公開中
空の向こうのあなたへ
Mihael・Keehlへ
朝起きると、真っ先に下着を脱いだ。窮屈で奔放なブラトップとショーツ。
寝ている間の下着を脱いで、新しい下着を身につけて、机の上の冷めきったココアを一口飲んだ。苦い。チョコレートとは違う甘さ。やっぱり飲めたもんじゃない。
脱いだ下着はまとめてシーツの中に隠して、洗濯室に持っていく。だってきっと、隠さず持っていったら、朝いちいち変えるなんてもったいないって怒られちゃう。
誰にも見られないうちに、誰も起きていないうちに冷えた廊下を走る。透き通った窓ガラスから朝の光が差し込んで、床の木目をくっきりと浮かび上がらせる。鮮やかな光。ひややかな朝。さわやかな匂い。
世界はこんなに綺麗なのに、あなたがいない。
部屋へ戻って上着を着る。だぼついた黄色いセーターと光沢のある緋色のスカート。ださくて、かわいくて、私は大好きだ。
放置したココアをもう一度飲んで、顔をしかめる。嫌いな味もあなたの好物だと思えば飲み干せる。でも待って、あなたはココアが好きだったの?
私はあなたが生きていたときを知らない。どんな声だったのかも、その金髪がどんなふうに風に靡いたのかも、チョコレートのブランドはなにが好きだったのかも、知らない。
もう死んでいる男の人に、私は恋をしている。
足かけ7年、あなたが18歳、私が5歳。あなたはマフィアで、私はまだ両親のもとで暮らしていた。
その2年後、あなたは死んで、私はワイミーズハウスに入居した。両親がいなくなったからだ。
ハウスには面白い話がたくさんあった。Lという、ここにいる子なら誰でも知ってる世界の探偵の話。ニアという天才少年の話。そして、メロという少年の話。
メロを知る人たちは言う。「暴力的だった」「社交的だった」「チョコが好きでね」「いつも2番」「あれで気性さえ穏やかならね」……
彼らの話を聞く中で、私は知りもしない「メロ」に惹かれていった。二面性と誉れと孤独を持つあなた。高潔で意地悪で素敵なあなた。
お手紙を書こうと思った。空の向こうのあなたに向けて。でもやめた。そんなことは意味がないと思えたから。
その代わり、私はあなたを模倣し始めた。
金髪を内側に巻いた。黒いシャツを着た。チョコレートやココアをしきりに口にした。皆から聞ける断片的な情報で、私はメロの真似をしていった。
でもある日、それもやめた。馬鹿らしい。どうして私はこんなに頭が悪いのだろう。
悪い頭で考えて、今はただ祈ることにした。ありきたりだけど、冥福を祈るのだ。あなたがあの世で幸せでありますように。結局、こちら側の人間にできることはそれしかない。
あなた、ただあなたがもう何者にも惑わされないよう。幸せだけがあなたを待っているよう。
メロ、
ミハエル・ケール、安らかに。