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【淡本中学校:コンテスト参加用番外編】夏の日、壊滅的行動群。
コンテスト用に書いたものです。
淡本中学校本編を見ていなくても、
単体で読める作品に仕上げました。
流血表現、軽めのグロ描写が含まれるため、R12にしました。
年齢制限に関する注意事項は見当たりませんでしたので、
年齢制限ありの小説にしました。
照りつける日差しの中、ツクツクボウシが鳴いている。
私たち教師は、それを尻目に事務作業をする。
夏休みだから、授業はない。
もちろん校舎内には、全校生徒がいるわけだが...
普通の学校ならありえないだろう。
だがここは淡本中学校、政府非公認の独自の教育機関。
下校というシステムは採用されておらず、
卒業するまで...いや、卒業したあとも生徒を逃さない。
そんないかれた中学校の校長が、
椅子でぐるぐる回転しながら愚痴をこぼす。
「あっづーい...もう無理...」
「アイスいりますか?」
「いる!死んじゃう!」
糸目で人が良さそうな顔、長い黒髪を束ねた男性。
彼こそが、この学校の校長だ。
だが、彼を異常たらしめているのはその年齢。
23歳、淡本中学校の教職員の中で一番年下。
流石に若すぎる...と言いたくなるが、それは禁句だ。
彼は北先生から渡されたアイスを頬張りながら、
気だるそうな声で言い始めた。
「ツクツクボウシって、最後らへんヤケクソになるよね」
「ヤケクソ?」
「いやさ、ずっとツクツクボウシ!って鳴いてるじゃん。
なのに最後だけジージー鳴くだけで言葉になってないの」
「確かに、そうですね。なんででしょう?」
その時手を上げたのは、国語教師の西先生。
彼は喋るのが苦手なようで、基本筆談で意思疎通を図る教師だ。
メモ帳に何かを書いてから、全員に見えるように高く掲げた。
「(それは他のオスを牽制するためですね。
他のオスの歌を邪魔したいので、自分が歌い終わったら
ジージー鳴いて、他のオスの歌を遮ろうとするんです)」
「へー、物知り!ちょっとぉ、北先生知ってた?」
「知りませんでした...」
少し悔しそうな顔で答えたのは、理数教師の北先生。
理科と数学どちらも教えられる、ちょっとすごい人だ。
私はロボットなのだが、時折彼女にメンテナンスをしてもらっている。
...この会話だけ聞いてみれば、
この学校は少し教師の年齢層が低いだけで、普通の中学校だ。
だがたった一瞬でも、この学校を普通だと思ってはいけない。
あれから少し時間が経ち、夕方のことだった。
保健室に、女子生徒が駆け込んできた。
その姿を見て、私は自分の目を疑った。
彼女が抑える腕からは、止め処なく血が滴っている。
震える足には、カッターの刃が刺さっている。
「た、たすけてA先生、わたし、わたしを...」
「大丈夫かい!?まずは落ち着いて、何があったのかを」
その瞬間、彼女の背中から血が吹き出した。
倒れた彼女の背後には、いつの間にか校長が立っている。
手には血だらけのカッター。無関係だという方がおかしい。
私は強めの口調で、彼に詰め寄る。
「校長、またですか。あなたは何人殺せば気が済むんです?」
「それは南先生に言ってほしいなぁ、僕より彼女のほうが
生徒のこと殺してるじゃん!」
「殺した数じゃないでしょう。なぜ人を殺すのかと聞いてるんです」
「そんなの、もう分かんないや」
そう言って、いつものようにケタケタと笑う。
多分言い訳でもなんでもなく、なぜ自分が人を殺すのか、
本当に自分でも分かっていないのだ...
「うーん、強いて言うなら彼女、他の生徒の悪口言ってたんだ。
それでちょっとイラッとしちゃって、気付いたらやってた」
「指導すればいい話でしょう...あなたと南先生がみっちり指導すれば、
誰でも言うことを聞くと思いますよ」
「でも、ああいう子は言っても聞かないじゃない?」
ずっとこの押し問答だ。校長と話していても埒が明かない。
とりあえず、死体をなんとかしなくては...
「死体は校舎裏の森に埋めようかな、今北西先生いないし」
「まあ、そこしかないですよね」
私は頭を抱えながらも、彼の隠蔽に協力するしかなかった。
他の教師も呼んだほうがいいだろう。
人手が必要だ...そう思い、その旨を校長に伝えてから
他の教師を呼びに向かった。
あそこにいるのは...北先生か。
「すみません北先生、追加の作業が」
「...!」
北先生は、私の声を聞いて逃げていってしまった。
最近も死体を処理したばかりだし、夏バテもしているので
やりたくなかったのだろう...仕方ない。
次に職員室に行ってみると、西先生がパソコンに向かっているのが見えた。
私はすかさず声をかける。
「すみません西先生、大きな荷物の処理を」
「(面倒事持ってこないでくださいカス
今忙しいので他の人にやってもらってください)」
「そ、そうですか」
西先生は、事前に書いていたかのような素早さでメモ帳を掲げる。
死体処理をした次の日は筋肉痛でバキバキになるため、
できれば全員やりたくないのだ...
その後南先生を探してみたが、どこにも見当たらず。
北西先生と北東先生は無断欠勤中なので不在。
私と校長でやるしかないか...
そう思い、保健室に戻った。
保健室に戻ると、校長は死体を
大きめのバッグに詰め終わったところだった。
「あれ?誰もいなかったの?」
「いましたけど、全員嫌がってました」
「まあそうだよね、じゃあ僕らでやろっか」
はい、そう言って校長はバッグを差し出してくる。
こんなもの持ちたくないが...
校長は非力だ、私が持つしかないか。
そうして、私たちは裏手の森に向かった。
あそこは北西先生が鹿を飼っている場所で、
普段は死体を埋めるなと言われているのだが...
今は北西先生がいないため、安心して埋められるというわけなのだ。
教員用玄関から外に出て、そのまま裏に周り込む。
あたりは大分暗くなっていたが、セミはまだ元気に鳴いている。
「あっづーい...あっづーい...」
「我慢してください、自分で殺したんだから自分で埋めるんですよ」
「あいあい...」
そういう私も、あまりの暑さにショートしそうだ。
だから夏場に人は殺してほしくないのだが...
虫も寄ってくるし、本当にやめてほしい。
森に入り、できるだけ奥に歩を進めていく。
鹿が跳ねているのが見える...それにしても、本当に多い。
奥まで来たところで、近くに木が密集していない
平らな地面を発見した。
「ここ良さそうですね」
「はぁ...はぁ...そうだね...やばい暑いよ...」
校長は弱音を吐きながらも、穴を掘り始めた。
この調子だと、掘るのに何時間かかるか...
考えてみると、口からは自然とため息が出てきた。
「暇つぶしにしりとりしようよ、まず僕からね。リサイタル」
「ルサンチマン」
「はぁ???」
校長の馬鹿馬鹿しい暇つぶしに付き合う労力が惜しい。
しばらくふたりで穴を掘っていたが、
なにやら足音が近付いてくるのに気が付いた。
「えっ...鹿かな」
「いや、重心の乗り方的に人間では」
「やっべどうしよ」
慌てて逃げようと思ったものの、無理そうだ。
なら言い訳を考えるか?死体が増えてしまうが、口封じか...
色々考えていたが、その足音の正体が
よく知った人物であることが分かった。
「南先生!チミ、なんでここいるの!?」
「えぇっ!?校長とロボット!?
わたし、恥ずかしながら死体を埋めに来ていてぇ...」
「あはは、僕らもだよ!一緒に埋める?」
「ほっ、本当ですか?では、お言葉に甘えてぇ...」
なんてことだ...私は再度頭を抱えた。
彼女は南先生、社会性皆無の社会教師。
よく手を滑らせて、生徒を殺す。今日もそうだろう。
一晩にふたりも生徒がいなくなったら、流石に怪しまれてしまう。
だから殺すときはやる前にしっかり考えろと、何度も言っているのに...
それから3人がかりで穴を掘り進め、
なんとかふたり入る大きさの穴を掘り終わった。
「じゃ早く埋めちゃおう」
「ですねぇ...暑いですぅ...」
「戻ったらアイス食べようか、確かまだあったよ」
そう言いながら、校長は穴の中に死体を投げ込んで
土を被せ始めた。相変わらず会話と絵面が合っていない。
土を被せるのは、掘った時間よりも大分早く終わった。
最後に上を歩いたりジャンプしたりして、土を押し固める。
「終わったねー」
「もうやらないでくださいよ」
「善処しておくよ」
その後のオチとしては、アイスはすべて北先生が
食べてしまっていたということだ。
校長と南先生は不服そうだったが、天罰だと思えば当然である。
---
「僕、好きな人できちゃった!」
あれからしばらく経ち、夏が色濃くなった頃。
校長の発言で、職員室内は一気に凍えるほど寒くなった。
校長は、恋愛というものをよく知らない。
そのせいなのかは分からないが、
彼は激しい殺意を恋心だと勘違いすることがある。
わかりやすく言うなら、殺意を抱いているとき、
相手をどう殺してやろうか四六時中考えるだとか、
胸がドキドキするなどの状態を、恋だと勘違いするのである。
まったく、はた迷惑な勘違いだ...
校長が恋をした次の日、人がひとり死ぬ。
私たちは明日の死体処理に備え、早めに仕事を終えて
ゆっくり休むことにした。
校長を除いた教師陣で集まり、明日のことについて話す。
「どうします?確実に死体は上がりますが」
「薬品で溶かしますか?」
「(あれ臭いのでやめてほしいです)」
「なっ、なんとか校長に”その恋は勘違い”だと思わせられませんかねぇ...」
「「それだ!!!」」
私と北先生が、同時に叫んだ。
そうとなったら早く説得しなければ!!
私たちはぞろぞろと校長室に向かった。
「「「校長!!!!あなたは間違っています!!!!!」」」
校長室の扉を勢いよく開け、私たちはそう叫んだ。
校長はきょとんとした顔をしながら、聞き返してくる。
「えっと...何が?」
「あなたのそれは恋じゃないです。恋を知っている私が保証します」
「チミには僕の胸の高鳴りが分からないだろ?」
「脈を図らせてください」
「そういうことじゃない!」
北先生が説得をしようと試みたが、
自分の意見を曲げることの少ない校長には、イマイチ効果が薄い。
とりあえず私は、誰を好きになったのか聞いてみることにした。
それで対応も変わってくるだろう。
「で、誰が好きなんです?」
「3年1組の孝太くん!」
「はぁ...生徒との恋愛は控えたほうが」
「大丈夫だって!」
校長がこれを言うからたちが悪い。
普通の学校であれば、校長が生徒との恋愛を禁止するのだろうが...
すっかり困り果てたところ、次は西先生が説得を試みた。
「(校長、あなたはサイコパスで変人でショタコンの犯罪者ですか?)」
「違うよ!僕はまともだからさ」
「(なら男子生徒への恋心は気の所為ですね?)」
「いや、この気持ちは本物だと思うなー」
「(ショタコン変態が!)」
西先生の捨て台詞にも全く動じず、もはや為すすべなし。
言い出しっぺの南先生は、どう説得していいか分からず
諦めてしまっていた。
もう無理か...そう思っていたとき、西先生が
珍しく声を出して耳打ちしてきた。
「これ、本当に恋なんじゃないですか」
「校長の初めての真実の恋だと?」
「あそこまで本気だということは、その可能性もあるかもしれないですよ」
校長に限ってそんなことはないと思うが...
もしかすると、ありえるのかもしれない。
一抹の可能性に賭け、私たちは彼を自由にさせてみることにした。
...というのは建前。
実際は教師がいつも校長の後ろを尾行して、
件の男子生徒に接近させないようにする。
私と西先生が、校長を尾行しているときであった。
なんと、校長があの男子生徒に話しかけている。
「チミ、その手に持ってるファイルは何かな」
「ひっ...!こっ、これは...」
「この学校に関する重要書類のコピーだね。
いつやったのかは知らないけど...鮮やかな犯行、実に惚れ惚れするよ!」
校長は頬を赤らめながら、そんなことを言う。
これは明らかに殺意だ。
やはり校長に恋愛感情なんてものは存在しない。
私は校長を止めるため、飛び出して割って入ろうとした。
だがそれを西先生が制する。
ちらりと見せられたメモ帳には、文章が書いてある。
「(まだです、まだ恋かも)」
「あんな恋があってたまりますか、私も人間の恋愛というものは
あまり理解できませんが」
「(だから黙って見てろよ 恋愛の形は人それぞれなんです)」
「は?」
西先生はいつもこうだ...
彼にかまっている余裕はない、今は校長を止めなくては。
そう思い、私はふたりの間に割って入った。
「校長、何をするつもりですか」
「おっと、僕たちの恋路の邪魔をするのかな?」
「あなたのそれは恋じゃありません、殺意です」
「根拠なんて無いだろッ!!」
瞬間、私の喉元にナイフが迫る。
私はそれを手で掴んで止めた後、力を入れて粉々に砕く。
男子生徒はこの隙に逃げたようだ。
獲物も逃がし、凶器も失った校長は
ひどく不機嫌といったようすで話し始める。
「はぁ、しらけるなぁ。チミはスクラップにされたいわけ?」
「教師不足の今、私を廃棄するほど余裕はないでしょう」
「僕正論って嫌い!!」
校長はしらけた様子で、男子生徒が逃げたのとは
逆方向に歩いていった。
一応心配になり、さらに尾行してみたが怪しい動きは特にない。
どうやら、完全に興味が失せてしまったようだ。
ひとまず安心し、私はほっと安堵した。
後から合流した西先生にもそのことを話し、
一件落着と思ったのだが......
「ごめーん、殺しちゃった」
「「「はぁ!?!?!?!?!?」」」
校長があの男子生徒の死体を持ってきたのは、
それから一週間後のこと。
興味が失せたふりをして、私たちの警戒を解き、
虎視眈々と獲物の喉笛を狙っていたわけか...
校長、やはり恐ろしい男だ。
そう考えていると、西先生が耳打ちしてきた。
「ほら、前までの校長だったら、本当に興味が失せてたはずです。
これは真実の恋だったんじゃないですか?」
「ああ...もうどうでもいいです」
殺したいほど大好きということか......?
どちらにしろ、はた迷惑であることに変わりはない。
私たちは死体を前にして、どう処理するかで頭を抱えた...
これが、淡本中学校の日常だ。
--END?--
【作品に込めた思い(必須)】
事実と差異がないように、教師本人らに話を聞きながら執筆。
淡本中学校の不思議な空気感を感じていただければ幸いです。
【ユザペ掲載は大丈夫ですか?(必須)】
YES。むしろしてほしい
【詩乃花事務所(仮)に所属されていますか?(必須)】
NO
【詩乃花事務所に所属は可能ですか?(所属されてない場合)】
NO