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5 ピクニック
「うわああああ」
私はなぜだか無性に腹立たしかった。
「何してるの。ルーフェリア」
「つっかれたぁ!!」
昨日見たことは夢じゃなかったようだ。
夜は全く眠れず、体がとてもだるい。
「疲れた……? お母さんのスープでも飲んだら?」
ああ、なんて純粋。
レ・ミゼラブルの感覚だわ。
「わかったわ。アーゼン、呼んできてくれる?」
「僕は召使いじゃないんだぞ」
アーゼンはぷくっと頬を膨らませながらも、結局は素直にうなずいた。
「わかったよ、ルー。呼んでくるね」
ぱたぱたと小さな羽を揺らしながら廊下を駆けていくアーゼン。その背中を見送った私は、ふと窓の外に目を向けた。
空は曇っていて、遠くで雷が鳴っていた。
「……嵐が来るかもしれないわね」
そう呟いた瞬間、部屋の扉が開いた。
「ルーフェリア、スープを持ってきましたわ」
母様が、湯気の立つ器を手に微笑んでいた。
「ありがとう、母様」
私はスープを飲みだがら、ふぅとため息をついた。
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私がスープを飲み終わっていつものようにアーゼン「で」遊んでいると、フェンリルの子供のリュカ君がやってきた。
「あ……リュカ……」
アーゼンが気まずそうにしているのを尻目に、私は(サイズ小さめの)リュカ君の頭を撫でながら「こんにちは、リュカ君」と言った。
「こんにちは」
リュカ君はそれだけ言うと、私の手の中でニコニコと笑っている。
無言ニコニコ怖いんだけど!?
うちのパパさんみたい。
「ねー、ルーフェリアー。早くあっちで遊ぼうよ!」
さっきまであんなにメソメソしていたくせに、リュカ君が来たとたんその態度とは。
「やーだー。私はしばらくここでリュカ君といるわ。リュカ君、一緒にご飯食べない?」
「うん、いいよ」
アーゼンはむすっとした顔で、私たちの様子を見ていた。
「……リュカばっかりずるい」
その言葉に私はくすっと笑う。
「なにそれ、嫉妬? かわいいじゃない」
「嫉妬じゃないもん!」
アーゼンはぷいっと顔をそらして、窓の方を向いた。
その小さな背中が、なんだかいつもより小さく見える。
「ふーん、じゃあアーゼンは一緒にご飯食べないのね」
「……食べるけどっ!」
勢いよく振り返ってそう言うアーゼンに、私は思わず吹き出してしまった。
リュカ君もくすくすと笑っている。
「じゃあ決まりね。母様にお願いして、三人分持ってきてもらいましょう」
「うん!」
「……」
アーゼンは何も言わなかったが、少し頬が赤くなっている。
母様が三人分の食事を持ってきてくれた頃には、外の雷鳴が少しずつ近づいていた。
「嵐が本格的になりそうね……」
私は窓の外を見ながら呟いた。母様は静かに微笑みながら、テーブルに器を並べていく。
「温かいうちに召し上がってください。リュカ君も、遠慮しないで」
リュカ君はぺこりと頭を下げて、スプーンを手に取った。アーゼンはまだ少しむすっとしていたが、スープの香りに負けたのか、そっと席に着いた。
「「「いただきます」」」
三人で囲むピクニックは最高だった。
アーゼンは少しむすっとしながらも、おいしそうにほおばっている。
「おいしい?」
私がアーゼンに聞くと、嬉しそうに「うん!」と答える姿が愛おしい。
私がニコニコしながらアーゼンとリュカ君を見ていると、後ろから グルルルル…… という唸り声が聞こえた。
「ルー、後ろ!」
アーゼンは驚いたような怖がったような……おびえた顔で叫ぶ。
さっきまでニコニコしていたリュカ君もぎゅっとアーゼンに抱きついていた。
(絶対大丈夫だから、ちゃんと、しっかりして)
私が心の中で自分に言い聞かせると、くるっと後ろを向く。
「あ、ルーフェリアじゃない。びっくりしたー。魔王城に人間が入り込んだかと思ったよ!」
「え、マリシェ……。驚かせないでよ」
「人間だと思ったんだってば」
嵐の予兆だと思っていたのはこのマリシェのオオカミの視線だったらしい。
マリシェはウィンディーネ夫人、マリニィの子供だ。
「マリシェだったのか。いい加減その物騒なオオカミをしまったら?」
「それはリュカ君にも失礼だと思うけど?」
アーゼンの言葉に正論で返すマリシェ。
「ううっ。なんでそんなこと言うのさ」
「本当のことだよー」
マリシェは左手をオオカミに乗せながらあっかんべをする。
「ルーフェリア、私も一緒していい?」
マリシェはオオカミを後ろに座らせ、自分はブルーシートの上に座る。
「え、別にいいんだけど、三人分しかご飯は用意していないわ」
「別にいいよー。私はみんなを見てるだけで楽しいし」
「それは馬鹿にしてるだけでしょ」
リュカ君が突っ込むと、彼女はふふふッと笑った。
「別に? まあ、そういうとこかな」
友達に、「なんかめおの作品ってところどころ馬鹿げてるよね」って言われました。
悲しいです、はい。
いや、別にそれを狙っているんですけどね???
言い方がひどっ!! ……と思った人はファンレターへレッツゴー!!(?)
「追伸」
付録なくなってごめんなさい。
あと終わり方が決まらない。
あと、題名変えてごめんなさい。