公開中
『想いは、時を巡る。』 episode.1
悲しみの淵に堕ちたとき、
奇跡を願った。
君の笑顔が、もう一度見たかったから。
すると涙は、色を変えて、
想いは、奇跡を起こして、
気がつくと、奇跡は悲劇も、何もかも消し去っていった。
何もかも、消し去っていった。
そう、これでよかったんだ。
これで――――よかったんだ。
「《――さあ、続いては、今話題沸騰中!Prince×2の皆さんでーす!》」
「キャーーっ!!きたきた!」
「《どうも!はじめまして!俺たち、僕たち、私たち、Prince×2でーす!よろしくお願いしまーす!》」
「《さあ、今夜歌う曲は何でしょうか?》」
「《はい。今夜歌う曲は、新曲「インビジュアル」と、「VICTORY」です。2曲続けて、どうぞ!》」
私は|増田結奈《ますだゆな》。普通の女子高生。
私には、大好きな人がいる。
それは、今画面の中にいる、|Prince×2《プリンス・プリンス》ので一番人気のエース・|馬場拓斗《ばばたくと》だ。
初めて見たときから、私は親近感を抱いた。
恋愛における“好き”とは違った、そんな感情。
私は、そんな彼から目が離せなくなった。
だから、今ずっとこうして応援している。
ライブにも、必ず足を踏み入れている。
とにかく、私の生活は彼中心と言ってもいいくらいだ。
私は、とにかく彼が大好きだった。
---
私が通う高校に着く。
今日も、1日がはじまる。
ユナ「ーーあっ、七海!」
いつものように友達に声を掛けようとしたその時ーーー
七海「ユナ!!大変!!」
私の中学からの親友ーーー|七海《ななみ》が凄い形相で私の元へ来た。
ユナ「どうしたの?朝からそんな顔して………」
七海「ユナ、あんたも、これを聞いたら普通じゃいられなくなるわよ。―――Prince×2が来るの!ウチの学校に!!なんか『Prince×2が高校にやって来る!』ってイベントがあって、それにウチの高校が当選したんだってさ!」
ユナ「――――えっ!!ウソ、どういうこと!?えと………待って整理が……………」
七海「落ち着いて!今から体育館に移動で、そこにPrince×2のみんながやって来るみたい。気絶しないように頑張って!」
ユナ「………無理…………七海、倒れないように、私の腕掴んでて………」
ユナ「もー、ユナったら大げさなんだからー。」
夢のようだ。………いや、夢なのかもしれない。
私が都合よく作り出した夢だ。きっと。
Prince×2なんて――――タクトなんて手の届かないような存在なのに――――
---
「―――成巡高校の皆さん、こんにちは!僕たち、Prince×2でーす!」
「キャーっ!!」
悲鳴にも聞こえるような歓声が沸き起こる。
ユナ(――――夢じゃ…………無かった………あ、ヤバいこれ死ぬ………………)
タクト、テレビで見るより髪サラサラだし、目がぱっちりしてる………
「じゃあ、自己紹介も終えたところで、早速特技披露といきましょう!じゃあ、まずはPrince×2のエース・タクト!!」
タクト「――はい!俺の特技は―――催眠術です!」
「えーっ!催眠術?意外とオカルトなもの好むのね…………」
タクト「まあ、まだ初めて1年なので、全然上手くできるわけじゃないんですけど…………今日は、せっかくなのでここにいるみんなの中から1人選んで、催眠術をかけてみたいと思います!」
「キャー!」
また、みんなの歓声が上がる。
誰が選ばれるんだろう…………
しかし、この高校は全校生徒は700人程。
私なんかあるわけ―――――
と、誰を選ぶんだろうとタクトの方をみると、バチッと目が合う。
生のタクトと目が合い、戸惑う私をよそに、タクトは恐ろしいことを言った。
タクト「―――じゃあ、今目が合ったそこのボブの女の子にしようかな!」
タクトが私の方を見る。
周りを見渡しても、それらしい子はいない。
――――えっ??私!?
私、増田結菜は、デビューから応援していたPrince×2のタクトに、催眠術をかけられるようです…………………
〜character.1〜
増田結菜(ますだゆな)
身長……157cm
見た目……茶髪のボブ
Prince×2のタクトを一途に応援し続ける女子高生。大人しいが、自分のやりたいことを曲げない芯のしっかりした性格。非常にマイペースなのが玉に瑕(きず)。
家は父と二人暮らし。