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鈍足 5
「中江、今日も私部活行かない。」
中江。
会いたくなかった。
責めてしまいそうで、会いたくなかった。
私は中江の顔を見れなかった。
「また?大丈夫か。」
「うん、大丈夫。ごめんね、顧問に言っておいて。」
私は中江に背を向けて歩いた。
「なあ。」
中江は叫んで、私の腕を掴んだ。
「え、何…?」
「高城、大丈夫か。最近元気ないぞ。」
中江はまっすぐこっちを見た。
なんだか怖くなった。
「離して…っ。」
私は中江の手を振り払った。
「大丈夫だから…。」
自分の気持ちを押し殺した、低く小さい声で言った。
本当は大丈夫じゃない。
これ以上話せない。
「じゃあ、またね。」
「おう、またな。」
私は逃げるように中江から離れた。
中江、ごめんね。
中江に怒ってしまいそうだった。
中江は悪くないし、明日香ちゃんも悪くない。
分かってるけど…。
女の本能で、怒ってしまいそうだった。
また手の甲に雫が落ちてきた。
最近泣いてばっかで鼻が痛い。
鼻詰まって、呼吸もままならない。
嗚咽混じりの泣き声は新種の動物でしかなくて、ただただ気持ち悪い。
誰にも泣いてる姿を見られたくなくて、
歩いていた足を速くして家に帰った。
「ここどういうこと?一次方程式使うの?」
莉亜は私の顔を覗き込んだ。
急いで目に溜めてた涙をゴシゴシと袖で拭く。
「わかんない。答え写しちゃえ。」
莉亜と図書室で勉強をした。
わかんないわかんないって言いながら、
めっちゃ書いてるし進んでる。
頭いいなら、一人で勉強すればいいのに…。
なんて、酷いこと考えちゃう。
私は黙々とワークを進める。
「てかさー、澪海。最近部活行ってないけど、いいわけ?前県央通信があるって言ってたけど。」
あー、そういえばそうだったな。
練習ずっとサボってるな。
いやでも、行きたくない。
「いいよ、別に期末の勉強してるからサボりじゃないし。」
「行きなよぉ、なんかあったの?」
私は莉亜に明日香ちゃんのことどころか、
中江が好きだと言うことまで言ってない。
そもそも莉亜はいつも忙しいので、
話している暇もなかったのだ。
最近は仕事を休ませてもらっているから話せるけど。
「…莉亜さぁ。」
「うん。」
「莉亜は好きな人いる?」
莉亜はうーんと唸った。
「いたけど、なんか冷めた。なんで?」
なんか冷めるって何?
そんなことあるのかな。
「いや…私も好きな人いたんだけど…友達と被っちゃって、どうしようって。」
莉亜は全て理解したようだった。
「あー、なんとなく状況読み込めたけど…、部活は行きな。そんなことで休んでちゃ、ダメだよ。」
私は必死に涙を堪えた。
それも莉亜に見透かされた。
「いい?人前で絶対に泣いちゃダメ。同情されちゃうから。同情されるたびに、人は大切なものを失うんだよ。だから、泣くのは一人の時にして。そして、泣いた分だけ強くなって。泣いただけ、大人になれるよ。」
莉亜は私の手を握った。
もう涙が溢れそうで限界だった。
「ねえ、人前で泣いちゃ、だめなの。」
「うん。でも、ここには誰もいないよ。」
莉亜の一言で、私は涙をたくさん流した。
嗚咽も抑えきれなくて、声を出しながら泣いた。
図書室だから、静かに泣きたかったけど。
莉亜にハンカチを渡されて、私は涙を拭いた。
「大丈夫だから。明日部活あるなら行って。みんなきっと…心配してるよ。みんな、それぞれ事情があっても部活に行ってる。あたしも、正直言うとモデル辞めたい。マネが怖いし。でも、中学生ってそんなもんだよ。50%くらい大人だもん。だから、耐えなきゃ。」
過呼吸な私の背中をさすりながら莉亜は言った。
「いい?あたしの考えだとね。好きな人は奪っちゃえばいいの。澪海はすごい喉が渇いてて、目の前に水がある。でも、そのうち水を受け取る人がほしいと言ったら、渡したい?そういう時は、渡しちゃダメなの。奪わなきゃダメ。すごーい罪悪感残るかもだけど。借りたものは返しちゃダメ。その代わり、貸したものは二度と返ってこないことを覚悟しなきゃダメなの。」
奪う?
それは私が幸せになれるかな。
「でもこれは、あくまであたしの考えだから。なんかもうどーでもいいならあげちゃえ。だから、貸してあげるのはどうでもいいものだけにしたほうがいいの。相手にどんなにお金を積まれても、自分の大切なものなら貸しちゃだめ。いらないものだけ貸せばいいの。だって返してくれないから。」
「ねえ、莉亜。それは、私は、幸せになれる?」
莉亜は少し考えて言った。
「なれんじゃない?」
莉亜はにんまり笑った。
莉亜は笑う顔が鈴がちりちりなるように、
爽やかで可愛い。
「莉亜。私、少しは大人になれた?」
「きっと、なれたよ。」
莉亜は同情するわけでもなく、肯定することも、否定することもしなかった。
ただ、そこにいて、笑ってるだけ。
でも可哀想なんて言われるよりも、
何倍も苦しくはなかった。
久しぶりに部活に顔を出した。
すると、顧問の尾崎先生が寄ってきた。
「おお、高城。中江から体調不良は聞いてあるから、できる範囲で練習していいぞ。3年に話はつけてある。」
あ、体調不良になってたんだ。
特に中江に休む理由言ってなかったけど。
「あ!澪海先輩〜!来てくれてよかったぁ!」
明日香ちゃんだ。
咄嗟に動揺を隠す。
「明日香ちゃん。ごめんね。最近体調悪くてさー。」
やばいやばい、いつもどんなふうに話してたっけ?
「ちょー、心配しましたよぉ!」
肩をペシっと叩かれた。
テンションについていけない。
「あははー、私も明日香ちゃん心配だった〜。」
「おーい、グラウンド挨拶するってよ。」
中江がこっちに来た。
「はーい、先輩行きましょ!」
手を引っ張られてグラウンド挨拶をした。
私は久しぶりの体操で少し息切れした。
サボるんじゃなかったな。
でも逃げないって決めたし。
ちゃんとやろう。
「ねえ、中江。」
私は中江に話しかけた。
「え、何。」
「あの…最近サボっててごめん。」
なんか、中江冷たくない?
「別にいいけど…。」
いや、絶対冷たい。
どうしたんだろ…。
私はなんとなく気まずいまま練習した。
中江と話せないまま。
45分ジョグが始まった。
中江にもし話しかけられたらと思って、
話のネタをずっと考えていた。
こんな炎天下の中45分走るとか顧問バカかよ尾崎も走れよ中江は大丈夫なわけ私息切れやばいよてか期末やばくない?勉強してる?私さー数学終わったかも何もわからん斉藤の教え方が下手だから何も理解できないあと…、
靴紐が解けていて私は転んだ。
膝を見ると血が出ていた。
「澪海ちゃん、大丈夫?足洗ってきな。休んでていいよ。暑いから、自分の教室で。私のリュックに絆創膏入ってるから、勝手に取っていいよ。」
先輩が駆け寄ってきてくれた。
「ごめんなさい、ありがとうございます。」
そう言うと、先輩は走って行ってしまった。
靴紐を結び直して、私は水道に向かった。
私は膝を洗って、絆創膏を貼った。
先輩優しいな、と思いながら上履きを履いて教室に向かった。
教室に入ると案外涼しくて、冷房がついていた。
「はぁー…。」
なんか泣けてきた。
中江なんであんな冷たいわけ?
隣走ってたのに、話しかけてくれなかった。
なんだよ、私が帰ってきたんだから喜べよ。
真面目ぶっちゃって、バカか。
心配もしてくれなかったし。
「バーカ。」
私は涙ぐみながらつぶやいた。
いぇいえいあぉいぅうう((?
鈍足更新!
ていうか結構真面目(?)な報告なんすけど……
わい陸上部に所属していましてね
高城ちゃんと同じ、長距離なんですよ!
でもですね……私の中学の長距離はきついんですよ…
で、短距離に移ろうかなと思っていまして…
まだ決まったことじゃないんですけど
これから顧問と親に相談して決めようかなって思ってます
実際長距離にいた1年生はやめたりしてる人がいるし実際1人は退部届出してましてね
なので、鈍足のネタが死ぬかもしれん!w
まあ一応一回大会出てるし、
話のネタはできあがってて練習メニューも覚えてるし…いっか!(((は?
まあとにかくそういうことです
あともうひとつなんですけど、
夏休みの間の自由……だっけか?((おい題名忘れんな
それのリクエストを受けたあと、少し低浮上になります!
別垢なんですけど、お友達に小説を書けと言われてから何ヶ月も経っていて…((4ね
なので夏休みの間はそっち動かすので、
この垢は放置状態になります!
一応プロフにも書いておくので夜露死苦
じゃあ私は夏休みをエンジョイしてきます!
読んでくれてありがとうございますた!