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迷ヰ兎とクリスマスマーケット
迷ヰ犬と兎がクリスマスマーケットでわっちゃするだけ。
ルイスside
「うわぁ~!」
凄いです、と辺りを見渡す敦君。
虎の耳と尻尾が見える……。
「昼間は暖かかったけど、流石に夜は冷えるねぇ……」
「僕チュロス食べたい。国木田、買ってこい」
「は、はい……」
国木田君、意外と寒さに弱いのかな。
防寒してるのに寒そう。
僕は乱歩に連れられてストーブ近くの席を取る。
それぞれ食べたいものを買いに行ったようだ。
「ストーブの近くでも寒いんだけど!?」
「まぁ、しょうがないでしょ。カイロあげる」
やった、と乱歩は僕の渡したカイロで指先を温めている。
福沢さんは相変わらず和服だけど、寒くないのかな。
「……。」
あ、顔が死んでる((
「福沢さんもいる?」
「……貰おう」
さて、僕もそろそろ見に行こうかな。
でも寒いから動きたくない。
とりあえず、パンフレットで確認……。
「あ、ここにいたんですね」
谷崎兄妹が帰ってきちゃった。
「私達がいますので、社長とルイスさんも見てきたら如何ですか?」
「……。」
「そうするよ。ほら、行くよ?」
「……動きたくない」
仕方ない。
無理やり引きずっていくか((
「……。」
一ミリも動かないんだけど、この人。
銀狼としての力をこんなところで使うなよ。
どうしたものかな……。
「福沢さん」
「……なんだ、乱歩」
「僕、ココアが飲みたいなぁ」
「……。」
「飲みたいなぁ」
「早く行くぞ、ルイス」
「えぇ……」
小走りで行く福沢さん。
乱歩の方を見るとウインクしていた。
「……行ってきます」
仕方なく、僕も福沢さんを追いかけることにした。
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No side
「愛されてますね、乱歩さん」
「まぁね」
「それにしても、社長ってあんなに寒がりだったんですね……」
「僕より寒がりだからね、福沢さんは」
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ルイスside
乱歩の云っていたココアを探しながら歩くこと数分。
「……全く見当たらない」
「まぁ、あの席から本部挟んで反対側だからね」
福沢さんからの返事がなくなった。
顔を覗いてみると、「うわぁ」と云いたそうな表情をしている。
「あ、与謝野さん」
「おや? 寒がりなのに社長も買い物に来たんだねぇ」
「乱歩がココア飲みたいって」
なるほどねぇ、と与謝野さんが笑う。
「……早く行くぞ、ルイス」
「あ、うん。それじゃまた後で」
与謝野さんの手にあったのはホットワインかな……。
僕も飲みた──。
『止めておきなさい』
「(えぇ……)」
『面倒見るの誰だと思ってるのよ』
アリスに止められた……。
「ルイス、乱歩のココア以外に何かいるか?」
「え、いや、うん、自分で買うから良いよ」
そうか、と福沢さんはココアとフィッシュ&チップスだけ買って帰っていった。
ワイン買っちゃ駄目だからな。
じゃあビール((
『ルイス?』
「……何でもないでーす」
さて、と僕は改めてパンフレットを開く。
「どうしよう……」
「ん?」
聞き覚えのある声。
振り返ると、敦君と鏡花ちゃんがいた。
困っているのは敦君だよな。
「どうしたの?」
「あ、ルイスさん」
「ここは……クレープが売ってるところか」
財布を見つめている敦君的に、何を買うか迷ってるのかな。
「二人とも、どれが食べたいの?」
「……苺」
「僕はチョコのやつなんですけど、まだプレッツェルを買えてないのでどうしようかと……」
「すみませーん」
有無を云わさず、僕は購入する。
「ルイスさん!?」
「子供なんだから大人しく奢られてな。みんなはあっちのストーブのところにいるよ」
「……ありがとうございます、ルイスさん」
どういたしまして。
それだけ云って、僕はまたパンフレットに視線を戻す。
やっぱりウインナーが良いかな……。
でも、チュロスとかプレッツェル食べたい。
あ、ホットミルクティーのタピオカとか美味しそう。
「ルイスさん?」
「……おや珍しい」
お疲れ様、と僕は笑う。
声を掛けてきたのは芥川兄妹。
まさか二人がこんなところにいるとは思っていなかった。
「今日は探偵社とご一緒ですか?」
「そうだよ。二人は今日非番?」
「はい。折角なので私が兄さんを誘ってみたんです」
「兄妹の仲が良さそうで何より」
でも芥川君がこんな場所にいるの意外だな。
どうせなら樋口さんと一緒に来れば良いのに((
「芥川先輩! どこですか!?」
「樋口君、そう叫ばずとも芥川君は子供ではないのだ。銀と一緒にいるのではないか?」
「まぁ、十中八九そうだろうな」
この声は、と思っていると芥川君が頭を抱えていた。
気持ちは分かるけど。
「それでは、私達はもう行きますね」
「探偵社の面子に会っても問題起こさないでね」
「……はい」
芥川君の返事が遅かったんだけど???
「相変わらず芥川君は仏教面だねぇ」
「僕は昔より表情豊かだと思うよ、太宰君」
ねぇ、と僕は背後から声をかけてきた人物へ云う。
彼は笑いながら僕へ飲み物を渡してきた。
「お酒なら遠慮するよ」
「何故です?」
「アリスに止められてるから」
僕は別にお酒に弱くはない。
でも、最近あんまり飲めなくなってきたんだよな。
正確には二日酔いが酷い。
「一杯ぐらい良いじゃないですか」
「……まぁ、確かに」
『ルイス???』
「大丈夫だよ。一杯目がペトリュスとかじゃないんだから」
『ペトリュスだったら無理やりにでも止めてるわよ』
じゃあ良いってことか。
「……あ」
ルイスさん、と太宰君が空を指差す。
ふわりと雪の結晶が落ちてくる。
「ホワイトクリスマスなんて、何時ぶりだろう」
「雪を見ながら飲むのは良いですね」
「そうだね」
「じゃあ乾杯しますか」
僕は差し出されたコップを受け取り、笑う。
「迷ヰ犬に」
「……ルイスさんに云われるとは思ってませんでした」
「良いじゃん、たまにはね」
「|迷ヰ犬《ストレイドッグ》に、乾杯」
Merry Christmas, stray dogs.
てことで、いつも太宰さんと乾杯して終わってる気がする天泣です。
なんか書きやすいんですよね。
「迷ヰ兎シリーズ」はとりあえず、一話完結のルイスくんの話を入れていこうと思います。
是非ファンレターで感想をください。
それじゃまた。