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#5 ネットとメール
わたし・|竹崎杏梨《たけさきあんり》は、不登校だ。
なんらかの特定の理由があるわけじゃない。
ただただ、居づらい。違和感がある。なんとなく、無理。
そんな理由で学校をさぼるなんて、かっこ悪かった。だから、心配してくれるミホたちにも会えない。
《アン@ネッ友募集
今日も天気は良くないな〜。でも、曇りは暑くないからけっこう嬉しい!》
いいね、コメントは全然つかない。閲覧数だって、1桁だ。
やっとついたかと思ったら、それはミホとアヤカ、レナたちのもの。
わたしのプロフィール欄にいくと、ネッ友がずらりと並んでいた。音信不通の子だっているけど、みんな大切だ。
それに比べ、リア友欄にはミホ、アヤカ、レナしかいない。
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昼下がりに投稿したが、なんとなくもう一度、6時ぐらいに投稿してみる。
《アン@ネッ友募集
今日も疲れた〜。相変わらずの曇り具合、さいこー》
あっという間にいいね、コメントがつき、閲覧数が2桁になる。
昼下がりは、学校にいるのが一般的。
そんなことを痛感させられ、痛みが走る。
《ゲストさん
昼も投稿してて、どうみても不登校なのになんで疲れるんだよwww曇りは最悪だろwww》
そっこうミュートして、また光る画面を睨んだ。
ネッ友たちが、コメントを寄せてくれている。
でも、全然笑っているとか、にこやかな顔が思い浮かばない。
怖くなる。
相手は、小さな女の子かもしれない。
普通の女子高生かもしれない。
サラリーマンかもしれない。
おばあちゃんかもしれない。
でも、
ミホ、アヤカ、レナのコメントには、明確に笑っている顔が思い浮かぶ。
ベッドに横たわって、スクロールして、ふつうの顔から笑っていく、しわが増えるところまで、完璧にわかる。
本心が見える。
そして、わたしは、《アン@ネッ友募集》の名前を変えた。
ネッ友なんて、そんなにいなくていい。
大切な人がいれば。
ネッ友とか、リア友とか関係なく、
信頼できる人がいれば。
数じゃなくてもいいんじゃないか。
その時、インターホンが鳴った。
お母さんが出る。
「あら、杏梨の友達の…」
という、よそ行きの声が聞こえてきたのに、そう時間はかからなかった。