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公開中

白昼夢をみた蝉

目が覚めたら、オレは賽銭箱の前に突っ立っていた。 手足の感覚がちょっとずつもどっていく。 隣にはゲシがいた。まだ願い事をしているみたいだった。 「ゲシは動かないよー!」 トシがいつもの調子で話す。 「動かないってどう言うことだよ。」 オレはトシに聞いた。 「時間を止めてるってことだよ!まぁ、ちょっと話そうよ。」 トシはオレの後ろに回った。 オレは追うようにくるりと後ろを向いた。 トシはくるっと回ってオレに正面を向ける。 丸メガネはカラッと光っている。 「やっと来てくれたね。待ち侘びたよ。ナツキ。」 トシはゆっくり口を開いた。 「60年も。」 「…ろくじゅう…ねん?」 果てしなく遠く感じた時に、オレは絶句した。 あんなに…経っていたのか。 「キミには実感がなかったかなぁ。まぁ、ぼくもだけどさぁ。」 トシは淡々と話した。 「でも待ってよっ、オレ、子供のままじゃ…」 「大丈夫だよ。キミは幽霊じゃないか。」 トシは話し続ける。 「早くトモダチに会いに行きなよ。」 そう言われた途端、視界が一気にぐらりとした。 立っていられなくって、オレは地面にうなだれた。 「次はメイカイで会おうねー!」
「トウヤー、最近ナツくん?って子とは遊ばないの?」 トウヤを誘ってシューティングゲームをしている時、俺はふと気になって、聞いてみた。 横を見れば、コントローラーを慣れない手つきで触るトウヤがいた。 「…んー、いやぁ、まぁ。」 気難そうに濁すような返事が返ってきた。 チュイチュイーン、とやられた音がすると、トウヤはコントローラーから手を離して、あーっと横になった。 「んー、最近なんかあったの?」 よければ相談にのるよ。と、オレは話した。 だけどトウヤはギクシャクしたように顔にシワをつくり、ゆっくり口を開いて言った。 「…ナツくんって、誰?」 「…へっ?」 俺は驚きの余り声を出して反応した。 トウヤは嘘をつくような子ではない。 一昨日だって、ナツくんのことを俺に進んで話してくれた。 「いやいや、前まであんなに話してくれたやん。いきなり知らないって…」 更にトウヤは不思議そうな顔を浮かべている。 …ナツくんって子が、本当は嘘だったって事…はないはず。俺の勘が言っている。 トウヤは嘘をつかない。イナジマリーフレンドってやつだったとしても、それだとアキくんからの話はどうなるんだろう。 2人で一緒に遊んでいた友だちが嘘だっただなんて、あんまりじゃないか? 「…変な事聞いたな。じゃ、もう一戦な!」 「えーっ、やだよー、つかれたー。」 モヤモヤが晴れないまま、オレはナツともう一回シューティングゲームをした。 ナツくんって子は一体誰なんだ? いや、そもそも元からいなかった? あるいは____。 チュイチュイーン。 「ハルにぃ、死んでるー。」 もう少しで夏は終わる。 セミがミンミンとうるさく鳴いていた。