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episode9
ネコおじSide
なんとも不思議な子たちだ。
僕の教師歴も早数十年を過ぎたと言うのに。
この子たちは僕の全てを覆してくる。
……少しは実践に慣れさせようと、
学生では倒すことなど到底無理な数を召喚した。
それは、ものの数分で倒された。何たる力だ。
そして、あのおらふ王子の氷の魔法。
あそこまで高度な魔法を使うとは。
土壇場とは言え、三貴子の名に間違いはないのか。
三貴子と言えば、MENくんのあのTNTで、人形は地味に削れていた。
発明。これは、彼の火薬の属性と組み合わせれば相当な強さを発揮する。
おんりーくんは言うまでもなし。
魔法を使うことなくともあの速さと身軽さ。一撃の重さ。
見ただけでわかる。彼を敵に回してはいけない。強すぎる。
ドズルくんはみんなをまとめるのが上手。
自身も戦いながら指示を出すのはそう簡単なことではない。
体も頭もフル回転で使っているということだろう。
本当に16歳なんだろうか?
……でも。僕の目に一番映ったのは、ぼんじゅうるくん。
来た瞬間にあれだけ状況が一変した。
ポーション一つ、投げただけで。
投げたポーションはきっと、力のポーション。
それも、普通のものの数倍以上の濃度のものだ。
どこで醸造したというのか。
僕が授業前に持ち物確認(透視)した限り、そんなポーションはどこにもなかった。
濃度の高いポーションを作るには、それこそ時間と労力がいる。
それを、あの数分の間に。醸造してスプラッシュ化まで。
しかも、彼は魔法を一切使っていない。
魔力の流れは感じられなかった。
でも、一瞬、彼が降り立ったその一瞬。魔人形が、怯えた。
彼に近づきたくないと、僕に訴えかけてきた。
「君は一体、、、、?」
ぼんじゅうる。
両親も魔法使い。治癒師として現在世界を回っている。
両親の属性は|薬《ドラック》。本人は無。
家系的に魔力は低く、彼自身はその家計の中でも特に低いタイプである。
個人技は世にも珍しい2つ持ち。
超人的な卑怯技は、何よりも目を引く。
魔力が低いながらも薬学・医学の知識は幅広い。
入試のテスト点など、ドズルが二位、ぼんじゅうるが一位。
この二人の点は平均を遥かに上回る。
しかも、この薬学・医学には実技もくっついており、
それで皆躓くのだが、彼らにそんな気配等なし。
特にぼんじゅうるなど本物の医者なのかと思ってしまうほどの手つきであった。
「本当に………何者なんだい?」
そんな言葉を放っても、君に届くことはないはずなのに。
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おんりーSide
やっぱり不思議な人だ。
幼い頃から一緒にいるというのに、まだわからない。
自分が、本当のあなたを見ている気がしないんです。
「ぼんさん、学食行きますよ〜!!」
「まだ寝rムニャムニャ‥‥。」
「寝ないでくださいよ!!起きて〜!!!」
ほら、その顔だって、本当のあなたなのか。自分には理解できません。
ドズさんはわかっているんですか。ぼんさんの本当の姿。
どっちなんでしょう。自分が知る必要もないのかもしれませんが。
「おらふくん、MEN。先行こ。
あれじゃぼんさん起きるまで結構かかっちゃうよ。」
「せやね。ドズルさん!先行ってまーす!」
「うん、ごめんね!」
人を引き付けてやまないドズさんと、ぼんさん。
人を守ることに命をかける2人。
自分がその間に入るのは無粋なんですかね。
食堂へと目を向ける。
同じ学年?先輩?
わからないけど、自分たちの取っておいた席であろう場所が人で埋め尽くされている。
「あれが【三貴子】様か〜!」
「魔力えげつないんだってよ。」
「親が王に騎士にお抱え武器鍛冶だもんな〜。勝てねぇわ。」
「真ん中のおんりー様は絶滅したと思われてた光の属性らしいよ。」
あー、これ、面倒なやつだ。
ドズさんとぼんさんがいないからいつも以上に。
「どうする、おらふくん。MEN。」
「しゃーない。行くしかないやろ。」
「道どうやって開けようかなぁ。」
こういう場合、大体人が周りを囲って身動きが取れなくなる。
特に自分の周りは。
普段はぼんさんがポーションで空間をつくってくれて、
ドズさんがそれを保持してくれているのだが、今は3人きりときた。
「「「「お、おんりーくん!」」」」
「「「「おらふ王子!!!」」」」
「「「「おおはらMENくん!!」」」」
あ、まずった。
潰されないように頭を覆った、その時だった。
「|浮上魔法《バルーンレード》」
ふわりと体が浮いた。浮上魔法だ。
後ろを見れば、人だかりの外れに、二人の姿。
ぼんさんは眠いのか、ぽやーっと空中を見上げている。
「ドズルさぁん!!」
「はぁ、助かりました。」
「今のはピンチだったね〜。大丈夫?3人とも。」
魔法をかけてくれたのはドズさんだったようだ。
ホッとして彼らの方へ歩き出そうとする。
ちょっと待って、歩けない。なんだコレ。
「え?え?ど、ドズルさん、あ、歩けへん……。」
「え!?あ、ごめん。魔法ミスった……。」
と、彼が言ったかと思うと、すぐに落下が始まる。
結構高い。落ちたら怪我どころじゃ済まない。
受身の姿勢を取るがその必要はなかった。
パリン、パリン、パリン。
瓶の割れる音。自分たちの落ちるスピードはゆっくりになり、安全に地面へと降り立つ。
「もう!!ドズさん、また魔法ミスったでしょ?」
「ごめんなさい!浮遊魔法じゃなくて|操り魔法《マリオネット》かけちゃった……。」
操り魔法。集中力の続く限り、魔法をかけた人間を思い通りにできる魔法。
今は自分たちを持ち上げることに集中してたから、
いきなり言われて集中力が切れてしまったのだろう。
それでも、この魔法を十秒維持できるのは素晴らしいこと。
「もう………しょうがないな〜。」
「むっ……ぼんさんだってたまにポーションの配合間違えるじゃないですか!!
毒のポーション数倍の強さにしたときは被害まずかったでしょう!?」
また始まった。ドズぼんの大喧嘩。
まぁ、心配するほどのことじゃない。
「行きますよ、お二人共。」
「学食ってカニあったっけ?」
「え、わかんないです。」
ほら。もう仲直りしている。
……ぼんさんのカニ好きは筋金入りだな。
学食にカニ。あるのか?わからん。
購買にグミとか売ってないかな。歩きながらそう思った。