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十階編②
登場人物
水仮香澄:主
New登場人物
笹倉 紫乃:MinoruMiu 様
綴木 舞:甘味ルタ 様
東雲 翠巒:奏者ボカロファン 様
「はぁ~………。」
夜の静けさに、香澄の溜め息がこだました。脱獄するとは言ったものの、なにをすれば…………。ウロウロと歩いていると、声をかけられた。
「なにをしているんですか?」
「!?」
少し幼さを感じる声。すぐそこにあった牢屋にその少女はいた。二つに結ばれ、編み込みされた藍っぽい紫色の髪に、少し不審がるように睨む紫色の目。
「君は……紫乃ちゃん!」
紫色の目の少女は、No.3の被験体|笹倉紫乃《ささくら しの》だった。
「水仮さん?」
「そう!会えて良かった!」
香澄は喜んでぴょんぴょんと跳ねる。
「ところで、水仮さん、ここでなにを?」
「脱獄するの。紫乃ちゃんは逃げたい?」
紫乃は固まる。それから、少し迷ってからハッキリと言った。
「逃げたいですよ。自由に、生きてみたい。」
「じゃあ、逃げよう。」
香澄は手を差し出した。すると、紫乃は困ったように眉を下げた。
「水仮さんの手を触ったら僕の手が腐ってしまいます。」
「あっ、そうだった……。うっかりうっかり!」
香澄はテヘペロのポーズをする。正直、自分でも自覚するほど気持ち悪いものだっただろう。しかし、紫乃は嫌な顔一つせずに、牢屋の鍵を創り出し、香澄にあげた。紫乃の能力、「創」。なんでも創り出せるが、乱用すると最悪の場合死ぬという代償付きだ。しかし、香澄は受け取らず、というか受け取れず、牢屋を能力で腐らせ、紫乃を外に出した。
「よし、行こう!」
そう言って、走り出そうとした途端に、後ろから声をかけられた。
「これは規則違反という事で問題ないですよね!水仮さん!笹倉さん!」
後ろを振り返ると、黒いショートヘアにエメラルドグリーンの瞳。片手にはパン。もう片手には欠けたマグカップ。十階の看守、|綴木舞 《つるぎ まい》の姿がそこにあった。
「舞さん………朝ご飯の、途中………?」
「えぇ!今日も素晴らしい朝ですね、水仮さん!笹倉さん!」
ちょっと不思議な方で、パンとドリンクさえあればどんな朝でも素晴らしいと思える、らしい。確か、スラム街出身だとか、なんとか。にしても、彼女に会うなんて最悪の朝だな。香澄は苦笑い。紫乃は警戒して、手には能力で創られた拳銃を持っていた。ここは、穏便に………。
「罪は重いですよ!今すぐ牢に戻ってください!さもなければ、殺します!」
明るい声で告げられた死の宣告。多分、彼女なら本当にやるだろう。でも、今回は退けない。
「ごめんなさい、舞さん。今回は、退けないの………紫乃ちゃん!!」
期待通り、紫乃は動いてくれた。舞の脳天に向けて発砲する。普通の人なら、それで死ぬだろう。普通の人なら。しかし、相手は舞。素早い身のこなしで、しゃがみ、更に発砲してきた。香澄は前に行き、目の前に手を突き出した。銃弾は香澄の手に当たり、腐った。というよりか、蒸発したようにも見える。
「流石です!」
次々にくる銃弾を必死で防ぐ香澄。紫乃が発砲しているのにまるで当たらない。だが、多分大丈夫。少しずつ、後ろに下がっていた。ここまでくれば、きっと聞こえる。
「翠巒ちゃん!」
香澄は大声で彼女の名を呼んだ。
---
__「翠巒ちゃん!」__
誰かに名前を呼ばれた気がした。誰だかは知らんが。どうせまた実験だろうと、僕は舌打ちをした。ところが、そうじゃなかった。
「翠巒ちゃん!」
すぐそばで聞こえた声に僕は顔を上げた。黒い髪に僕を射抜くような真っ直ぐな目。香澄の姿がそこにあった。
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古びた牢屋に、彼女はいた。半分は焦げ茶色で赤い目。もう半分はオレンジ色でオレンジ色の目。なんとなく恐ろしい雰囲気を纏った彼女は、|東雲翠巒《しののめ すいらん》。被験体No.2。彼女なら………。
「ちょっと今、説明無理だけど。取り敢えず助けて!」
「ふーん………取り敢えず、アイツは殺していい系?」
「はい。」
返事をしたのは香澄じゃなく、紫乃だった。翠巒は顔に笑みを浮かべたそして、牢を掴んだ。牢は灰になった。翠巒の能力、「灰」。触れたものを全て灰にする。しかも、一部とかもできる、らしい。まぁ、翠巒の融合生物は毒を持っていて、口から火を吐く(?)ファイアサラマンダーだからね。でも、ちょっと離れてる。
__「あんまり殺さないでよ………。」__
香澄の蚊の鳴くような声はもちろん翠巒には届かなかった。
「あらあら!東雲さんが出てきてしまいましたか!みなさん、罪は重いです!大人しく捕まってください!」
舞は忠告するが、そんなのを翠巒が聞くわけも無かった。
「全部、灰にして消してやる………。」
火の付いた翠巒を止めることが出来るのは、この場ではただ一人だった。そう、唯一No.が低い香澄だけが、翠巒を止める術を持っているかもしれなかった。
次回予告(という名のなにか)
?「こりゃあどうなってんだろう?香澄さん。」
香澄「○さん!どうしてここに!?」
看守側に仲間!
あとがき(という名のなにか)
作者「翠巒ちゃん視点こんなんでいいかなぁー。」
翠巒「テメェの書く話なんか興味ねぇわ。」
作者「!?なぜ翠巒ちゃんがここに!?」
翠巒「知るかボケ。テメェがやったんじゃねぇのか?」
作者「………作者が創ったキャラクター以外はここにはこれないはずなのに……。」
香澄「………(私が呼んだなんて言えないよ)」