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1話「感謝ばかりじゃ終わらない」
「…みんなのところに戻るか」
そう言い、スバルは歩き始めた。
落ち葉を踏みしめ。
道中にいる虫など気にしない。
「……戻ってきた」
「……!ナツキさん!」
「スバル!」
「ここにいるって事は、暴食に打ち勝ったと言うことかしら」
「まぁそうだな。暴食だけじゃねぇが」
「暴食だけじゃない…?一体何のことを言っているのよ」
「あー。こっちの話だ。気にすんな」
スバルはそう言って話を強制的に終わらせて、次の話題に移る。
「エミリアとセッシーは?」
「…ついさっき目を覚ましたとこなのよ」
「…あ…そうか」
その瞬間、スバルの表情が一瞬だけ柔らかくなった。
スバルたちは、エミリアやセシルスが寝ているところへ向かう。
「…スバル?」
「…ボス!」
「あ…エミリアたん…セッシー…」
その声は、どこか安心したように震えていた。
エミリアはスバルを見つめ、そっと微笑む。
「また私……スバルに助けられたみたいね」
スバルは何かを言おうとして、言葉に詰まった。
その代わりに、困ったように笑う。
「……そんなことねぇよ。俺が勝手に動いただけだ」
「でも、来てくれた」
エミリアのその一言に、スバルは目を逸らした。
セシルスも力強く頷く。
「ボスは立派な人です!」
真っ直ぐなその言葉に、スバルは思わず小さく息を漏らす。
戦いの中で積み重なった恐怖も、痛みも、迷いも。 その瞬間だけは、少しだけ遠くへ離れていくようだった。
「…セッ、シー…エミ、リア…俺…がんば…、…っ…って…き、来た…」
その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気が止まった。
エミリアの瞳が、ゆっくりと見開かれる。
セシルスも、いつもの笑顔を消したまま、スバルを見つめていた。
スバルは笑おうとした。
けれど、うまく笑えなかった。 震える唇から、小さな息だけが漏れる。
「……ちゃんと、戻って、きた……」
その声は、今にも消えてしまいそうなほど弱かった。
「……スバルは頑張ってきたね」
その言葉だけで、胸の奥に張り詰めていたものが、少しずつほどけていく。
エミリアはもう一度、今度はもっと柔らかい声で続けた。
「スバルは、良い子よ」
その瞬間、スバルの瞳から、静かに涙が零れ落ちた。
「__あ…ごめ……っ…こんな、はずじゃ……っ」
エミリアがスバルを抱きしめる。
「__え」
エミリアは言葉を続ける。
「強がらなくて…いいんだよ。ありのままのスバルでいて」
「あ…あぁ…ぁ…………っ」
スバルの喉から、壊れたような声が漏れる。
それ以上、言葉は続かなかった。
エミリアは何も言わない。
ただ、逃がさないように、壊れてしまわないように、そっと抱きしめる腕に力を込めた。
そうして、どれくらいの時間が過ぎただろう。
1分。5分。10分。
それ以上かもしれない。
だがスバルにとっては、時間の経過など些細なことであった。
「…うん。もう…大丈夫」
「そう?本当に?」
「大丈夫だって。これ以上やると俺が惨めになる」
冗談めかしてスバルは言ったが手遅れである。
「もう十分惨めなのよ」
「……は?」
スバルが呆れたように顔を上げる。
ベアトリスは腕を組み、ふんと鼻を鳴らした。
「今さら格好つけても遅いかしら。泣き顔も、弱音も、全部見られてるのよ」
「……ベア子」
「だから、変に取り繕うなという話なのよ」
その言葉に、スバルは思わず小さく吹き出した。
「……取り…ぷ…繕って……ふふ…ねぇ…んふ……し……ぷ…」
スバルのその態度に、ベアトリスは少し不満を顔に表す。
「本当にお前はどうしようもない奴かしら」
「…どうしようないってなんだ。ベア子」
「意味がわからないなら聞くんじゃないのよ」
ベアトリスはそう軽く返したが、
これでスバルが満足できると思っていたのだろうか。
無理である。
「……スゥゥゥゥゥ…黙れ!お前はこうやってこちょがされるのが似合ってるぞ!」
スバルがベアトリスの脇をこちょがす。
「あひゃ!…ちょ…スバ…ひゃ!?…やめ……る…のよ…」
「やめるわけねぇだろ!」
「…これ以上は…ベティーの…命に関わること…かしらぁ…」
2話次回予告
「さて、第3章突入ということで!ゲストのベア子さん!どう思いますか?」
「こういう時はちゃんとベアトリスってフルネームで呼んだほうが礼儀正しいって知らないのかしら?」
「そんなルール知りません()」
「お前はどこまで行っても不快な奴なのよ…」
「次回2話「能力の確認」お楽しみに!」
「楽しみにしてればいいかしら」