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夏海荘
「はぁ。」
私、島雄ここあはマンションの3階からすぐ下の海を見下ろし今日18回目のため息を吐く。
空はこんなに青空なのに私の心は土砂降り。
ピーンポーンと家のチャイムが鳴る。
「はーい。」
私は精一杯の元気なような声を出し返事をした。
「蒼(そう)です。」
???頭の中に3つの?が浮かぶ。
「えっと、島雄です。どなたですか?」
「あぁ。島雄ここあ。今日からあんたは|死所《ししょ》の遠隔人類職員だ。俺は相棒の蒼。」
は、はぁっ!?この人は何を言いたいんだ……!?私はドアを開けなくても外を見える窓のようなものから外の様子を見る。外には真っ黒でサラサラな髪、群青がかった綺麗な切れ長の目。儚げな色白な肌に細いの腕。真っ黒なスーツのような服の後ろには黒い鳥の羽のようなものがついている。おまけにスタイルが良い。って、イケメンの代表格ですか!?と怒鳴りたい衝動を必死に堪える。
「はぁっ!?なにを言ってるのですか!?私は親に家出されたただただ平凡すぎる女子中学生です!」
「あんたの性格とかはどうでもいい。親が家出したことも知っている。とにかく島雄ここあ。出て来い。」
私は渋々マンションの扉から出る。そこには窓から見たようなイケメン(?)がいた。
「だ、誰ですか?」
「名前はもう言った。とにかく。このマンションにはあんたと大家以外は住んでいないはずだ。大家は先代がやっていたが降りたからこれからは俺が大家だ。」
「は?え、あ、何を言ってらっしゃるのですか……?」
この人。何者?ギリギリのところで敬語を保つ。
「ここは|夏海荘《なつみそう》。死所の遠隔職員派遣場、とも呼ぶ。ここでは死所の選択職員が決めた死者を現実世界に蘇らせる。これが内容だ。この蘇らせることができる職員は2人しかいない。前まで現役だった2人が役を降りたから俺とあんたに役が回ってきたところだ。」
この人は頭がおかしくなった人かヤバい人か。絶対前者だ。こんなイケメン(?)がヤバい人なはずはないと信じたい…
「だからさっきから死所とか職員とかなんなんですか?出てってください。」
私は精一杯睨みつける。
「はぁ。簡単に言うとこの建物は俺やあんたのような職員と呼ばれる者と死所と呼ばれる死者管理センター的なところから選ばれた死者を蘇らせることができる建物だ。俺とあんたのペアでその人たちを蘇らせるために俺はここに来た。」
「は?嫌よ。そんなことしたいわけがないじゃないのよ。」
「……桜と舜の今を知りたくないのか?」
「っ……」
私は息を呑む。桜と舜は私の親友。でも半年前、急に2人はいなくなった。私は2人を探す旅に何度も出かけた。何度も何度も。でも、見つかる様子はまったくもって無かった。
「今がわかるの?」
「さあ。まあ今はきっとわかるはずだ。」
嫌だ。絶対にこんな人とペア?を組みたくはない。絶対に嫌だ。でも、桜と駿…
「…分かった。桜と舜の今が分かるまでなら私はあなたとペア(?)を組んでそのなんかをやってやるわ。見つかるまで、ね。」
「ああ。ちなみに俺はあんたの教育も任せられている。」
「ねえ。私の名前はあんたじゃないの!「島雄ここあ」って言う名前があるの!」
「はぁ。島雄ここあ、これから俺はこの隣の部屋に住むことになる。」
「ふーん。まあよろしく。蒼。」
結局は蒼の計画に乗ってしまった、って事か……
「じゃあ。」
バタン
扉が閉まる。
「はぁ」
19回目のため息に名前をつけるなら「諦め」と言う名前を付けたい。
私はそう呟いた。
---
次の日ーー
ピーンポーン
「島雄ここあ。俺の部屋へ来い。」
要件だけを伝えて蒼はまた部屋へ戻ったらしい。
はぁっ!?何でそんな命令口調な訳!?私は蒼が住んでるだろう部屋に向かって盛大に怒りをぶつける。
ピーンポーン
「ここあですが。要件だけ伝えて部屋に戻るのやめてもらえますか?」
ガチャ
扉が開く。寝起きなのか昨日の切長の目は眠そうだ。それはそれで美しい。ってそんな事はどうでも良くて……
「入れ。」
はぁ。何でこの人と一緒になんかする事を認めた私が馬鹿だった……
「何?そんな無愛想だったら困るのはこっちよ!」
「……。今日、早速任務が入った。女子中学生だ。名前は三浦かの。堺市中学校(さかいし)在校。2年。」
「えっ、ちょっと待って。三浦かの?2年?かの?」
「人の話を最後まで聞け。死因はガラスの破片が体全身に刺さったからだ。昨日の放課後のこと。」
「えっ。堺中(さかちゅう)の2年の三浦かのって。私の同級生だ。」
「ああ。任務書にも書いてある。」
「じゃあかのは生き返れるんだね!この蘇り?のなんかになったなら。」
「そうとは限らない。」
えっ?昨日蒼は蘇らせることが仕事だの言ってなかったっけ……じゃあ何で?
「|任務人《ターゲット》が一度現実世界(仮)に戻り、1つの事件を解決すれば任務人は蘇りの扉の向こうへ行くことができる。」
「ふーん。え、事件ってどんな感じの?」
「その人に合わせたものが多い。俺らはその事件を共に解決に導くのも仕事の一つだ。」
「へー。あっ!一個質問。私まだ中2だけど仕事はダメなんじゃ無いの?」
「人間界のことなど知らない。ただこの死所の職員という仕事はダメでは無いはずだ。ダメでも無理やりやらせていたが。」
人間界…?ちょっ、今しれっと言ったけど無理やりって何よ!
「……酷い…」
「さあな。」
やっぱり蒼とやるのは無理じゃないかな……本日56度目の考えが頭に浮かぶ。
「任務人が来た。着いてこい。」
また無愛想……何度言ったら治るのか……
「はいはい。着いていきますよ」
「……」
はぁ。今日もため息が溢れ出る。蒼は扉を開けこの建物で唯一まあ綺麗な感じの下の玄関ホールへ向かう。
「ようこそ。三浦かのさん」
蒼がそう言い、指をパチンと鳴らす。その次の瞬間には私も蒼も市役所みたいな所の応接間的な感じの場所に居た。
「ひゃあっ!え、誰?何処?私は何!?きゃぁっ!」
「えっ!?はぁっ!?」
かのも私も大慌て。まあそうなるよ。私もそんな心内だったし…
「ここあ。あんたは慌てるな。話がめんどくさくなる。三浦かの。」
ぐっ。……やっぱり蒼といるとイライラする。
「ひゃいっ!?」
「……あんたは昨日の放課後、運悪くガラス窓が割れ、全身に刺さりご臨時。」
「ひゃあっ!?何言ってんの!?ってか誰!?」
(うんうん。そうだそうだ!蒼にもっと言ってやれー!)とかのに内心共感する。
「蒼だ。こいつは『こあ』。」
「「はぁっ!?」」
私とかのの声が被る。ちょ、こあって誰!?どなた!?
「誰!?」
「はぁ。黙って。三浦かの、一度だけ戻れるチャンスがある。」
「……へー。ってどうやってですか!?私、まだ死んだっていう実感はないんですけど……」
「こあ、こいつの手を握ってみろ」
「はぁ?分かったわよ。」
私はかのの手をしっかりと握った。はずだった。
「えっ!?通り抜ける!?」
「嘘だっ!?え!なんで!?」
「証拠はそれだ。分かったか?」
かのはぶんぶんと首を振る。
「これからあんたには仮の現実世界に戻ってもらう。」
「?」
蒼、もう少し丁寧に説明をと言いたい所だけど言ったらどんな目に遭うか……
「そこで1つの事件を解決してほしい。制限時間は3時間。事件の所は光る。そこの仮の世界での記憶は無事解決できて蘇ることができたら失われる。もちろん俺らのことも、だ。」
「わ、分かりました。私、まだ青春真っ只中の女子中学生なんで!」
「ああ。じゃあ3時間後。」
パチンとまた蒼が指を鳴らす。悔しいけどその姿は少し神々しかったりしなかったり。
〜タイムリミットまで後3時間ーー16:30
「うわぁっ!」
私、三浦かのは放課後の踊り場に立っていた。
「確か、なんかの事件を解決しなきゃいけないんだよね。事件の場所はなんか光るとか言ってたっけ?で3時間後までかぁ。」
「か……か…の!かの!かーのっ!大丈夫?急に黙って突っ立って。帰ろ?」
「あ、うん!ごめん!」
幼馴染の火伊香(ひいか)が声をかけてくる。でも帰る時間も事件?をみつけたかったけど……
「でさー隣のクラスの先生がさ、」
「あっ!」
私たちが今から渡ろうとした横断歩道が光っている。横断歩道が事件?
「ん?どうしたの?」
「あ、ごめん!ちょっと先帰ってて!」
「?う、うん。かの、またねー!」
「うん!またね」
またね、ね。またねが叶うように頑張らなきゃ。
「うーん。ん?」
横断歩道の端にはハートの小さなネックレスが落ちていた。ハートの形で中には赤っぽいものが嵌め込まれている。そしてシルバーのハートの形は赤いなにかが飛び散っていた。
「…………血?」
私の頭の中のピースがはまった気がする。多分ここで轢き逃げ事件があったけど轢いた人は轢かれた人も連れてった、って事かな。え、最低じゃん!
「このハートのネックレスだけがヒント!?」
難しすぎるでしょ……私はスマホの時間を見る。17:00。後2時間30分。でも事件を見つけれたのはでかいはず!ひとまず踏まれたりしたら困るし重要な証拠ってことで私はポケットにネックレスを入れる。どうやって犯人と被害者を探すか……私は今まで見て来た推理小説やミステリードラマの調べかたを思い返す。
「聞き込みだ!」
私は即判断即行動で近隣住民の方に「ここで轢き逃げ事件がありませんでしたか?」と聞くことになった。
〜タイムリミットまで後2時間ーー17:30
「はぁ。」
私は30分間聞き込みを続けた。近くの家の30軒に話を聞きに行き18軒は留守、3軒は電気はついてるけど鍵がかかっていてインターホンは無し、残りは「知らない」の一言で切り捨てられた。
「誰が轢き逃げなんて起こしたの……」
風も強くなってきて、雨もザーザーと降ってきた。時間は17:45。
「あー、もう最悪。雨宿り、しなきゃ」
私は近くにあったボロボロ目のもう潰れた八百屋の屋根で雨宿りをする。こんなことしてる暇あるなら探さなきゃいけないのに……
〜タイムリミットまで後30分ーー18:00
どれだけ待っても雨と風は弱まるどころか強くなっている。雨宿りは諦めてもう一度横断歩道に戻る。すると、髪が長めの女の人がふらふらになりながら横断歩道の周りを這いつくばりそうになりながら居る。もしかして轢かれた人の幽霊……!?
「あのぉ。大丈夫ですか?」
私は意を決して話しかける。
「あ、私のネックレス。ハートのネックレス見てない?」
「それなら……っと。はい。これ、あなたのですよね…?」
「…………!良かった…ありがとうね。」
大事なものなのかな…?その人は涙目になっていた。
私は時間を見る。18:29。セーフ?なのかな?
そう考えた次の瞬間私の体は浮いていた。
「うわぁっ!?」
「三浦かの。合格だ。」
「えっ!?本当ですか!?やったー!これで元に戻れるんですよね?」
「ああ。」
良かった。かのは無事に帰れる。
「良かった……じゃあ青春真っ只中女子中学生ライフが送れるんですね!」
「ああ。さようなら、三浦かの。」
パチンと蒼が指を鳴らすと見慣れた玄関ホールに戻っていた。
「かのが成功してくれてよかったぁ」
「俺が無事成功できるように裏で手を引いていたからな。」
そう言って蒼はニヤッと口を上げる。
「へ?何したの?!」
「まず火伊香というクラスメイトの潜在意識に潜り込み三浦かのと一緒に帰るように仕向けた。そして八百屋を作っておいた。これで完璧。」
「へー。あ、もう二個!なんであのネックレスは赤い血見たいのがあった訳?」
「あの女、画家のピールだ。」
ん?誰?画家界では有名な方!?え?私は確かに不登校と呼ばれるような感じだし絵にも詳しく無いけど!でも、ある程度なら知ってるはずだったのに……
「誰?」
「ああ。そういう事か。あんたは知らなくて正解。」
「えー!なんでよ。」
「さあな。次の任務もすぐ来るぞ。」
「……はーい」
こうして私の初任務(?)は無事に終えたらしい。
シリーズになってしまいました💦皆さん参加ありがとうございました!
【1人反省会】
主催者なのに1日遅れ((
しかも誤字多分あるし((
みはなだちゃん主催のふわぱふぇのもまだ後1、2作品あるのに((
すいません🙇🏻♀️💦