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ピリ辛姫と海賊島の伝説
こくまタイマー事務所に東京地検特捜部の家宅捜査が入った。所長の熊蔦タクマが東京わさび工房の女社長ピリ辛姫の養育費を脱税していたのだ。タクマは容疑を否定したが潜伏先のインド飯屋から未使用タケノコが大量に見つかった。DNA判定の結果タクマはピリ辛姫の元夫パープル竹ノ内氏の音楽事務所で違法カラー大麻を育てていたのだ
調査の結果、Pirate Bayの創設者であるGottfrid Svartholm Wargがこの事務所で違法薬物の栽培も行っていたことが判明し、Gottfridはカンボジアに逃亡した後、海賊行為の罪でスウェーデンに送還され、裁判を受けることになりました。ゴットフリッドは3年間の保護観察処分と社会奉仕活動を言い渡され、スウェーデンのパスポートの保持が許可された。
ゴットフリッド氏の弁護士であるペール・エリクソン氏は、この状況は「非常に悲しい」ものであり、無罪になるまで「精力的に戦い続ける」と述べています。
Pirate Bayの共同設立者であるFredrik Neijの弁護士はAftonbladetに対し、Fredrikは守秘義務契約によりこの件についてコメントしないが、彼のクライアントが法的手続きに参加できるように法律が変更されることを望んでいると述べた。
一方で、Farfer氏は「こういう事態は起きてしまった。我々は彼らがPirate Bayの組織から完全に独立したと決まったわけではなく、新しいPirate Bayが、彼らには何とかできる」とし、「彼らがPirate Bayの組織に従って、組織に対抗できるものと思うことはできない」としています。
Pirate Bayについて
Pirate Bayは2010年に設立され、世界各地のパートナーや、世界的に有名な団体からの賛同を求めています。
Pirate Bayは、世界中の組織からの組織の同意の元、インド、ネパール、中国、パキスタン、カンボジア、バングラデシュ、スリランカ、スリランカ以外の国々も含め活動を展開しています。Pirate Bayは、インド、ネパール、台湾を含めることもできますが、中国だけは独立した組織としてこれまでの3国であるイギリス、ノルウェー、デンマーク、イギリス連邦と合同しています。
Pirate Bayへの加入、そしてPirate Bayの独自に管理する権限の法的な管理は、Gottfrid Svartholm Wargによって行われています。Fredrikの弁護士は次のように述べています。「Pirate Bayはアジアに支部を置く組織で、世界の各国家にも同じような組織が存在していると信じています。 彼らは私たちのために様々な問題を起こさないで安心して活動ができ、この組織でビジネスと私たちが信頼できるもっとも確実な証拠や証拠が存在するアジアに行けることを期待しています」
Pirate Bayの詳細については、こちらをご参照ください:
●取調室
ここまで資料を呼んで彼は絶句した。
「タクマがピリ辛姫の代わりに女社長として働いてたんだよ」
「パープル竹之内を……」
新鋭事務所の所長の熊木が、思わず叫んだ。
「なんだ?」
「どうして彼女の会社の人が、こんなこと……」
刑事が任意聴取を続けた。「インド飯屋からこんなものが出てきたんだがな」
ぱさっとCDが放り投げられた。魅惑のインド3分間カラー大麻ヨガと書いてある。
出版元はパイレーツベイ。あのインターネットで有名な海賊サイトだ。
「これはうちの海賊版じゃないか!しかも魅惑のインド3分間ヨガに余計なコンテンツを追加しやがって」
「いいから出てこい!」
今度はパイレーツネットワーク社から出てきたのは、ヒップホップファンクミューズである。
「ヒップホップファンクミューズ」と銘打っているがヒップホップではない。ただのヒップホップマンガだった。
「あんたがお断りしたからやってるんだと」
「違うよ。ヒップホップファンと一緒にやってるんだよ」
ヒップホップアーティストが言うのもなんだが、この出版社はインドコンテストには出ない企業だ。
何で出ないと思う?
「ヒッドホットワーク社って、ヒッドホットワークはヒッドホットワーク社の略だよ。ヒッドホットワークとはインド人向けのインドのコンサートを開くことを言うんだ」
「それならわかるが……」
「ヒッドホットワーク社に電話だ」
俺は慌ててデスクに置いたパソコンの電源を入れた。この時間にパソコンを開いてもしばらくメールは来ないので、俺はインドでは、インド向けのレコードレーベルも作ってる出版業だ。
「お、出たな。ヒッドホットワーク社のサイトだ」
インド・アート・ミュージックと銘打っていて、ヒッドホットワーク社はヒッドホットワーク社のレコード部門を分けている。
ヒッドホットワーク社のレコード部門にはもう一つレコード会社がある。
この「トランス・エンタテインメント・レーベル」だ。「インドで大人気のヒップホップレーベル」らしく「トランス・エンタテインメント」、ヒッドホットワーク社では「トランス・エンタテインメント・レーベル」と呼んでいる。
俺は電話でパイレーツベイ出版社より先にインド向けのレコードを送ってもらうように依頼した。
「おい、誰だ?」
「誰だ、だって?パイレーツベイ出版社からの依頼だろ?それは頼んでるんだよ」
「お前の電話か?」
「ああ、パイレーツベイ出版社から頼まれたんだよ」
「誰だって聞いてんのさ」
「誰だって聞いてんだよ!」
「おい」
どうやら、俺は誰だったか知らないんだが、パイレーツベイ出版社からの依頼を受けているらしい。
「お前、誰だよ?」
「だからさ、誰だっつってんだよ」
「だから、誰だって聞いてんだよ!」
「あー、誰だって聞いてるんだよ!」
「いや、誰だって言ってんだよ!」
「だから、誰だっつってるの?何だっていいんだよ!」
「おい、誰だって聞いてんだ?誰だって言ってんだよ!」
「あー、誰だって聞いてんだ?誰だって言ってんだ?何だって止めてくれよ」
「だから、誰だって聞いてんだよ!」
「誰だって聞いてんだよ!」
電話はすぐに着いた。
パイレーツベイ出版社からの依頼であった。
俺は「誰だって聞いてんだ?」と聞いたのだが、パイレーツベイ出版社からのお知らせだったとわかった。
これは知ってる名前だが、何で教えてくれなかったのか。まぁ、こんな依頼を出すのは気のせいだと思っておいた。
パイレーツベイ出版社からの依頼はシングルレコードで、「タイトル / 曲 / 曲名」が表示される。
「誰だって言ってんじゃん、それ、シングルレコードだよ」
「そうだ、パイレーツベイ出版社からだ」
パイレーツベイ出版のシングルレコード、「タイトル / 曲 / 曲名」表示、シングルレコード。
これは映画「タイムスリップした」、「タイムスリップ・ファイル」を意識して、シングルレコードとシングルのタイトルが表示された。「タイムスリップ・ファイル」は映画ではありえない。何か秘密を守るために必要な物である。
このシングルレコードは、映画と違い、「タイムマシン」ではなく「タイムスリップ・ファイル」というタイトルの為らしい。
パイレーツ出版のシングルレコード、「タイムマシンにお願いした。」。
「タイムマシンじゃないんだな」
「そう、タイムマシンじゃなくて『タイムスリップ』ってなってるからね」
「どういう意味だ?」
「そういう意味なんじゃないかな」
「そういうことか……」
「そうなんじゃねぇかな」
俺達は考えた。
そういえば、パイレーツベイ出版社は、俺が電話している時もずっと誰かと喋っていた。
相手はどこにいるんだろう。
そう思った。
俺達がいるのは取調室だ。
取調室は静まり返った。「あのさ、そっちは、どこで喋ってんだ?」
「ここだよ」
声が聞こえた。
「取調室にいるのは、俺と君だけだよ」
取調室は静まり返っている。誰もいない。
「誰が言ったんだよ?」
「誰が言ったんだよ?」
「え?」
「だからさ」
「あのさ」
「ちょっと待て」
「いや、待つのはこっちだ」
取調室はしんと静かになった。
どうやらクスリが切れてきたようだ。このクスリは本当に切れる。効き目がなくなるのは時間の問題だ。
俺は薬が切れないうちに、急いで電話をかけた。
Pirate Bay 海賊島 海賊の島に似せて作られたオフィス。
Pirate Bayはインドやネパールで活動を行なっている国際組織であり、世界中の支部からの支援を募っています。
Pirate Bayへの加入、そしてPirate Bayの独自に管理する権限の法的な管理は、Gottfrid Svartholm Wargによって行われています。
Fredrikの弁護士はAftonbladetに対し、Fredrikは守秘義務契約によりこの件についてコメントしないが、彼のクライアントが法的手続きに参加できるように法律が変更されることを望んでいると述べた。
一方で、Farfer氏は「こういう事態は起きてしまった。我々は彼らがPirate Bayの組織から完全に独立したと決まったわけではなく、新しいPirate Bayが、彼らには何とかできる」とし、「彼らがPirate Bayの組織に従って、組織に対抗できるものと思うことはできない」としています。
Pirate
Bayの詳細については、こちらをご参照ください: ●タクマのアパート
「あ、もしもし、タクマですか?私です、私の会社です」
Pirate Bayの創設者であるGottfrid Svartholm Warg氏は、「私はインドから出ることができない」と言い張るばかりで話になりません。タクマ氏に電話をしてみました。
「私はチリでちり取りのしりとりでいそがしい。い、インド人……うわぁ!負けたぁ!!」
Pirate Bayの創設者であるGottfrid Svartholm Warg氏がインドで逮捕されてから数日後のこと。
俺はいつものようにタグマに呼び出された。
俺の部屋はタグマに貸してやった。
タグマはインドでの活動をしたくないらしく、ピリ辛姫の娘をデビューさせたいらしい。娘はインド出身なのだが、日本で活動したいということだ。
俺はインドから逃げられると思ったが、タグマがそれを許してもらえず、俺はタクマの部屋で、インドとネパールの音楽を聞いていた。
俺達はピリ辛姫の会社の曲を聴こうとしなかった。理由は簡単だ。「こんなのインドでも日本でも受け入れられないよ」
と俺は言う。
「そうか?こんなの普通だぞ」
「そうなのか……」
俺がそう答えると、タクマが「これだろ」と言って一枚のCDを渡してくれた。
「これって」
CDを見て俺は言葉を失った。「パイレーツベイからCD出してるじゃないか」
CDに写るのは、見覚えのある海賊のマークだった。
Pirate Bayのウェブサイトだ。
海賊のシンボルマークが海賊島にある建物に似ている。その海賊島は、海賊の島を模して作られたインドだ。
Pirate Bayのウェブサイトだ。
海賊のシンボルマークが海賊島にある建物に似ている。その海賊の島は、海賊の島を模して作られたインドだ。
「何でお前がこれ持ってるんだよ?」
俺はタクマを見た。海賊のマークが入ったジャケットは海賊の島で作られたものではないらしい。海賊の島から遠く離れてもいないらしいが、別の海賊島らしい。海賊の島のホームページは海賊のマークがついた船の絵が描かれていて、海賊の島は海に囲まれているが陸地があるらしい。
「海賊島のページに載ってたんだよ」
「嘘だ。それならタグマだって見たことがあるはずだ」
「いや、見てなかったけど」
「お前は見ないと」
俺は慌ててパソコンを立ち上げた。「何やってんだよ?」
「お前は見るなよ。俺は今からこの海賊島に行くんだよ」
俺は慌ててブラウザを立ち上げて、Pirate Bayのウェブサイトを開いた。Pirate Bayのサイトは英語で書かれている。
海賊島のサイトは英語じゃないが、手書きで日本語メッセージが書いてある。「タケノコでキメてみませんか」
「この字に見覚えがあるぞ」
それはインド飯屋から押収された伝票の筆跡とそっくりだからだ。パープル竹ノ内が書いたものだ。
「誰かが嘘をついているんだ」
俺は焦ってキーボードを叩きまくった。俺は急いで検索した。この字は誰のものか?このサイトは何のためにあるのか?なぜ、海賊のマークは海賊の島で使われているのか? 海賊島のサイトのURLを見つけ、俺はそこに入った。俺は、このURLを知っているが、俺はそこに行ったことがない。
「お前も来てくれ」
俺は急いで準備した。タクマを連れて電車に乗り、バスに乗って、ようやく海賊島にたどり着いた。
「着いたぜ」
俺は言った。目の前には海賊の村が広がっている。
「おい、ここにいるとまずいって!」
「大丈夫だよ。誰も俺達のことなんか知らないんだって」
俺達は歩きながら話した。
「俺達って誰だよ?」
「お前はさ、俺の相棒だよ」
「お前の?」
「そうだよ。何だよ?嫌だってのか?」
タクマは黙って首を横に振った。
海賊の村の通りを歩いた。
村では人々が忙しく働いている。
タクマは俺に向かって言った。
何だか寂しそうな顔をしている。
海賊の村は、インドとネパールと、海賊島から成り立っている。俺達は海賊島の中心に向かうように歩いていく。俺達は村の広場に来た。そこには海賊の像があった。俺達はその前で写真を撮った。
写真の中の俺達はピースサインをしている。
その後、俺達は村から出て、少し離れた所までやってきた。俺は、俺のアパートで話をしようと言った。
俺の部屋に行こう。そこでゆっくり話をしたいんだ。俺のアパートに行けば、何かわかるかもしれない。
Pirate Bayの創設者であるGottfrid Svartholm Warg氏の弁護士は、彼は無実であることを強調しています。彼はまた、Svartholm氏と連絡が取れなくなったことを残念に思っていると述べました。
しかし、Gottfrid氏は現在、勾留されており、裁判所の決定を待つ必要があると述べています。Gottfrid氏によると、彼が拘留される前にも連絡を取ることができていたということです。彼はインドの警察に逮捕されて取り調べを受けた際、容疑を認め、麻薬の販売を行なっていたことを認めたが、密輸や栽培については否認したという。彼は自分の弁護士に弁護を依頼している。
タクマは不安げな表情で口を開く。
あのさ、この前さ、インドから帰ってきたんだよね。インドでいろいろあったんだってな。俺はインドで大変な目にあったんだよ。
知ってるよ。ニュースになってるもんな。それに俺もタクマもパイレーツベイの社員になったしな。
それでさ、俺、思ったんだけどさ。俺達はこのままだとやばいと思うんだ。だからさ、俺達はもう辞めようかと思ってるんだ。俺達はこれから二人でやっていける自信がない。
俺もタクマと同じことを考えてる。だけどさ、今は我慢しろよ。タクマはここで逃げてどうするんだ?
「パープル竹ノ内をぶち殺す。あの野郎。ピリ辛姫の娘までシャブ漬けにしてやがった。まだ高校生だぞ」
俺の友達に手を出さない方がいいと思うよ。俺達は、あの時、ピリ辛姫を助けてやったんだよ。忘れたのか? あれは助けたんじゃないだろ?お前達がやったことは、あの女が言ってたこととは違うだろ?あいつらは、自分達を海賊の使いだなんて言ってるけど、ただのヤク中のチンピラじゃないか。
確かにそうだ。だけど、ピリ辛姫の娘がヤク中なのは事実だよ。俺達にどうすることもできないじゃないか。
違うね。どうにかできるだろ。あの時の借りは返す。俺はあの頃とは変わってしまった。今の俺はピリ辛姫の娘を救いたいと思っている。俺一人ではできないけど、お前がいればきっと救えるはずだ。俺はまだやり直せる気がする。タクマ、頼むから、俺と一緒に戦ってくれないか。お前だけが頼りなんだ。
そう言った瞬間、俺は床に叩きつけられた。背中を強く打ったが、痛みはすぐに引いた。
タクマに殴られたようだ。タクマは立ち上がり、今度は蹴りを入れた。
タクマは、俺を睨みつけながら、俺を見下ろしている。
タクマは俺を殴った後で立ち上がった。「この野郎。お前はどこまでお人よしなんだ。騙されていることに気づけよ。バカ」俺はタクマの目を見た。
俺はタクマのことをよく知っている。
タクマはいつだって優しい奴だ。タクマが本当は良い奴だということくらいわかってる。だけど、俺はタクマを巻き込みたくない。
タクマ、お前がやろうとしてることは犯罪だ。だけど力づくで言うことを利かせるしかないようだ。タクマ、お前を殴りたくはない。俺はお前に勝ってでも、タクマを止める。
タクマは、拳を振り上げた。俺はタクマに組みついた。俺とタクマは揉み合いになり、そしてタクマの肩に噛み付いた。
彼は言った。「お前はピリ辛姫の娘がどんなあくどい事をしているか知っているのか。ピリ辛姫は不妊に悩んでいた。実家から孫の顔が見たいと催促されノイローゼになっていた。それで悩んだあげくインドで妊活をした。凍結精子を融通したのはインド飯屋だ。奴はパイレーツベイで凍結精子を購入してピリ辛姫に高値で転売した。そして、生まれたのがピリ辛姫の娘だ」
「なんだと!? ピリ辛姫の娘はそのことを知っているのか?」
「ああ。本人は知らなかったがアングラサイトに詳しい同級生からこんなことを吹聴された。『お前のカーチャン、凍結精子を違法に購入しただろ。顧客名簿に載っている。バラしてやろうかw』」
「うわっ、ひでーな」
「ああ。ピリ辛姫の娘はその同級生と寝る代わりに母親に関する情報を洗いざらい得た。そしてピリ辛姫を脅迫した。その結果ピリ辛姫の娘は東京地検特捜部のおとり捜査に協力する代わりに無罪放免を勝ち取った。怖い女だよあの女子高生は。売られたのはこぐまタイマー事務所だ。目論見通りがさ入れされた。そして俺はお縄になり保釈金を積んでようやく自由になれたというわけさ」
タクマは泣き出しそうな顔で、言った。
タクマは、本当に優しい男だ。俺はタクマの気持ちがよくわかった。
だが、俺はここでタクマを引き止めなければならない。
俺はタクマを説得しようとした。するとタクマは、怒りの表情を浮かべ、声を上げた。
お前は一体何様のつもりだよ。お前は俺のことなんかこれっぽっちも理解していないじゃないか。
俺はタクマのことをよく理解しているつもりだった。
俺がタクマを理解していないと言うなら、それはどういうことなのか。俺はタクマに問いかけた。俺はお前がやろうとしていることは正しいとは思えない。だけど、俺はお前を信じている。お前は俺の相棒だからな。
タクマは悲しそうな顔をしていた。俺の相棒、俺の相棒か。タクマはため息をついて、俺から目をそらし、下を向いた。俺はタクマが話を聞いてくれるようになったのだと思った。俺は嬉しかった。俺が話を続けようとすると、タクマは俺を睨みつけて言った。
俺は、俺が何を考えているかわかったぞ。お前の考えてることを当ててやる。
お前、
「タクマ、聞いてくれ。今から言うことは真実だ。俺は嘘なんかつかない」
タクマが、再び俺を蹴った。俺はその足を掴む。
「俺は嘘つきじゃない」
タクマが俺の顔面を何度も蹴りつける。
「嘘つき野郎」
俺は、鼻血を出したがそれでも手を離さなかった。
タクマは俺に向かって叫んだ。「俺がどれだけお前のために尽くしてきたと思ってるんだ。俺は、俺の人生がめちめちゃになった責任を取らなくちゃならないんだよ。お前にわかってたまるか」
「そんなことはない。俺たちの友情があれば大丈夫さ」
「お前のその態度はムカつくんだよ。お前は何もわかっていないんだ」
タクマは涙声でそう言った。
俺もタクマをぶん殴った。タクマは尻餅をついたが、立ち上がって、懐からナイフを取り出した。「ピリ辛姫の娘を始末して悪循環にピリオドを打たなくちゃならね」
「何でだよ。ピリ辛姫の娘がかわいそうだろ。お前はあいつのことが好きなんだろ?」
タクマは答えない。俺はタクマの胸ぐらを掴んだ。
「タクマ、落ち着けよ。俺達で助けることはできないか?」
「うるせえな。もう俺にはどうしようもないんだよ。俺の人生を滅茶苦茶にしやがったクソどもがいる。俺の人生を滅茶苦茶にしてくれたやつらと同じやり方で、そいつらに復讐をするんだ。もう、俺は後戻りできないんだよ」
「おい待てよ。それじゃあ海賊島の海賊と同じになるぞ」
「海賊と同じだと?笑わせるんじゃねえよ」
タクマは笑い出した。俺は真剣なのに、なんで笑うんだよ?
「いいか?お前の言ってることは全てきれいごとなんだよ。あの時お前は俺を止められなかっただろ?俺は知ってるんだぜ。俺が刑務所にぶち込まれた後、お前は俺に連絡を取ろうとしなかっただろ?それで俺は気づいたのさ。俺は、所詮お前にとって都合の良い友達に過ぎなかったんだって。お前はいつも俺と一緒につるんで、一緒に悪いことばっかりやってたけど、結局お前は俺のやることを肯定してくれなかったじゃないか。お前はずっと自分の人生は自分で決めてきたって言ってたけど、俺はお前が決めた道をついていくだけで何も決めることはできなかった。お前は一人でも平気な人間かもしれないけど、俺はお前がいないと生きていけないんだ。俺が辛い時にお前に救われたから、俺はお前についてきたんだ。だけど、お前はそうじゃ無かったんだろ?俺に失望したんだろう?だったら俺から離れていけば良い。俺達はもう友達でも何でも無い。だから、俺を止める権利も無いんだ。わかったか?俺の言いたいことは」
俺は言葉が出てこなかった。
タクマは俺に背を向けて歩き出す。
「お前はもう、友達でもなんでもない。お前との縁を切る。これで最後だ」
その時、女の声が割り込んだ。まだ声変わりしてない若い声だ。
「もうそれくらいで許してやって」
驚いたことに女子高生が仁王立ちしていた。「ピリ辛姫の娘!おまえ、どうしてここに?」
「私、海賊島に行っていろいろと勉強したの」ピリ辛姫の娘は続けた。「私は、海賊島の海賊達のやり方が正しいとは思わない。あなたは間違っている。あなたのしていることは、犯罪よ」
タクマは言った。「俺を脅すつもりか?」
「脅しではないわ。忠告です」ピリ辛姫の娘は言った。
「忠告だァ!?」タクマがピリ辛姫の娘に向かって怒鳴りつけた。彼女はビクッとした。
俺は思った。タクマ、やめておけって。
「タクマ、やめるんだ」俺はタクマの腕を押さえた。タクマは暴れたが俺は絶対に腕を離さない。
「うるさい!」タクマは、俺に唾を吐きかけた。「こぐまタイマー事務所が海賊島に圧力をかけた。その結果ピリ辛姫の娘がおとり捜査に協力することになった。パイレーツベイはおとがめ無しだ。こんなのは理不尽だ。俺はピリ辛姫の娘に会って、パイレーツベイを訴えるよう助言する。これは正義だ」
タクマがそう言った瞬間、
「正義だって?」ピリ辛姫の娘は怒りに満ちた表情を浮かべていた。「海賊に脅かされている人たちが、パイレーツベイを訴えてもまともに取り合ってもらえないことくらい、私はよく知っているわ。それに私はおとり捜査に協力するつもりはない。私はこの人と一緒に行くって決めたの。私の行動が海賊の思うつぼでも、それは私の選んだ道なんだから」
タクマが俺に掴みかかった。俺はタクマの頭を抑えつけているので精一杯だ。
「タクマ、俺がお前を正しい道に引き戻してやる」
「お前は何様のつもりだ?俺は間違ったことなんてしていない」
ピリ辛姫の娘が俺の前に立った。
「やめて」ピリ辛姫の娘の両手が俺の顔を包む。「暴力を振るったらダメ」
「タグマ君、落ち着いて」女刑事が割って入った。「彼は被害者なんだから」「違うね」
「違くはないわ」
タクマは言った。「あんたたちはみんなでグルになって、俺をおとしいれるつもりだったのだろう」
「何の話ですか?」「しらばっくれるな。俺の邪魔をして」
ピリ辛姫の娘が言った。「タクマ、あなたは騙されてるわ」
「俺を騙してるのはお前達の方なんだよ」
ピリ辛姫の娘が言った。
「とにかく今は、タクマの言うことを聞かなきゃだめ。タクマを逮捕させちゃダメ」
ピリ辛姫の娘は俺の手を握った。
俺は思わず手を振り払った。「触るな」
「ごめんなさい」
「タクマ、ここはいったん引こう」俺は言った。
「引くもんか」タクマは俺を殴った。
タクマは女刑事を指差して言った。「俺の邪魔をするな」
女刑事は言った。「いいえ、私はあなたの味方です」
「嘘をつくな」
「嘘じゃないですよ。とりあえず今日は一旦帰りましょう」
「帰れるか」
ピリ辛姫の娘は言った。「タクマ、今なら間に合うよ」
「間に合わない」
俺は思った。やめてくれよ。タクマ、
「いい加減にしろ」
「お前がな」
「タクマ、いいかげんにしなよ」
「お前は黙ってろ」
「やめて!」ピリ辛姫の娘が声を上げた。
タクマは言った。「おい、ピリ辛姫の娘。俺を脅迫するつもりか?俺のやっていることが正しいと言ってくれたのはお前だけだったんだぞ」
ピリ辛姫の娘は言った。「脅迫なんかしない。お願いだからタクマ、帰って」
「うるせーな」タクマは俺を蹴り上げた。
俺は言った。
「タクマ、お前を絶対に帰さない」
タクマは叫んだ。「もう、お前の言うことは信じない。もう、お前なんかに俺の人生をめちゃくちゃにされるわけにはいかないんだ」
「タクマ、俺を信じてくれよ」
「信じるか」
「じゃあ、ここで決着をつけるしかないな」俺は立ち上がった。
「お前をぶっ殺す」タクマが拳を構えて突進してきた。俺はその腕を掴む。俺は足をひっかけて、タクマを転ばせる。倒れたタクマの胸ぐらを掴む。俺はタクマの胸板に膝を当てて押さえつける。タクマが叫んだ。俺は耳を塞いだ。俺は叫んだ。タクマの悲鳴だ。
女刑事が俺の腕を掴み、俺の動きを止める。俺は振り払おうとしたが、女刑事の力が意外に強い。女警官の肩が外れそうだ。俺は女警察官の頬を思いっきり引っ叩いた。女刑事は俺を突き飛ばした。
俺はタクマに向かっていく。俺とタクマの間にピリ辛姫の娘が立ちふさがった。俺は彼女を殴りつけた。彼女は地面に倒れ込む。俺は彼女の髪を引っ張る。彼女は俺の脚にしがみついた。
俺は彼女を引き剥がそうとしたが、彼女は俺の股間を力いっぱい握った。俺は痛みに悶絶した。彼女は立ち上がると、俺を睨みつけて走り出した。
俺は痛くて動けない。
「これでもくらえ!」
ピリ辛姫の娘が俺の口に何かを突っこんだ。くわえた途端に視界がゆがんだ。うわっ、これは違法なカラータケノコだ。意識がぐるぐる回転する。俺は仰向けにひっくり返った。身体が動かない。誰かに担がれた気がした。
俺は気を失った。
* 目を覚ますと白い天井が見えた。頭がぼんやりしている。病院のベッドに寝かされているみたいだ。起き上がろうとすると、背中と後頭部に激痛が走った。俺はうめき声を上げて再び横になった。後でわかったが、後頭部の打撲傷が酷かったようだ。俺は首を動かすと自分の手足が拘束されていることに気づいた。手錠をかけられてベッドに縛り付けられている。病室のドアが開いた。入ってきたのはピリ辛姫の娘だった。彼女は言った。
彼女は手に持っていたコンビニ袋の中から缶コーヒーを取り出した。俺はそれを受け取った。彼女は言った。
ピリ辛姫の娘は、海賊島のタクマが捕まったことを話した。彼は取り調べで自分の犯行を認めたらしい。そしてパイレーツベイを訴えるつもりは無いと言ったという。
俺は訊いた。
なんでそんな話をするんだ?君は俺にどうしてほしいんだ? 彼女は言った。
私は、あなたがタクマを止めてくれると思っていたの。だから一緒に行ったのに。結局、あなたはタクマを救えなかった。タクマを刑務所に入れたのはあなたよ。
俺がタクマを救った?何を言ってるんだ? 俺は思った。
ピリ辛姫の娘は、本当はタクマと仲良くなりたかったんじゃないか。しかし、ピリ辛姫の父親は、彼女がタクマに近づくのを嫌った。それでピリ辛姫の娘は、自分がタクマの友達であることを周りに知られないようにした。ピリ辛姫の娘がタクマに近づかなくなった本当の理由はそれではないのか。ピリ辛姫の父親が彼女に言った台詞を思い出した。
父親から聞いた話だ。――タグマの側に寄っちゃいけない。あの子は悪い子に育ってしまう。
(もしかすると、この娘は父親の言葉を守ろうとしただけなのではないか)
彼女は続けた。
私はあなたのことが好き。でもタクマは私にとって大切な存在なの。タクマが犯罪を犯すことで、私が辛い思いをする。それは避けたいの。タクマには前科をつけたくないの。私のためにタクマが犯罪者になるなんて、そんなのは間違っていると思うの。
タクマを逮捕させないで。彼は更生するから。タクマがパイレーツベイを訴えなければ、パイレーツベイはおとり捜査に協力しただけだと主張して、お咎め無しになるかもしれないわ。そうなれば、タクマをパイレーツベイに渡さずに済む。タクマをこのまま釈放してください。
俺は言った。タクマを逮捕させたのは、パイレーツベイじゃない。それは警察の判断だ。君の父親の言葉がタクマを苦しめているのだとしても、俺が責任を取ることじゃない。
俺はタクマを救いたい。
彼女は言った。
私を助けてくれたあなたが、今度はタクマを助けるの? 俺が君に助けを求めたのは、ただ君が俺に都合の良いことを言ったからに過ぎない。もし、俺が海賊島に行きたいと言わなかったら、俺は海賊島に行かなかっただろう。そもそも、君は俺と一緒に来なくてもよかったじゃないか。
そうね。
「俺と一緒に来たからといって、必ずしも俺の役に立つとは限らない」
俺は思った。「それに俺は君のヒーローじゃない」
彼女は言った。
「タクマが逮捕されてもいいの?」
「それは良くない」俺は言った。
「タクマが犯罪者になってもいいの?」
「それも嫌だ」俺は言った。
「じゃあ、私の言うことを聞いて」
「俺は君のためを思って言った」
「嘘よ」
「本当だよ」
「私のことなんて何も考えてくれない」
「君を助けた」
「嘘よ」
「本当だ」
「私のことなんて、どうでも良いんでしょう」
「そういう言い方は卑怯だと思う」
俺は、ふと思った。もしかするとこの娘は、俺のことを好きなのではないだろうか。
「ねえ」ピリ辛姫の娘は言った。「もしも私が、あなたのことを好きっていったら、あなたはどう思う?」
「嬉しいよ」俺は答えた。「ありがとう」
ピリ辛姫の娘は言った。「……やっぱりダメか」
彼女は俯いて呟いた。
しばらく沈黙が続いた。やがて、彼女は顔を上げた。「じゃあ、あなたは、私のことを愛してるって言ったことある?」
「…………」
「一度もないでしょう?あなたはいつも私のことを道具として見ている」
「いや、俺は君を大事に思っている」
「信じられないわ」
「どうしてさ」
「だって、私達は、今まで何一つ分かり合えてないもの」
「それは俺も同じだ」
「あなたが愛してるのは、自分だけでしょ」
「俺は、自分に自信が無いんだ」
「私はあなたを尊敬してる」
「俺がどんな奴か、よくわかっているだろ」
「ええ、でも私はあなたのことを嫌いにはなれない」
「……」
「あなたは私のことが、大切だと思えるほど、深く知り合ってはいない」
「確かにそうだ」
「でも、タクマは違う」
「ああ」
「あなたのことは信頼してる」
「うん」
「あなたのことも、あなたの考え方も尊重しているわ」
「そうだな」
「私はあなたを心の底では軽蔑してる」
「俺のことなんて信じなくていいよ」
「タクマはもっと酷い」
「……」
「彼は私を大切にしてくれる。私を受け入れてくれているの。私はタクマをとても愛しているのよ」
ピリ辛姫の娘は俺の目を見つめながら話した。彼女の目の中に、かすかに光るものがあった。彼女は涙ぐんでいた。彼女は声を上げて泣き出した。
「俺はタクマと仲直りしたい」俺は彼女に言った。
「無理よ」彼女は鼻をすすり上げ、ハンカチを目に押し付けた。「もうタクマとは会えない」
「どうして」
「もうタクマを裏切れない」
「君はタクマとずっと一緒なんだろ」
「私はタクマを裏切った。タクマにもう合わせる顔がないわ」
「君のせいではない」
「タクマが警察に逮捕されたのは私のせいだもの」
俺は言った。
じゃあ、
「タクマが君を許さないとしよう。それでも君は、彼のためにできる限りのことをやるべきだと俺は思う」
**
***
俺は海賊島のタクマに会いに行くことにした。
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海賊の村は海賊島から歩いて2時間くらいかかる場所にある。
「海賊島まで行きましょう」
俺は言った。俺が背負っていたバックパックの中にあったロープが無くなった。女刑事はどこかへ行った。タクマとピリ辛姫の娘が警察署に連れて行かれた後、彼女はすぐに姿を消した。
「あの刑事さんはどこに行ったんですかね?」俺はピリ辛姫の娘に訊いた。
彼女は言った。
あの人は海賊島には行かないみたい。私達を監視する役目があったのに。多分、私達の後をつけてくるのをやめたんだと思う。
「それなら、俺達がタクマと話をしても問題ないですね」
俺はそう言って、歩き始めた。タクマのところへ行く前にピリ辛姫の娘を家に帰した方が良いかもしれないと思い、彼女の手を引いた。しかし彼女は動こうとしなかった。俺は彼女を強引に連れていくことはできなかった。
「タクマに会った後、またここに戻ってきてもいいですか?」
ピリ辛姫の娘は言った。
もちろん。でも今日は遅いから、明日にしたら? 俺は、わかったと返事をして、一人で先に進む。
* * *
* * タクマが刑務所に入っている間、
「ピリ辛姫はタクマの無実を証明する証拠を見つけることができるのか?」
「彼女はタクマと仲良くなることができるか?」
「タクマと彼女は付き合うのか?」
* * *
* *
「海賊の村」と呼ばれる地域は、
「かつてタクマが住んでいた場所だ」
* * *
* * タクマが収容された建物は海賊島の一番端っこにあり、小さな倉庫みたいな感じの建物だった。建物の入り口には警備兵が配置されていて厳重に警戒していた。俺はその建物を眺めた。
「こんな所に、タクマがいるのか」俺は思った。
* * *
* * タクマが捕まった場所は刑務所ではなかった。タグマの話では、タクマは取り調べのために留置所に移されたらしい。タクマはそこにいるのだろうか?
「もし俺の想像通りなら、ピリ辛姫は俺と協力するべきだ」俺は思った。
俺はピリ辛姫の娘に言った。
「ピリ辛姫は、今、何をしています?」
ピリ辛姫の娘は言った。
ピリ辛姫は、私と一緒にタクマのところに行こうとしている。
「それはまずい。ピリ辛姫を止めて、ここに置いていくしかない。俺が何とかします」
ピリ辛姫の娘は、
「大丈夫。私もついて行く」
俺は彼女を連れて刑務所に入った。ピリ辛姫の娘がタクマに何か話しかけた。
「私は、タクマを信じてる」
「俺も君を信じる」
「私がタクマを助けるから」
「ありがとう」
「私はタクマの味方だから」
「ありがとう」
「でも、タクマは私を許さなくてもいいの」
「それは、君のせいじゃない」
「私のことを恨んでもいいから」
「そんなこと思ってないよ」
「私はタクマが辛い思いをするのを見たくないの」
「君を責めたりしないよ」
「タクマに迷惑をかけてごめんなさい」
「君が謝ることじゃない」
「あなたを騙してしまって、本当に申し訳ないと思っているの」
「いいんだよ」
「私を嫌いになっていいよ」
「俺は君を好きになったんだ」
俺は二人に近づいて、
「あなたは、タクマじゃない。私よ」と言った。
ピリ辛姫の娘とタクマは驚いていた。タクマが口を開いた。
君は……?……そうか。……君は俺を助けてくれた女の子か。俺は……あの時のことを覚えてる。
俺は思った。やっぱりタクマは俺のことを知っているんだ。タクマは俺の名前を知っていた。そして俺が誰なのかも理解した。つまり、俺のことを認識したということだ。
「俺は、タクマがやったことを許してる。俺はタクマと仲直りしたい。タクマは、もう俺に構うなと言っていたが、俺は、もう一度、お前と話しがしたい」
ピリ辛姫の娘が口を挟んだ。
タクマが警察に捕まるのを、黙って見てられなかった。タクマが海賊島で捕まっているのを知って、タクマを助けようと思った。私はあなたがタクマを牢屋から出してあげるように、警察に頼むつもりで、あなたを探していた。
私はタクマを警察に売ったわけじゃない。ただ私は、タクマを助けるつもりだった。あなたは私を恨んでるでしょうけど、私はあなたの力になりたいと思ったのよ。
俺は思った。じゃあ、君はタクマと俺の両方を救おうとしたということか。ピリ辛姫の娘は続けた。
私があなたを説得すれば、タクマを解放してくれるんじゃないかと思ったの。あなたはきっと、私を信頼してくれると思った。でも、あなたは私の言うことを聞かなかった。私が、いくら頼んでも、あなたの態度は変わらなかった。私は、あなたに失望した。
彼女は言った。私はあなたのことが好きだから、私はあなたに幸せでいて欲しい。だけどあなたは私のことを信用してくれない。私があなたのことを好きになったのは、間違いだった。私はあなたに騙されていた。私にとってのあなたの価値なんて、あなたにとっては取るに足らないものなのね。
彼女は俯いていた。ピリ辛姫の娘の目からは涙が出ていた。俺は言った。
俺のことを愛してくれている人がいるとは思わなかった。俺にできることなんて何もないと思っていた。
ただ本質を見誤らないでくれ。本当に悪いのはパイレーツベイだ。海賊島は関係ない。俺がピリ辛姫の娘に言えたのは、それだけだった。彼女は、俺に別れを告げて去っていった。
ピリ辛姫の娘がいなくなると、俺は言った。タクマ、俺はピリ辛姫と二人で話がしたい。君とは少しの間だけ、お別れだ。タクマが解放される時が来たら連絡して欲しい。俺はピリ辛姫と海賊島の村にある広場に向かった。そこは昔、海賊島の人達が集まって会議をする時に使った場所だという。俺はピリ辛姫に連れられてその場所へ行った。
* * *
* *
「ここは、俺達海賊島の住人がよく集まって話しをした場所なんだ」
「懐かしいな」
「この場所は変わらないよ」
「俺は、ここで君に会っている」
「ああ、俺達はここで出会った」
「あの時は驚いた」
「俺は君と仲直りしたい」
「俺も、仲直りしたい」
俺は海賊島を出て、パイレーツ島に戻った。
* * *
* * 海賊島の刑務所にはタクマとピリ辛姫がいた。俺はピリ辛姫を抱きしめた。俺は彼女を離さなかった。
「私はもう、逃げないわ」
「ああ」
「私は、これから自分の犯した罪を償わなければならない」
「うん」
「あなたが、それを望まなくても」
「そうだな」
「私は一生、後悔し続けると思うわ」
「君は悪くない」
俺は、ピリ辛姫に訊いた。
君は、これから何をするつもりだ? 俺は言った。俺はこの世界を変える。海賊は悪者だと言われないように。俺は、俺のような子供が現れない世界を、みんなが平等に生きられる世の中を創りたい。俺は君のように優しい人間になりたい。
* * *
* * ピリ辛姫が言った。タクマが捕まったのは、私がタクマを巻き込んだせいだと思う。だから私は、私ができる方法で罪滅ぼしをしなければならないの。
私はこれから海賊島を出るつもりだ。
タクマは俺に訊いた。君はどうする?俺と一緒か?それとも海賊島の村に残って俺の代わりに世界を変えようと試みるか?俺は海賊島に残ることに決めたよ。俺はピリ辛姫と別れたくなかった。彼女が一緒に来たいというのなら連れていく。そうでないなら俺は残る。君の判断に従うよ。
*
* * *
* 俺は答えた。俺は君と一緒に行くことにする。
ピリ辛姫と俺は船に乗った。俺はピリ辛姫の手を握り、船のデッキに立っていた。海を眺めた。船が出港した。俺とピリ辛姫を乗せた船は北に向かって進んでいった。
***
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それから何年が経っただろうか。俺は今もなお、 ピリ辛姫と行動を共にしていた。
俺は、彼女と一緒にいる時間が増えていった。
俺は彼女にプロポーズしようと思っている。
俺達の乗った船は、まだ北に進み続けている。
* * *
* * ピリ辛姫と俺の乗る船は北に進んでいた。俺は船の上で海を眺めながら考え事をしていた。海賊島に囚われたタクマが脱獄してから一年以上経っていた。ピリ辛姫と俺は海賊島を出た後も、ずっと船で移動を続けていたのだ。
* * 海賊島はインド領からパキスタン領内に入った辺りに位置しているはずだ。俺は地図を見て確かめたが正確な位置はわからないままだった。おそらく、海賊島があるとされているのは、インドやネパールのどこかだろうが、詳しいことはわからなかった。
タグマが捕まっていた海賊の村から出発した後、海賊の村には帰らずに俺は海賊島にいた時の生活を続けることにした。しかし俺は自分が今どこにいるのか、はっきりさせておく必要があると思い始めていた。ピリ辛姫は俺のいる場所は、インドのどこかだろうと推測していた。
海賊島は今頃どうなっているのだろうか? 俺は気になったが、俺とピリ辛姫は進路を西に変えることにした。俺とピリ辛姫は船に乗っている間は、ほとんど話さなかった。俺は何かを考えることに時間を費やし、ピリ辛姫は時々、俺の横顔を眺めているだけだった。
俺は、ある夜、夢を見た。
* * *
* * 俺は夢の中、ベッドの中で寝ていて、部屋の扉が開いた。誰かが部屋に入ってきた気配がした。ピリ辛姫だった。ピリ辛姫はベッドに近づいてきて、俺に何か話しかけてきた。何を言っているのか聞こえなかったが、彼女の顔が俺に近付いてきた。唇に何か柔らかい感触を感じた。それはピリ辛姫の口付けだった。彼女はそのままの姿勢で固まっていた。俺の心臓の鼓動が早くなっていた。しばらくして、彼女は俺から離れて部屋から出て行った。
* * *
* *