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君のせい。
肺にたっぷりの酸素を送り、たっぷりの二酸化炭素をはく。
このときを待ちわびてた。
真夜中。学校の屋上。
ここからは察してほしい。
私の計画は完璧に進んだ。
昼。1階の廊下の窓の鍵を開けたままにする。
夜。親の目を盗み家から抜け出して、昼に開けておいた窓から学校に忍び込み、持ってきた鈍器で屋上の鍵を壊す。
怖いくらいに順調だ。
わざわざ学校でやらなくてもって思った人もいるでしょう。
私だってそう思った。
けど、恨みがあるんだ。この学校の生徒と先生に。私にとってみんなが敵だ。
仕返しもせず消えるなんて屈辱でしかない。
私の考えた仕返しは、学校の七不思議的な存在になって、みんなを襲うこと。
我ながら完璧な作戦だと思う。
柵からそっと顔をだし、地面を覗き込む。
「ひぃ思ったよりも高い」
まあでも、そんなの関係ない。
むしろ、高い方がいい。
思わず笑みがこぼれる。
そして、宙へと舞った……
ガシッ
……は?
「おい!|望夢《みゆ》!なにしてんだ!」
「離して!」
強い力で右腕をつかまれる。
「痛いッ!…ていうか、あなた誰?!」
「誰って、|桜谷柊弥《さくらたにとうや》だよ!」
「…え?!柊弥?!なんでっ!」
柊弥は、私の好きな人……好きだった人……
中学生のとき。私がまだ、いじめられる前。思い切って告白して、柊弥にふられた。私の初恋は儚く散った。
高校は別の学校で、電車でたまに見かけるだけで接点はまるでなくなった。
それなのに、それなのに!
「どうしてここにいるの?!」
「………」
ゆっくりと屋上に引き上げられる。
「望夢……」
「……な、なに?」
「…ごめん」
「なにが?」
「中学の卒業式のとき…君にいおうって決めてたんだ」
「なにを?」
「好き……って」
「えっ………?」
「望夢、今はもう俺のこと嫌い?」
「べ、別にそんなことないよっ」
「嘘だろ?」
「そっそんなことない!」
咄嗟に大きな声を出してしまう。
「ううん、もういいんだ」
そう言って、私に手を差し出す。
なんとなくその大きな手に手をのせた。
次の瞬間、強い力で引っ張られた。
気づくと地面が目の前にあった。
ほんの刹那見えた、眼前に広がる雲に隠れることを知らない月と星たちが脳に鮮明にこびりつき、離れなかった。
痛い。
最後の力を振り絞り、目を開く。
柊弥の力の抜けた顔には、涙が伝っていた。
「なん……で…泣いてんの………?」
そして、ゆっくりと目を閉じた。
"誰のせいだと思ってんの"
そう、聞こえた気がした。
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以後、校内で嘘を言うと恐ろしい呪いがかかり、最終的に床や地面の中に引きずり込まれてしまう、という伝説が伝わっていったそうだ。
読んでくれてありがとうございます
どこかで聞いたんですけど一回の咳で消費するカロリーはだいたい2kcalらしいです
思ったよりも多くてビックリです