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わたしと私。 たたかいいちにちめ
ある日、私が現れた。
これはわたしと私の戦いの記録である。
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私はいかにも”ダメ人間”といったような行動をする。
大人たちがそれを見たとしたら、確実に眉をひそめるだろう。
そんな私を見るとため息をつきたくなる。
でも、私は意地の悪そうな笑みを浮かべてこう言うのだ。
「私は、わたしの本当の姿なんだ」って。
本当の姿とかわけわかんない。それでも、私のせいでわたしは時々賢くない生き方をするようになってしまった。
そうやっていい子をやめたときは、私は嬉しそうな顔でこちらを眺める。その姿はとっても可愛いなと思うが、家に帰ってきて床に転がったまま動かない私を見ると、やっぱりダメ人間だなって思う。
不揃いで感情のままに動く、本当に変な子。それが、わたしの本当の姿(認めていない)もとい、私。
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放課後、配布物をひたすらプリントアウトして枚数を確認して、を繰り返していると、どうやって来たのかはわからないが私がやってきた。
「……ねえ、煩わしいんだけど」
「わたしは煩わしいけど、私は煩わしくない。よって、私がここにいる権利はある」
「ほんとわけわかんない……」
こんなやつがわたしの本当の姿とか言われると頭を抱えたくなる。
「なんでこんなの引き受けちゃったの?こんなのわたしの仕事じゃなくて教師の仕事でしょ」
「小さな積み重ねは大事なんだよ」
「まだいい子ごっこやってるの?飽きない?」
「……飽きないわ」
「そう」
私はつまらなそうな顔で勝手にパイプ椅子に座った。わたし以外誰にも見られないからって、やりたい放題だ。
「わたしがやる意味なんてないじゃない。これは本当に教師の仕事で、それを好きなようにわたしに押し付けるのはおかしいでしょ。それを引き受けるわたしもおかしい」
わたしはなにも答えない。でも、私の言うとおりだなと頭の片っ端で考える。
でも、
「私にどれだけいい子ごっこって言われても、わたしはいい子ごっこをやめる気はないよ」
目を伏せて呟いた。私は「ふーん」と言いつつ、納得いかなそうに宙を眺める。
「あっひよりちゃん!まだ先生の手伝い?大変だね〜。よかったら一緒に帰らない?」
「……あ、めんどくさい奴が来た」
とっさに私の口を塞ぎたくなる。そして、数秒後私の姿も声もあちらに見えていないし聞こえていないことを思い出して、にっこりと笑みを作る。
なにも言っていないのにひとりでまくし立てた”友達”はこっちの心情なんて知らないというふうに立っていた。
「うん、一緒に帰ろう!まだ少しだけ時間がかかりそうだから、ちょっとだけ待っててくれる?」
「おっけー!教室で待ってるね!」
私は気に入らないのか、”友達”を睨みつけた。
「私って人付き合い苦手すぎない?」
「あんなやつにわたしが振り回されているのが不快でしょうがないのよ」
「……振り回されてなんかいないよ。あの子と話すのは楽しいし」
「わたしこそ時々ブラックになるし、いい子モードが急に入るし、不揃いでわけわかんない」
私はパイプ椅子をぎしぎしと揺らす。先生に聞こえていたらどうしようと思ったが、なんとなくどうでもいいような気がしてきた。
「ねえ、」
私は水晶玉のような瞳をわたしに向ける。
「わたしはこんな生活のままでいいの?」
わたしは考えた。私に比べてちっとも綺麗じゃない瞳を私のほうに巡らせて。そして、少し考えてから、あの笑みを作る。
「……うん」
「……随分迷うのね」
いちにちめのたたかいけっか:ひきわけ
こんにちはときいろ兼みはなだです。
このお話書くのめっちゃ楽しい。
次回はーいつだろうなー5月14日までには投稿します!