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2nd
今日、引っ越してきた人がいるらしい。
僕が住んでいるアパートの斜向かいの家に。
そこは、元々いふくんの家だった。
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3月のとある日の話だ。
「あ、いた!」
見つけたのが嬉しくて、僕はつい声を上げる。
「うわ〜見つかってもうたわ。ほんまに見つけるの上手やなぁ。」
いふくんは、木の上に乗ってる。
桜が咲いていて、よく見ないとわからない。
とにかく今、僕は見つけられた嬉しさを噛み締めている。
そこに、しょーちゃんが来た。
「もぉ、ふたりとも学校さぼっとったやろう…。僕は行ったんに…。」
「あれ、バレたぁ?」
そんな他愛もない話をする。
お陽様が沈む頃、
「そろそろ帰らな、」というしょーちゃんの声で、僕らはハッと気がつく。
気づいたらこんなに時間が経っていたなんて…。
「じゃあね、」
僕がそう言いかけると
「あ、あの、」
「どうしたの、いふくん。」
この時は、「明日も遊ぼう」とか、「次は負けないからな」とか、そういうことだと思ってた。
「俺、イギリスに行くんや。」