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話すのが苦手な彼女に愛を
登場人物
園部愛衣 若宮真琴
その他モブ
「愛衣〜!お昼ご飯食べに行こっ〜!」
「あ、真琴っ!うん、食べに行こ!」
雨が降って湿った空気が漂う昼下がりの教室。日は雲に隠れ、昼にもかかわらず少し暗い。さっきまで降っていた雨の雫が窓をゆっくりと泳いでいる。
お弁当を準備する者、お弁当を買いに行く者、大勢を連れてトイレに行く者、教室の後ろで騒いでいる者、、。
そんな者達の声にかき消されるように、軽い会話が交わされる。
私は、若宮真琴。家が大きな神社で、母も、祖母も、その母も、その母も、、ずーっと巫女という仕事をしており、ずっと神社を守ってきた。私も巫女の仕事をして、神社を守っていきたいと思っている。
だが、その神社と同じぐらい大切な人もいる。
それは、園部愛衣、という名前の私の彼女。とにかく、全てが可愛いのだ。
そんな彼女に恋して3年、付き合って1年経つが、今でも彼女の隣にいるとドキドキしてしまう。
「愛衣は今日なんのご飯なの?」
「えっとねっ、今日は唐揚げなんだっ」
「ほんと!愛衣唐揚げ好きだもんね〜!よかったじゃん!」
「うん!唐揚げ嬉しい!」
あぁ、本っ当に可愛い。隣に居れるだけで幸せだ。
しかし、私の彼女は、出会った最初はとても内気な性格だった。
中学生の時は、話しかけられることも無ければ、話しても上手く会話できない。そんな彼女だった。
今思い返せば、当時の愛衣の顔には、どこか哀しげなところがあったと感じることが度々ある。
そんな愛衣は、中学生の時はよくいじめられていた。
「上手く喋れないやつ」「何言ってるか分かんないやつ」「声が気持ち悪いやつ」といった、どれも下らないことでいじめていたのだ。
でも、私はいじめていた奴らから愛衣を助けることが出来なかった。ただ、見つめることしか出来なかった。
先生にも言えなかった。何故かはよく覚えていない。
そんなんだから、愛衣は余計に言葉を発しなくなってしまった。
私はーー愛衣に対する一通りの暴行などが終わってから愛衣の所に行き、ただただ、隣にいることしか出来なかった。
そんな、いじめから愛衣を助けることができなかった奴が今、私の隣にいても良いのだろうか。
そんなことをよく思う。
そんなことばっか考えていたからなのか、思わず口が滑ってしまった。
「ねえ愛衣」
「ん?」
「こんな私が、、愛衣をいじめから助けることができなかった私が、、愛衣の隣に居てもいいの、、かな?」
そんな言葉を聞いた愛衣は一瞬、固まった。
よく無いことを思い出させてしまった、と後悔する。
でも、そんな私の後悔とは裏腹に、彼女はめいいっぱいの笑顔を見せてくれた。
「ふふっ。何言ってるの、真琴。真琴は私を助けてくれたじゃん!いじめからも、孤独からも、話せないことからも、ね」
「え?」私は続ける。「私、、そんなに愛衣を助けた覚えないよ?」
「んー、真琴が助けた覚えがなくたって、私は助けてくれたって思ってるよ!」愛衣は言葉を繋げた。
「隣に居てくれたことも、ずっと話しかけてくれたことも、笑顔を教えてくれたことも!」
「私、ほんっとに、真琴に助けられた。改めて、ありがとーね?」
「、、、うん!私からも、ありがとう、愛衣!」
私は話せなかった彼女へ愛を送り、その彼女からも愛を貰った。
こういう時間が幸せだ。
ずっとこんな幸せが続きますように。
天気は雨でも、心は明るい晴れだった。
お疲れ様でした!
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では、またお会いしましょう!