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海の静けさが僕らの涙を隠す
⚠入水自殺ありです…
--- 【海の静けさが僕らの涙を隠す】 ---
--- HARUTO×YUDUKI ---
朝――
結月が先に目を覚ましていた。
カーテンの隙間から差す光が、彼の髪を透かし、そっと揺れる。
結月「はると、おはよ。」
晴翔「ん、おはよ。……珍しいね、早起き。」
いつもより少しだけ早い朝。
その微笑みは、どこか遠くの海を見つめているようだった。
結月「今日はさ、海行く日でしょ? だから、早起きしてみたの。」
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車の窓の外。
揺れる木々、光を反射する水面。
結月は静かにそれを見つめる。
結月「晴翔、見て、もう少しで海だよ。」
晴翔「……うん、楽しみだね。」
その声が、少しだけ震えていたけれど、俺は、気づかないふりをした。
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海に着くと潮風が頬を撫でる。
冷たさは、どこか懐かしい温もりのようにも感じた。
結月「……きれいだね。」
晴翔「ああ。」
彼の笑顔は、ほんの一瞬、時を止めた。
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夕暮れ――
波打ち際に立つ結月の背中に、沈む光が静かに寄り添う。
結月「ねぇ、晴翔。どうして僕が晴翔を好きか、分かる?」
晴翔「……さあ?」
結月「"海みたいに優しいから"」
風が、二人の間をすり抜ける。
結月「海ってさ、悲しいことも全部包んでくれるでしょ?」
晴翔「……うん。」
肩が、かすかに震えた。
彼の背中が、もう現実のものじゃないように見えた。
結月「ねぇ、晴翔―――」
--- 「一緒に、死んで?」 ---
波の音だけが応え、言葉は海に溶けていった。
晴翔「……理由を、教えてよ。」
結月「……気づいてるでしょ。」
光を失った瞳が、胸の奥をぎゅっと掴む。
結月「……ねぇ、晴翔、手、握って?」
伸ばされた手、それは"別れ"の形をしていた。
晴翔「――嫌だ。」
結月「……そっか。ごめんね、忘れて?」
沈む夕日が、二人の影を長く引き裂いた。
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季節が二度、風を変えた。
結月は笑わなくなった。
俺はそれを、"海のせいにした"。
ある日、結月が言った。
結月「……晴翔。海、行こ。」
晴翔「……分かった。」
言葉より先に、胸の奥が痛んだ。
あの日の海が、また二人を呼んでいた。
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さらさらとした砂が、足に絡みつく。
潮の香りが、静かに胸を満たす。
足取りは重く、波のささやきが耳に寄り添う。
結月「晴翔…覚えてる? 前に来たときのこと。」
晴翔「……うん。」
結月「*"ねぇ、晴翔―――一緒に、死んで?"*」
静けさが返すのは。ただ波の音だけ。
晴翔は黙って、海の光を見つめる。
結月「ねぇ、晴翔ッ!!」
声が風に溶け、砂に吸い込まれていく。
珍しく荒れた声を出す彼の瞳には、痛みが滲んでいた。
結月「…もう、**限界**なんだよ……」
晴翔「………分かった。」
結月「…ありがとう。」
――また、拒めなかった。
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結月「ふふっ、晴翔、僕のわがままに付き合ってくれてありがとう。」
晴翔「…いいんだよ…」
海がこんなに広く、そして冷たく感じたのは初めてだった。
水面に映る夕焼けが、胸の奥を静かに突き刺す。
結月「晴翔…ばいばい。」
固く握った手は、最後まで離れなかった。
波の音が、二人の時間を包み込み、溶かしていく。
―――これで、良かったのだろうか。
―――この海の向こうに、他の道は無かったのだろうか。
潮風が涙をさらい、砂に刻まれる二つの足跡。
消えかけた光に、まだ、心は揺れている。
晴翔「っ…」
晴翔の胸の奥で、言葉にならない震えが波のように揺れた。
涙は静かに頬を伝い、海に溶けていく。
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――*BADEND*――
華恋_karen