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ブライユ王子
ブライユ王子
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彼は、意地悪で女たらしな王子として知られていた。その一方で優しく、面倒見が良く頭もいい一面もあった。だが、そんな一面を知るのも王城で彼を慕う、ごく数人の者だけだった。
嵐の日、彼を嫌う親族から無理やり船に乗せられた。当然船は転覆した。
彼は、自分が死ぬ運命ならそれで構わないと思いながら沈んでいった。
そして、意識が途切れた。
目を覚ますと美しい|女神《ヴィーナス》のような女性がいた。とても寒そうな服装だった。しかし、海から陸へ急に移動し、風で体が冷えている王子は上着を貸してやれなかった。
彼女は、彼女程ではないが美しい装飾のコインをくれた。
城下町まで歩いていくと、町の人々は王子を避けて歩いた。王子は馬車を頼み、自らの体温をどんどん奪っていく上着を脱ぎ、バサバサと振って水気を飛ばそうとした。馬車が来たため、乗り込むがやはり寒い。御者に行き先を告げ、彼は疲れから深い眠りへ落ちた。
御者の「着きました」という声で目を覚ました彼は馬車を降り、上を見上げる。
そこには、親族が決めた婚約者の住む王城があった。
婚約者の名前はローズ。王子と、ローズの親族のみロージーと呼ぶことが許されている。
門戸を叩き、叫ぶ。
「ロージーいいいい!開けてぇぇぇぇぇ」
するとローズが顔を出し、「うるせぇ!帰れぇぇぇ!」と叫んできた。
無情だ、と思いながらコインをローズの方へ投げる。
ローズはそれをパシッとつかみ、部屋に引っ込んだ。
十分待った。二十分待った。しかし、ローズは開けてくれない。
「ぶぅえっくしょん!」
雨に打たれ続け、風邪を引いてしまったようだ。ローズもなかなか意地悪で、誘惑してきたかと思えばあっかんべーしてくるのだ。コインを取られてしまった事と、寒いことで落ち込んだ彼はトボトボと帰ろうとした。どこからか風に乗って
「ちょっと待って。ストップストップ!」
と聞こえた気がしたが雨の音にかき消され、彼の耳には届かなかった。
そうして、王子の手からローズの手へ、コインは移動した。
ハーマイオニー登場してて草w