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《序章》『入学式に向けて』
─春の暖かく心地よい光が、薄暗い部屋の窓から差し込み、部屋を明るく照らす。
少し空いた窓の隙間からは風が入り込み、カーテンを揺らし、頬を優しく撫でては通り過ぎていく。
「ん……。」
ピクリと片眉を動かし、重い瞼を持ち上げる。朝の光に目が慣れず、目がチカチカして痛い。
ぼやけた視界のまま上体を起こし、ベッドの横にあるサイドテーブルの上に置かれたメガネを手に取り、スチャリと装着する。
「ふわぁ……顔洗わないとな。」
腕を伸ばし、欠伸を一つ溢すと、ベッドから降りて自室のドアノブを掴み、押すようにドアを開けて部屋を出る。
「シアン、今日入学式ね。準備はできた?」
一階に降りて廊下を歩く途中、キッチンからひょっこりと顔を出し、そう温かく微笑みながら問いかけてくるのは俺の母だ。少し心配性な部分もあるが、とても優しく、いざという時には頼りになる。
「うん、もう準備できてる。楽しみだな。」
俺がそう笑って返すと、母も「そう」と満足そうに、安心したように笑って朝食の準備をする。
洗面台の鏡の前に立つと、メガネを外し、蛇口を捻り、出た水を両手で掬い、顔にかける。寝ぼけていた頭の中がスッキリと水で洗い流され、ふわふわのタオルで顔を拭く。
「はぁ…よし。」
タオルを置いて再びメガネをかけると、自室へと戻り学校指定の制服へと着替える。そして部屋を出てリビングへと降りると、既に朝食が並べられたテーブルの椅子に腰掛ける。
やがて食べ終わると、ピーンポーンと玄関チャイムの音が聞こえる。
「あら、お友達が来たのかしら。じゃあ、お母さん行ってくるね。」
母がいつの間にか仕事着に着替え終わり、バッグを肩に掛けて玄関へと向かっていく。
「行ってらっしゃい。」
俺はそう言って手を振ると、母も嬉しそうに手を振りかえし、家を出ると同時に入れ替わりに二人の人影が見えた。
「おはよう、今日、入学式だね。」
優しく笑顔で微笑みながら喋りかけてくるのは、俺の幼馴染でもあり親友である「マゼンタ」だ。明るく鮮やかな赤紫色のウェーブがかかった髪を揺らし、リビングに顔を出す。
「ねー、早く行こうよ〜。」
続いてマゼンタの後ろからひょこりと顔を出したのは、黄色いウサギのぬいぐるみを両手に抱えた、何処か子供っぽい一面を持つ「オーラ」。名前が女の子っぽいが、見た目は完全に男である。
「はいはい、分かったよ。」
ため息をつきながら、椅子から立ち上がり、食器を皿洗場へと置いてカバンを手に取って二人の方へと向かう。俺の緑みを帯びた明るい鮮やかな青色の髪が風によって揺れる。
玄関のドアを閉め、鍵をかけ、先で待っている二人の後ろ姿を追いかける。
これから俺たちが向かう『色彩学園』には、どんな出会いが待っているだろうか─。
──《登場人物》──
『シアン・レイシア』
『マゼンタ・フール』
『オーラ・ウェイン』
──《次回予告》──
第二話『入学式での出会い』