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完璧な優等生と春へ進む桜
卒業シーズンということで
リクエストにも多数あった「卒業」をテーマにした小説を書きました!
まさかのラストに、読者の皆さんはきっと感動するはず(?)
自信なさげですいません(?)
2月の終わり。
卒業式の練習がそろそろ始まる季節だ。
3学期にもなると一緒に行動するグループが完全に決まるようなものだ。
でも、私が誰かと一緒にいることはなかった。
いわゆる、一人ぼっちというやつだ。
他のクラスには友達が1人だけいるけど、その子は最近他の子たちといるのを見る。
なんとなく暇だな、と思って窓の外を見ると、桜の木を見つけた。
桜の花も卒業式までの期間と同じで|蕾《つぼみ》をつけて時間が経つのを待つ。
そして、校庭には遊ぶ生徒の中でもひときわ目立つ男子がいた。
彼の名は|早波 優《はやなみ ゆう》。
勉強も運動も出来て、さらにはある委員会の委員長もやっている。
そんな優等生の早波さんは人柄も良くて、先生からも生徒からも信頼を得ている。
友達もいないし、成績も普通より悪くないけど早波さんには勝てない
私…|梓野 桜《あずさの さくら》とは大違い。
私も、もちろん早波さんのことは信頼してるし、尊敬している。
でも、そんな完璧に近いような早波さんにだって神様ではないんだし、
何かを抱えているのかもしれない。
私はそんな早波さんの力になれたらいいな、と思った。
友達のいない私にそんなことが現実で言えるわけがないんだけどさ…
卒業式の練習期間がスタートした。
セリフの声は大きく出せないし、歌い方も下手だったと思う。
みんなよりずば抜けた長所が何も無い私。
劣等感があるのかもしれない。
3月が始まってすぐの日の放課後。
私は宿題に使うノートを持って帰り忘れていることに気づいて、
教室へと急いで戻った。
教室には先生が居なかった。
きっと職員室にでもいるのだろう。
そして…早波さんが窓の外を眺めていた。
声をかけてみようと一度思ったが、あることに気が付いてその声は出ずに消えた。
早波さんが、静かに泣いていた。
普段泣かなくて弱みを誰にも見せない早波さんが、泣いているなんて。
何があったのか、聞きたい。でも、どう声をかければいいのか、分からない。
「あ、えっとその…早波、さん?」
どうするのが正解だったのか分からなくてとりあえず小さく声をかけた。
早波さんは今声をかけるまで私の存在に気づいてなかったみたいで、
目を見開いて驚いたような顔をした。
うわ、私って友達いない上に影も薄かったんだ…
「梓野さん…僕の事なんて、放っておいて。早く帰って。
そして今のことは見なかったことにして…」
こんな時でも口調がきつくならないってどれだけ早波さんは優しいんだろうか。
早波さんが言うことだからって、放ったままにするなんてこと、できない。
「何で、泣いているの?」
早波さんはため息を吐いた後こう言った。
「誰にも言わないって絶対に約束できる?」
「うん。」
勢いですぐに答える。
「本当に?」
「うん。」
「…それなら、梓野さんのことを信じて話すよ。」
「でも、ここにいたら先生が教室に戻ってきたときにどうなるか分からないよ?」
「あ、そっか…なら、学校の近くの公園でもいい?」
「もちろん。」
公園のブランコに座ると、早波さんが話し始めた。
「僕、本当はこんな自分になりたくなかったんだ。」
「え…?どういうこと…?」
「急に言われると驚かれるでしょ?」
「うん…」
「でも、本当なんだ。
勉強も運動も人並みにバランスよくできるからってみんな僕を優等生扱いする。
人に嫌われないように笑顔で話すから、優しくて人当たりのいい人扱いされる。
正直、尊敬とか立場の違いとか無くていいんだ。」
「それは、恵まれた後だからそう思ってしまうんじゃないかな。あっ…ごめん…」
いうつもりは無かったのに。口が滑った…
「その通りだよ。僕はもとから運動神経は悪くはなかった。
で、勉強を頑張れば成績が良くなる…ただ単にそう思って勉強も頑張った。
そしたらこの状態。バカみたいだよね。」
「じゃあ、人柄は?」
「…小さい頃、僕の態度のせいで絶縁してしまった友達がいたんだ。
だから、もうそんなことが起こらないように人との関わり方や態度には
気をつけてるつもりだよ。」
その話をされて、ふと私は気が付いた。
「あ、そうだ!ねえ、早波さんって下の名前が優しいと書いて”優”だったよね。
名前の由来って何?言える範囲でいいよ」
「確か…優しさを大切にする子になって欲しい…みたいな感じだったっけな?」
「そうかぁ…」
「どうかした?何かおかしかった?」
「おかしくはないよ。ただ、私その名前の由来の2つ目が分かった気がして。
これは勝手に私が考えたんだけど、優しいって|イ《にんべん》と|憂《うれ》いって
いう言葉に分けられるでしょ?
つまり早波さんは人の憂いが分かる人間になって欲しかったんじゃない…?」
「憂いってどういうこと?」
「そうだなぁ…辛い、とか苦しい、とか?」
「じゃあ人の辛さや苦しみが分かる人間になって欲しいってこと?
そんなことしたら、一気に嫌われちゃうんじゃ…」
「早波さんが悩んでいたのは優等生扱いされることについてでしょ?
性格で嫌われるなんて、嫌う人はよっぽどその人を羨んでるって事じゃないかな。」
「でも、尊敬されるのはちょっとな…」
「羨ましいと尊敬は違うよ。
羨むことっていうのは自分にはないものや自分よりも優れている人を見て、
自分もそうでありたいと思うことだよ。」
「そっか。…泣いている理由を話しただけなのに
相談に乗ってもらっちゃってごめん。
ここからはどうするべきか自分で考えてみるよ。ありがとう。」
「困ったら、言ってね。」
「もちろんまた相談させてもらうね。
梓野さん、今まで関わることは少なかったけどこんなに優しかったんだね。」
「優しいだなんて、そんな…
私はいつも何か抱えてそうだと思っていた早波さんの力になれて嬉しかったの。」
「とにかく、ありがとう。
じゃあ、僕はもうそろそろ帰らなきゃ。さよなら、梓野さん。」
「早波さん、さようなら。」
まさかこんなところで早波さんの力になれるだなんて。
心が温まって、なぜか泣いてしまいそうになってしまった。
帰ってから。
スマホでメッセージアプリを開いてみると、
話しかけられて断れずにチャットを繋いだクラスの中でも明るい子から
こんなメッセージが届いていた。
『梓野さん、これ…悲しい気持ちになっちゃうかもなんだけどさ。』
『梓野さんって確か浦野ちゃんと仲良かったよね?』
浦野ちゃんとは、他のクラスにいる私の中でのたった一人の友達だ。
フルネームは|浦野留依《うらの るい》。
『この前に浦野ちゃんと喋ってたら、梓野さんのことが嫌いって話を聞いて…』
『2人の仲にヒビを入れようとして言ってるわけじゃないの。
でも、なんか言わないわけにもいかないし…』
『ごめんね!こんな気まずい話をしちゃって!』
『くれぐれも、本人には私が話したってこと内緒でよろしく!』
そこでメッセージは終わった。
「えっ…?」
まさかあんなに仲がいいと思っていた留依まで私のことが嫌いだったの?
まさか、あんなに仲が良いかのように見せてたのは演技だったの?
今まで嫌な思いをしながら私と一緒にいたってこと?
教えてくれてありがとう、とだけ返信をしてメッセージアプリを閉じた。
スマホを持つ私の手は、震えていた。
次の日。
学校に登校しても生活はいつもとほとんど同じだった。
でも、ひとつだけ変わったことがある。
早波さんが私に話しかけてくれるようになったことだ。
話し相手がいなくても別に困ることはなかったけれど、会話してくれる人がいるって
なんだか嬉しい気持ちになる。
放課後になってみんなが帰っていった後、私と早波さんだけが教室に残っていた。
「あれ、梓野さん帰らないの?」
「うん。委員会の仕事、明日で締め切りだから今日終わらせちゃおうって思って。」
「前日に終わらせるなんて偉いね。」
「ありがとう。」
少し沈黙があって、その後に私が話題を出した。
昨日のメッセージアプリの件だ。
「…質問なんだけど、早波さんなら今まで信用してきた誰かが自分のいない時に
悪口を言われていたっていう話が耳にはいったらどう思う?」
「急にどうしたの?何か相談…的な?」
「気にしないで。で、どう思う?」
「僕だったらまず落ち込むかな。
その後、その話が本当なのか本人に聞きに行ってみる。
で、本当だと言われたら、その人とは言ったん距離を置いてみるかな…?」
「そっか…」
「わざわざそういう話をするってことは、梓野さんにそういうことがあったの?」
「そうなんだ。まだどうすればいいかまだ行動には移していないけど
正直ショックだったな。」
「誰でもそれは悲しくなるよ。”どんな絆でも壊れるときは一瞬”って
まさに今の梓野さんみたい。あ、ごめん。フォローになってなかった。」
「”どんな絆でも壊れるときは一瞬”、か…」
「どうしよう。なんかその話が本当だったら私、
もう人間を信じられなくなるかもしれない…」
「人間不信、か…僕も一回そうなりかけたことがあるよ。
ほら、昨日話したでしょ?僕が人当たりを良くしようとする理由。
ちなみに、梓野さんから見てその子をどう思っているの?」
あれ、私って留依の事、どう思ってたんだっけ…?
「かわいくて、私の中で唯一相談できる相手で…
あ、今は早波さんも相談できる相手になってるのか!
ファッションセンスの良さは憧れるし、
いろんな人と話せるコミュニケーション力があることはすごいって思ってるかな。」
答えるまでに時間がかかってしまった。
「じゃあ梓野さんとその子がもし絶縁しようってなったら梓野さんはどうなるの?」
「急に想像したくもないこと聞かないでよ、縁起でもないんだからさ。」
「ごめんごめん。でもこれは”もしも”の話だよ。」
「もしも、ねぇ…立ち直れないわけではないけど、さっきも言った通り
人間不信になっちゃいそう。」
「梓野さんは本当にその子のこと、絶対に必要だと思ってる?」
「えっ…?」
「…その反応は、絶対必要とは言い切れないってことでしょ?
知らない間に梓野さんは”浦野留依”という人間に依存していたんじゃない?」
「私、知らない間に依存してた…そういうことだったんだね…」
その時、私は何か違和感を感じた。
「え、早波さんなんで”その子”が留依だって分かったの⁉」
「だって、梓野さんが浦野さんと仲良くしてるってことは前から知ってたし…
それ以外に梓野さんが他の人と仲良くしてるところは見たことなかったから。」
他の人と仲良くしてるところは見たことがなかったって
半分悲しい現実を突きつけてきてるんだよなぁ…
「…私また明日、留依と話してみるよ。
話が本当だったのか、自分で確かめてみるから!」
「うん。じゃあ僕はそれを応援するよ。」
「…また今度は早波さんの話の続きも聞かせてね。」
「分かったよ。」
そこからいきなり数秒の沈黙が流れた。
早波さんがまた話し始めた。
「あ、そうだ…僕に普通の休み時間も話しかけてきて、いいよ?」
「私が早波さんと休み時間に急に話すようになったら
みんなに不審に思われちゃう。
それに早波さんには私以外にも話せる人がいっぱいいるでしょ?」
「あんなの、実際友達だと思ってない人も多いよ。
これは僕が勝手に思ってるだけかもだけど、
梓野さんは僕にとって友達だと思ってるんだ。」
友達…そう言って貰えて嬉しい。
「友達、か。
なんだか留依と一緒にいたのって本当に友達だと言えるのか分からなくなってきた。
私も早波さんの事、友達だと思ってるよ。」
そう言うと、早波さんは笑顔になった。
「ありがとう。じゃあ僕はそろそろ帰るよ。じゃあね。」
「ばいばい。」
あぁ、何だか心がすっきりした。
次の日。
昨日は早波さんに”ちゃんと留依と話してくる”って言っちゃったけれど。
急に緊張してきた…!
学校に着いて、いつものように自分の席で朝の支度をする。
すると急に手が震えてきた。
なんでだろう、気分が悪い…
すると体が崩れるように地面にへたり込んでしまって…
目が覚めると視界は全て白い天井だった。
「あれ、ここはどこ…?」
私が起き上がってみると、保健室の先生が私のそばに駆けよって来た。
「梓野さん、体調は大丈夫?」
どうやらここは保健室だったみたい。
「はい…で、私なんでここにいるんですか?」
「急に倒れたから分かってなかったのね…
梓野さん、朝の用意をしているときに急に倒れて、
|渡井《わたい》先生がそれを見て私の所まで連れてきてくれたの。
原因は疲れだと思うわ。熱は測ったけれどそれは普通だったわ。」
渡井先生は私のクラスの担任の先生の苗字。
「渡井先生が一人でここに運んできてくれたんですか…⁉」
女の先生だし、小柄だからそんなことが出来るわけない。
「えっと…早波くんも一緒に来てくれたわ。
彼、優しくて勉強も運動も出来て本当にすごいと思うわ。」
早波さんが⁉
「で、話は戻るけれど体調は大丈夫かしら?
大丈夫ならこのまま授業に戻ってもらうし、体調が悪かったら帰るのもあり。」
「大丈夫です。でも、あと少しここで休ませてください。」
「分かったわ。もうすぐで休み時間になるし、
休み時間が終わるころには戻れるんじゃないかしら?」
「そうします。」
休み時間のチャイムが鳴った。
1分も経たないうちに、早波さんと…留依がやってきた。
「桜、大丈夫…⁉」
「留依、わざわざ来てくれたの⁉そして、早波さんも…!」
「急に倒れたからびっくりしたよ。
でも大丈夫だと分かって安心したよ。じゃあ早いけど僕はこれで。
教室に戻ってくるの、待ってるね。」
「うん。」
早波さんが部屋を出ていく時、口パクで”がんばれ”って言ってた。
ここで…あの話、しようかな。
「桜、いつ優くんと仲良くなったの?」
「仲いいかは分かんない。でも人として優しいから心配してくれたんじゃないかな?」
「桜の様子を見て安心した。私もクラスに戻ろうかな…」
まずい、このままだと留依がクラスに帰っちゃう。
「ちょっと待って。私、今留依に聞きたいことがあるの。」
「ん?どうしたの?」
「留依って、私のこと…友達だと思ってなかったの…?」
「それ、どこで聞いた話?」
「クラスメイトの子からメッセージアプリで聞いたんだけど…」
「はぁ…仕方ないな。」
「え、まさか留依、私のことが嫌いだったっていうのは本当なの…?」
「本当だよ。私は桜のこと、大嫌いだ。」
突然すぎて、頭が真っ白になった。
「え、今なんて言ったの…」
「だから、私は桜のことが本当は嫌いだって。」
「なんで…いつから嫌いだったの…?」
「なんでそういう細かいことまで聞いてくるわけ?
私は桜のことが大嫌いだってしか言わないから。
ねぇ桜、私たち、絶縁しちゃおう?」
絶縁まではしたくない。
嫌いだと分かっても、絶縁はしたくない。
「ごめん、絶縁は出来ないよ。」
「…何で?」
「私には急に今まで仲良しだった子との思い出を断ち切ることなんて出来ない。
だって、私には留依しかちゃんと話せる子がいなかったから。
正直、私もこれから先でさらに仲良くなれるかって言われたら分からないよ。」
「でも、私は桜が嫌い…」
「なら、関係を最初からやり直しちゃ、ダメかな?全部絆をやり直しちゃえば、
留依は私が少し嫌いだと思わなくなるんじゃないかな。」
さらに少し間をおいて、私はこう言った。
「私は、もう一回やり直して、留依と仲良くしたいよ。」
私がそう言ったあと、留依は少し考えてからため息を吐いた。
「仕方ないな。そこまで言うなら、関係をやり直すこと、考えてみるよ。」
「…本当に⁉」
正直こうなるとは思っていなかった。しつこいからって拒絶されると思ってた。
「ほんっと必死だなぁ、桜は。
じゃあ、私がここを出て行ったら全部関係はやり直しにするから。
流石に今日話しかけられるのは気まずいから、話すなら明日からね。」
「うん。分かった。じゃあさよなら、留依。」
「さよなら。」
ここで一度私と留依の関係はすっと消えた。
今までの事も私のことが嫌いだって言ったことも忘れない。
けれど、気持ちを新たに変えて私は名前にもある桜の咲く春を、
卒業式を目指して進んでいくしかないんだね。
放課後。
今日は先生がすぐに教室の鍵を閉めてしまったから、
早波さんとは一度帰ってから公園に行って話すことにした。
公園に着くと、早波さんの方が先に来ていた。
「早波さん、着くの早かったね。」
「公園から家までの距離が近いからね。で、結局…浦野さんとは話せた?」
「話せたよ。」
「話は本当だったの?それとも嘘?」
「…私のことが嫌いっていうのは本当だったの。」
「それは残念だったね…」
「そんなことはないよ。
だって、留依とは明日から関係を全部やり直して、
今までのことはなかったことにしようっていうことになったから!」
悲しそうだった早波さんの顔が、自分のことかのような笑顔へと変わった。
「本当に⁉」
「うん。」
「それって梓野さんからその話を提案したの?」
「関係をやり直す話?それは私が提案したよ。」
「そっか…それだけ浦野さんに梓野さんの気持ちが伝わったってことだよ。
全部を諦めて投げ出さなかったところ、すごいと思った。」
「そうかな、ありがとう。
私の話はこれで終わりでいいから!早波さんがどうするのか教えてよ!」
「あーそうだったね。僕の番か…」
「嫌なら言わなくてもいいよ。」
「いいや、言うよ。
僕、今まで通り勉強も運動も頑張るし、梓野さんが言った通り
人に優しく、人の憂いが分かる人間になろうと思うよ。」
「人の憂いが分かる人間って私が言ったことだけれど、
そんなにいろんなことを両立させようと思うと辛くない?」
「辛いかもしれないしウザがられるかもしれない。
でも、僕は頑張ってみたいんだ。」
「そっか。それなら私は早波さんのことを応援するね。」
「そして、本当の友達というものがこれから知りたい。」
「本当の、友達…?」
「梓野さんの話を聞いて、本当に仲が良い人って、
友達って何なんだろうって考えてみたんだ。
そして僕なりに考えてみて、友達っていうのは
信頼、安心して相談をできる人のことを言うんだって思ったんだ。」
それを聞いて一つ気になったことがあった。
「気が合うっていうのは違うの?」
「それも一つの考え方かもしれない。
でもこの世には気が合うだけの人なんて何千人、何万人いたっておかしくない。
だから僕は気が合うだけっていうのは友達とは言えないと思うんだ。」
それを聞いて心の中で納得した自分がいた。
「そしてね、僕は僕の理論なら、梓野さんと本当の友達になれる気がする。」
「私なんかが早波さんにとっての本当の友達でいいの?」
「梓野さんだからだよ。って…変な意味じゃないからね⁉」
「…私も、早波さんと本当の友達になりたかったんだ。」
「良かった、嫌だとか言われたらどうしようかと思ったよ。」
「言うわけがないじゃん!」
それから私と早波さんは卒業までに少しずつ仲良くなっていった。
そして留依とも全てをやり直して、前よりもうまく行っている気がする。
卒業した後の今も私は次の年の春へ、また次の春へと進んでいく。
「優くん!またね!」
「うん、またね。桜。」
私は今でも優くんとは相談し合える優くんにとっての”本当の友達”だ。
きっとそれはこの先の未来でも、続くはずだよ。
珍しく長編気味な小説を書いてみました!
活休前最後の小説、楽しんでいただけましたか?
8029文字でした!