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栞の進路変更
革製の、少しお高めの栞を買った。
読書を日課とするようになってまだ3年程しか経っていないが、そろそろお高めの読書グッズに手を出しても良い頃合いなのかなと思い始めている。
早速、新しい栞を横目に、好きな作家の新刊を読み始める。内容はすごく面白い。けれど、先ほど飲んだホットミルクのせいか、だんだんと睡魔が襲ってくるようになった。
このままでは読書に身が入らないと思い、仮眠を取ることにした。新しい栞を本に挟み、ベットに寝転んだ。
2時間ほど眠ると頭も冴え、読書に集中できるくらいになっていた。
読みかけの本を手に取り、続きに期待しながら文字列を追っていく。
少し読み進めると、物語の展開に違和感が生まれる。新しい登場人物がさも、私も最初からいましたよと言わんばかりに我が物顔でセリフを言うのだ。十数ページ戻ってみると、見慣れた展開がある。栞を挟む場所を間違えるなんてあるだろうか。一人暮らしなのだから入れ替える人がいるわけでもない。
気味の悪さを感じながらも、トイレへ席を立った時、私は確かに見た。
先ほど挟んだはずの栞がうねうねと奇怪な動きをしながら挟まれるページを変えているところを。
私はトイレに行くふりをして、ドアの隙間からその様子をじっと観察することにした。栞は小さなリボンを両手として器用に使ってページをめくり、私がさっき違和感を覚えた場所に、ドヤ顔で再び自らを挟み込んで静止した。
なるほど…。こいつは私が寝ている間に、自分のお気に入りの名場面まで物語を進めていたのだ。
せっかく買ったお高めの栞は、どうやらとんでもなく自己主張の激しい読書家だったらしい。これでは私の読書がちっとも進まない。
仕方がないので、私は栞の前に座り、心の中で語りかける。一緒に楽しむのは構わない。
だから、私より先の展開にまで行くのはよしてくれ。