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愛は、時代を越えて。 5話
どうも、タイムスリップ3日目のJK二藤かぐやです。今日は8月30日。あと少しで、東京が壊滅状態になる。防ぐのが無理なら、せめてどこかに逃げないとな.....
「かぐやさん、元気ないですね。どうかしましたか?お茶入れたので、よければ飲んでください。」
憂鬱な気持ちが外に出ていたのか、和音が冷たい麦茶を入れてくれた。緑茶苦手だから、こういう配慮は嬉しい。
「何か、悩みでもあるんですか?やはり……地震が怖いのですか?」
「怖いわけじゃないんだけど……地震来たら、どうすればいいのかなって。避難訓練は学校でやってるけど、この時代で生かせるのかどうか......」
「その場その場に応じて行動するのも大事ですよ。落ち着いていれば、道は開けますから。」
「うん。ありがとう。」
和音、やっぱ優しいな。一応私と4歳差だけど、もっと年の差あるんじゃないかな。だって、大人すぎるもん。中身が。
「僕、お話を書くのが好きなんです。何か1つ、朗読しましょうか?」
「え、いいの?」
この爽やかな声で物語を聞けるとは。人生得してる気がする。
「あまり、人に見せる機会もないので。」
「お話の題名って、どんなの?」
「『造花の嘘』です。」
わお、純文学っぽい。
「では、聞いていてくださいね。」
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『綺麗だね』
彼女の純粋な言葉が、青年には重かった。花の、枯れてゆく悲しさが、彼は嫌いだった。だから、彼女には偽物の花、造花を贈った。偽物の枯れない美しさと、散りゆく儚い美しさ。去年の彼女の誕生日に、贈り物を買う金の無かった青年は、家の近くに咲いていた白詰草などの花で花束を作って渡した。本物の花は、匂いがする。春には春の匂い、夏には夏の匂い。造花はどうだろう。季節の匂いなんかしない。ただ無機質な、作り物の匂いだ。偽物の美しさで、大切な人を笑顔にしている自分。別に、作り物で良いじゃないか。本物はすぐ枯れる。管理も大変。面倒臭いことをするのならば、ただ枯れない美しさを見ていれば良い。自分はそう思っていたのに。彼女はこちらをじっと見て、呟いた。
「嘘つき」
ねえ、さっきの言葉も作り物だったの?さっき見せてくれた笑顔は……全て、空のはりぼてだったのか?
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「おお……へえ……なんか……哲学っぽいね。」
「そう言われると……何だか照れますね。まだ途中経過なので、完成したらまた読んでください。」
今、私が感じているこの幸福は、きっと、絶対、作り物じゃないと信じたい。
え、なんか文学感すごくないですか?