「このままだと貴方は残り余命10年。治したい?」
「……はい。勿論そうじゃないですか」
「そう。ならあそこの部屋でしばらく過ごしてくださいね。ご飯はロボットが調理し、運ばれてきます。風呂とトイレは部屋に完全完備。エアコンとテレビぼ付いているわ」
「えっと……」
バタン
私は戸を閉める。
「ユイ?」
呼び掛けても答えがないと言うことは自室にこもってるはず。
「ユイ、完了。」
「ん。ね、私、明日から二週間デビル開けて行ってくる。」
たまにユイはふらっと何処かに行ってしまう。
「そっか。OK」
私はユイの部屋を出た。
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「ん〜。あー!」
ユイが出てから一週間が経った。
私はファイルを開きUのことを書き足す。何気にこの作業が一番面倒臭い。
「あーーーーー!」
だからこのようにして叫んでいる。
名前や住所、年齢などの個人情報や頭は良いのか、ゲームは強いか、女子力は高いかとか正直どうでも良い事も書く。これはユイの考えから。
♪プルルル♪
「レイ?そっちに郵便で段ボール来たら中身を絶対に見ずにデビルの玄関の郵便ボックスに入れておいて。」
「あ、うん。OK〜。」
「ん。じゃあね」
あれ……?ユイは何故中身を絶対に見ずに郵便ボックスに入れてって言ってきたのだろうか……。
「……取り敢えずまずはUの事書かなくちゃ…」
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ユイが帰ってきてから2日後。
「あ、そうだ。次のターゲットはOね。悪用確率10%。場所はこの地図の街の方で当たるわ。」
「OK。ユイ、今回もミッションm?」
「うん。というかそのネーミング、どうかと思うけど。レイの発案よね。」
うっ。相変わらずユイの鋭い指摘に私は何も言えなくなる。
「ギクッ。それより…UからZのことはどうだった?」
「Uからは目新しい情報は得られなかったわ。Uは女性で小柄ってだけ。」
「うーん。私達が今十五歳だから後三年か……」
「短いようで長いし長いようで短いわね。」
私は目を閉じる。十五年。
この内の十年を私とユイはデビルにかけたって事か……
「ね、ユイ?ユイの後悔は何?私はね、もう少し趣味を見つけてのんびり暮らしたかったかも。」
「そっか。私は無いな。」
ユイはいっつもそう。私にはない落ち着きを持っていて自分の運命をある程度認めている。そういうところが羨ましくも怖くもあった。
「じゃ、部屋に戻るね。」
「ん。」
私は自室の引き出しから古い紙を取り出した。
「人類思考感知症。」
何度見ても変わることはないのに見てしまう。
私は0歳の時から人類思考感知症患者。人の記憶や考えをその人に触れたら分かってしまう。
「余命十八年、か。」
私はその紙をそっと引き出しに戻した。
シリーズになってしまいました💦誤字脱字ございましたらご指摘ください。
みはなだちゃん、ぺんぎんさん、ありがとうございます!