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隣の学校の元ヤンに恋する
Hitokage
朝は時間通りを心がける。いつもと同じ時間6時23分27秒に起きて、身支度。6時30分00秒には朝ごはんを食べ始め、6時45分00秒には完食。6時55分には後片付けも済ませ、7時ちょうどに家を出る。私の通っている学校はバスで30分ほどだ。バス停まで歩き、バスを待つ。バスが来る。いつも通りガラッとしていて私以外誰もいない。パスモを当てて、支払いを済ませ、私は一番奥の一番左の定位置に座り、胸元までの髪を二つ結びにする。二つ結びにしようと櫛を取り出したところで前にある座席に「このバスは今月末で廃線します。××交通」という文字が目に入る。(そりゃそうだろうな)次々と通過していくバス停を眺めながら二つ結びにする手は止めない。このh県は人口が少なく、全国でぶっちぎりで地域過疎化しているのではないかと思う。高等学校は私の住んでいる区では五つしかない。しかも、私立は2校だ。だから、受験する人はそのどちらかを選ぶかしか選択肢がない。家にも鍵をかけずに出かける人だっている。大体の家はこじんまりとしていて、金目のものなんかもそんなになく、取られる心配もない。(卒業したら東京行ってみたいなぁ)幾度となく思った考えを今日も考える。「次は無月夜高校前ー無月夜高校前ー」のんびりした女性運転手の声と共にモニターに表示された文字を見てボタンを押す。ガコンという音と共に扉が開く。降りて学校に行く途中の信号で立ち止まり、おでこから顎にかけてスッと右手で撫でるようにして深呼吸をする。これは、儀式だ。今日もあのクラスの一員。そう思うだけで少し気分が憂鬱になる。いつもギャアギャアと騒がしい教室、私の机の目の前で獲物を見つけ、それをいじめるうるさい男子。ヒソヒソしながら誰にでも分け隔てなく接しているように思えて、密かにカーストを作る女子。そんなクラスの一員。いつからか、この儀式をしないと落ち着かない。仮面をかぶるようなこの動作。誰にも目をつけられず、優等生の仮面をかぶる。そんな意味がある。「…行こう」信号が青になると同時に私は学校への一本道を歩く。