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4話
夜になった。
F地区の軍団員・・・|牧野《まきの》は、悪い子供が出歩き・・・能力者が出歩きやすい真夜中の監視をしていた。
今日もあるのはうろついていた子供の指導くらい。能力者はほぼいないと言っても良い。
しかしF地区は、全国トップクラスの軍団力を持っている。団長が厳しいからだ。
F地区の軍団員は団長からのパワハラ・セクハラに悩まされ、自ら命を立つものも多い。
しかも軍団の力を盾にして、普通のF地区市民に対する迫害や残虐な行為も多く、他の軍団や地区からも悪評が高かった。
しかし何もしなければ何かがある、ということでもない。ただ単純に、任された仕事をまっとうすればいいだけ――
首に強い痛みを感じて、意識が途切れた。というよりは、死んだ。
「牧野・・・!ぐっ」「総員、警戒態勢!何者かに襲われ・・・げぼ」前門の前に血が飛び散る。
「・・・赤いですわね、|私《わたくし》、赤は嫌いですの、紫が好きですわ」「文句言ってンじゃねェぞ|鼎《かなえ》、ケケッ!」自らの体を刃物に変化させたカルマと、鼎・|要《かなめ》が門の前に降り立つ。
「俺たちもそろそろ行くか・・・」「そうですね、リーダー・・・|琉真《るま》ちゃん、ここで静かにしててね。誰か来たら急いで逃げるんだよ」「分かった・・・いってらっしゃい!」「ああ」「はい、行ってきます。」
|月人《つきと》と|椎葉《しいば》も敵陣に向かう。琉真はいつもどおりお留守番である。
ドタバタと音がして、一人の団員が団長室に入ってきた。
「団長!能力者の侵入を確認!人数や能力からしておそらく『X』かと!」「『X』か、ついにここまで来たか・・・!」椅子に座る屈強な男・・・F地区の団長が、そばに突き立てていた大剣を引き抜く。
「『X』も俺様の剣の錆にしてくれるわ。そして俺様が総団長に・・・!」「ケケ、それはどうだろうなァ」ふいに部屋に来た団員の声が変わった。「お前・・・!『X』の野郎か!」「あァ、そうだぜ!ちなみにもうお前以外生き残ってないぞ?」「なっ・・・!」団長の顔が蒼白になる。それもそのはず、この地位は子分からぶんどって居座っている地位。自分を守るために団員が居るようなものだが・・・まさかそいつ等がいなくなるとは。
「というわけで。死ね」月人の冷酷な声とともに逃げようとした視界がぐにゃりと歪み・・・首に細指の当たる感触がして、F地区の団長は死んだ。
「・・・死んだな。帰るぞ」「ケケ、さっさと帰って飯食いたいぜ、流石に少し疲れたからなァ・・・」「分かりましたわ。」「さすが|姉様《ねえさま》。今回も見事でございました。」「琉真ちゃん、無事でありますように」
琉真は元気だった。
「|井伏《いぶせ》団長!F地区、全滅だそうです!援軍をやりますか?」「・・・いや、いい。F地区は悪徳だった。ここで殺させて総入れ替えとしよう。」「了解しました!」
「・・・能力者。いつか会ってみたいものだ」ここにも軍団があった。しかしここは変わり者の集まりとして、他の多数の軍団や市民からはやや嫌われていた。
なぜならこの軍団は、「能力者との共存」を目指して活動している軍団だったからだ。
その軍団はR地区と言った。
「次の場所はどうしましょうか?」「次はここだ」月人の瞳が憎しみに彩られる。
「能力者との共存、と言ったことを掲げているR地区だ。」「能力者との共存?」椎葉の顔も疑念に彩られる。「あぁ・・・能力者との共存だと?ふざけるな。共存なんて出来るわけが無いだろう!」「|私《わたくし》はリーダーの言うとおりだと思いますわ」「リーダーと姉様の意見と同じです」「俺も月人と同じ意見だよォ・・・馬鹿げてンな」鼎・要・カルマの声が重なる。
「・・・椎葉くん、本当に共存なんてできないのかな?皆仲良く暮らすことは、できないのかな・・・」「・・・できないよ。きっと、できない。」少しだけ沈んだ琉真の声をなだめるように、椎葉が諭す。
「じゃぁ決定だ。次の標的はR地区の軍団。一人残らず抹殺するぞ。」「「「「「はい、リーダー」」」」」
決定時刻は、明後日の夜9時。
DATA
|黒野《くろの》鼎 危険度SS
識別名・シスター
能力名・マーシ
触れた相手に毒を付与する能力。毒の種類や強さは操作自由。