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2話 本当の実力
——魔力の奔流が獣に直撃した瞬間、空気が震えた。
黒い閃光が獣の体を貫き、周囲の闇を一瞬で吹き飛ばす。獣は咆哮を上げ、地面をのたうち回った。だが、すぐに立ち上がり、俺を睨みつける。
「効いてる……けど、まだ……!」
リリスが叫ぶ。「闇だけでは足りません! 他の属性も——!」
俺は両手を広げた。すると、六つの魔法陣が空中に浮かび上がる。火、水、風、土、光、闇——それぞれが俺の意志に応じて輝きを増していく。
「よし……全部、使ってみる!」
まずは火。炎の槍が空から降り注ぎ、獣の足元を焼く。続いて水。鋭い水刃が獣の体を切り裂く。風が巻き起こり、獣の動きを封じ、土が地面から突き上げて体勢を崩す。
そして——光。
俺の手のひらに、まばゆい光が集まる。それは希望のように温かく、だが鋭く、闇を切り裂く力を秘めていた。
「これで……終わりだ!」
光の矢が放たれ、獣の胸に突き刺さる。悲鳴とともに、獣の体が崩れ、闇の霧となって消えていった。
静寂が戻る。
風が再び吹き、鳥の声が草原に戻ってくる。
リリスは俺の隣に歩み寄り、そっと微笑んだ。
「……すごい。神託の通りです。あなたは、この世界の希望です」
俺はまだ息を整えながら、手を見つめた。
「これが……俺の力……」
リリスは頷く。
「これから、あなたには多くの試練が待っています。でも、私はずっとそばにいます。共に、この世界を救いましょう」
その瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。
俺は、異世界に召喚された“転移者”。
そして今——運命が、動き出す。