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魔王転生 本編1 転生
目が覚めると、私は見慣れない部屋にいた。
確か、勇者たちに負けて死んだはずなのだが…?
しかも、やけにこの部屋、桃色や、レースやフリルとか、きらきらしたものに囲まれている。
「なん、で…?」
自分の耳に返ってきたのは威厳ある低い声ではなく、女性のような高い声だった。
違和感を持ち、ベッドからおりて机の上の手鏡に手を伸ばす、と同時に部屋に若い男二人が入ってきた。
「は?」
手鏡に映るのは、魔王ではなく、髪の長い女だった。
混乱する私に男のうちの一人、髪を後ろで短く結んだ幼い顔の男が話しかける。
「魔王様、おはようございます!」
その話し方、仕草、それだけでピンときた。
「お前、まさかすらか!?」
「わぁ、すごい!ねぇねぇ騎士くん、ボクのことちゃんと分かってくれたよ〜」
すらはうしろの髪が少し長いキリッとした顔立ちの男に話しかける。すると、その男は対抗心を燃やしたのか私に近づき、言った。
「魔王様、私のことはおわかりになられますか?」
「お前は…呪いの騎士か?」
「はいっ!」
――ん?なぜ皆見た目が変わっているのだ?というか、すらと呪いの騎士は以前と同じで男なのに…
「なぜ私だけ女なんだ!!!!それよりも、なぜこんな姿なのか話せ!」
「えっとね〜なんかー、『転生』っていうのっぽいよ〜」
すらがそう言いながら一冊の本を手渡してきた。
「なんだこの書物は?『転生したらバナナになった』?バナナとは、確か南の方で取れる果実だったか?」
「バナナはどうでもいいよ〜 ちょっと最初の方だけ読んだらわかるよ〜」
本には、人間が死亡し、『生まれ変わる』ことによってバナナになり、食べられるまでの短い一生が描かれていた。
「……つまり、勇者に敗北したのは事実で、私達は人間に『転生』したということだな」
「そのようです」
「顔を洗ってくる。」
「わかりました。洗面台はこちらの廊下を進んだ左手にございます。」
―― 一旦、状況を整理したい。