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足りないきみは風を喰む6
食事が終わりそうなところで、命子がこちらに微笑みながら手招きをした。そこで、口々に話していた皆んなが静かになる。
|「五喜さん!食堂の片付け手伝って!」《命子》
また、命子がその嫌な単語を空間に吐き出した。そうして、再び雑多とした空気になる。二人きりになった静まり返った食堂の中で、命子は何かを言いかけたこちらを見つめながら不思議そうな顔をする。それでも、またあのお願い事をした。
--- ねえ?またナースを連れてきてくださいよ ---
それから後日、ナースステーションを見渡していると察したような皆から嫌な視線を受ける。
|「おやおや、何か探しているのですか?」《アリス》
|「…食堂の中にカルテを忘れてきてしまって」《 》
|「付いてきてほしいということですかねえ?」《アリス》
「|お願いできますか?《 》」
見つめるこちらの目に視線を貼り付けながら、アリスは乾いた笑いをあげた。食堂についてから、物陰に事前に置いていたカルテを探すふりをする。
|「どうです?見つかりましたか?」《アリス》
|「…いえ、もう少しかかりそうです」《 》
|「いやあ、それにしても今日はお天気がとっても良い日ですねえ。こういう日には、1人くらい人間さんが亡くなってもおかしくはないんですよねえ。どう思いますか?そこの天使さん」《アリス》
そう言って振り返りながら、ナイフを突きつける命子に強い哀れみの目を向けて倒れ込んだ。
|「亡くなったのは人間でも誰でもない彼女でしたね」《命子》