４６．儀式

　 　翌朝、早く置きた私は、さっそく守護大教区長……ラスベートのところに行った。 　もちろん朝食は食べている。 「ラスベート様ー」 　今回は前の時と違ってちゃんとアポを取っているから、ちゃんと部屋にいた。 「おう、ユミが。ルミナスアセンションだな？　取りに行くぞ」 「はい」 　そして見慣れた扉の中に入り……エリーゼは外で待っている……ルミナスアセンションのところへと歩く守護大教区長のあとをついていく。 「おう、ここだ」 「ありがとうございます。私が持ってもいいのでしょうか？」 「いいぞ」 　私の手に馴染む神器。 　何故か、持っていると安心してきた。ルミナスアセンションに守られているような、そんな感じがしてくる。 　そして、聖女の正装に着替える。 　今までは一度も着たことがなかったが、存在はしていたらしい。 　真っ白な、純真無垢を体現しているような服だった。 　……それを着ているものが純真無垢だとは限らない。 「じゃあ行こうか」 　時刻は地球の２４時間制で１１時１５分くらい。 　わたしは、エリーゼに、ベノンを含む護衛全員を連れて、表の祈祷室へ向かった。 「ユミ様」 「どうした？　ベノンに……カンゲも？」 「本当に、するつもりですか？」 「するよ」 「何があっても、ですか？」 「うん。応援してくれるよね？」 「はい……」 　もともとは儀式のことを知らなかった護衛たちも今ではもう理解している。 　そして、うまくいった結果どうなるのかも。 「私は、最後くらいちゃんとやりたい」 「分かりました。邪魔者がもし来たら排除に努めます」 「よろしくね。……まあ来ないとは思うけど」 「これも、ユミ様と同じ、私たちの最後の任務です」 「そっか……」 「私は……」 　覚悟を決めた護衛たち。その隣でエリーゼが困っていた。 「エリーゼは、これからも孤児たちのことを考えてくれればいいよ」 「しかし、これはその仕事とは別で……」 「じゃあ、見届けて。儀式でどんな現象が起こって、どんなことが起こったのかを、ね。この儀式はこれからもきっと残る、そうでしょ？　いわば書記官ってところかな？」 「……！　分かりましたっ……！」 　エリーゼの、覚悟も決まった。 　あとは、私だ。 　頭の中で思い出が駆け巡る。 　転移してから、今まで。 　どんな人と出会って、どんなことをした、してもらったか。 　うん、私は大丈夫。 　それなら、行こう。 　いよいよ、太陽は真上に登ろうとしていた。 　さあ、儀式を始めよう。 　これが私の、最期だ。 　みんなの記憶に残る、儀式にさせてみせる。 　私は、女神像の前にルミナスアセンションを置いた。 　私は、聖水を取り出した。 　聖水の魔力を、私を通さずに神器に流した。 　ルミナスアセンションは、光った。 　ぼんやりと。 　そして、その光は聖水の明るさが弱まるとともに強くなっていった。 　ルミナスアセンションには、そのカップの容器の部分に、液体が入っているように見えた。 　……やがて、その液体が埋まった。 　そして、目を開けると、白い世界が私を待っていた。 　……ああ、私、成功したんだな。 　そう思い、気が、抜けた。