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【第壱話】平穏に忍び寄る晦冥
〜沙雪 side〜
こんにちは。私は神月沙雪です。
私は事情があって村から追放され、とある人たちに助けられました。
そして今は、この山奥の屋敷に住んでいます。
この山は自然が豊かで、動物たちものびのびと暮らしています。
…ただ、一つだけ『普通』とは呼べないことがあり、それが…
__ダダダダダダ……__
|沙雪《さゆき》「………!?」
??「__………んにゃあ__あああ**ああ!!!!**」
**ズザーー!!!**
沙雪「わあぁ!?ど、どうしたの猫葉ちゃん!?」
|猫葉《ねこは》「んにゃ!?なんじゃ沙雪か!ワシはただ走っておっただけじゃ!!」
__たったったっ……__
|灯和《ひなぎ》「待ってよ猫葉ー!って沙雪ちゃん!こんなところにいたんだ!」
猫葉「む!お主が遅いのがいけないんじゃっ!!」
沙雪「まぁまぁ猫葉ちゃん…」
__*バサッバサッ……*__
|天舞《てんま》「…ったく、お前走んの速すぎんだよ!」
猫葉「ワシが一番じゃあ〜♪」
__てくてくてく……__
|竜翔《りゅうと》「おーい!今日はたくさん山菜取れたよー!」
沙雪「……あ!竜翔くん!火影さん!」
|火影《ほかげ》「これだけあれば、炊き込みご飯と天ぷらくらいはできるだろうな。」
**猫葉「天ぷらっ!!?」**
**天舞「天ぷらっ!!?」**
火影「声がでかい。」
竜翔「今から用意するから待っててね〜!」
沙雪「あ、私も手伝う!」
灯和「じゃあ僕は薪でも取ってこようかな〜。」
天舞「お、なら俺も行くわ。猫葉もくるか?」
猫葉「ふふん、手伝ってやらんこともないぞっ!」
私は屋敷の家族たちと、いつもこうして仲良く暮らしています。
ここまでの会話なら、ただの家族の会話に見えるでしょう。
………しかし、私以外の彼らは人間ではないのです。
え?どういうことかって?
実は彼らは、日本では有名な**妖怪**なのです。
怖がりで人見知りだけどとても優しい『`酒呑童子`』の灯和。
天真爛漫なムードメーカーの『`大天狗`』の天舞。
世話焼きでちょっと苦労人な『`緑龍`』の竜翔。
冷静沈黙で少し毒舌だけど家族想いな『`天狐`』の火影さん。
元気溌剌で超ポジティブな『`猫又`』の猫葉。
私はこの5人と一緒に暮らしています。
確かに周りから見れば『普通』ではないかもしれません。
でも私にとっては、唯一無二の家族なのです。
私はこの屋敷で、平和で幸せな毎日を過ごしています。
*__ゴロゴロ……__*
灯和「………?」
天舞「ん?どうかしたか」
灯和「あっ、ううん!なんでもないよ!早く行こう!」
(……………なんだろう………)
---
〜?? side〜
*ゴロゴロ…*
*ザーーー……*
雨が止むことなく降り続けている。
無機質な廊下に私の足音が冷たく響く。
__コツ…コツ…コツ……__
やがて、目的の場に着く。
目の前には、水面のように揺らぐ鏡があった。
??「………『|樹霊山《こたまさん》』を映し出せ。」
その瞬間、鏡面が激しく歪む。
その様子はまるで、すべての生き物を飲み込んでいるかのようだった。
暫くすると、鏡には青々とした山が映し出される。
木々が育ち、動物がくつろいでいる。
??「…………こんなところにいたのか。」
そして、私が探していた人物がそこには映し出されていた。
白髪、瑠璃色の着物、黒い羽織、鈍く光る2本のツノ。
そして、耳に光る金のタッセルイヤリング。
??「お前は何百年も私から逃げていたが、遂にそれも終わりのようだぞ?」
その周りには、他の妖怪が数人うろうろしている。
あいつは同類を集めて何がしたいのだろうか。
私にはあいつらの行動の意味がさっぱりわからない。
わからなくていい。どうせつまらぬ理由だ。人間とはそういう生き物だ。
私は私のするべきことを執行するのみ。
??「……人間界に堕ちた、醜く哀れな妖怪たちよ…」
「…今宵、お前たちを地獄に叩き落としてやる。」
*ゴロゴロゴロッ…*
***ピシャーーン!!!***
??「………そこでずっと怯えていろ。灯和。」
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第壱話 〜完〜