公開中
禁じられた研究
※一人称が「俺」の時はサイナ。一人称が「僕」の時はレイ。
※最初はマフィラ視点
俺がマフィラとして、生き始めた地。
セイラと出会った地。
そして、俺が初めて、恋をした日。
俺のすべての始まりはここから。
冷たく、穏やかな風が俺の背を押した。俺は一歩前にでた。苔と蔦で覆われたレスピオール都市は朝日に照らされ、紫色に光り輝いていた。
ここに、セイラのすべてが隠されている。
「待ってろ。セイラ」
マフィラは希望と期待を胸に、無意識にそう呟いた。
---
サイナ視点↓↓↓
---
あの男と初めて会った時、俺と一緒だと思った。感情の無い、操り人形。ただ、それは違った。彼は、しっかりと心を手に入れた。俺とは違う。罪のない方法で。俺が、最初に手に入れた感情は、
`嫉妬`
---
レイ(サイナ)視点↓↓↓
---
混ざって断片的な、ぐちゃぐちゃな記録。僕はサイナなのだろうか?それとも、別のなにか?
「レイ。あれが、レスピオール都市ですか?」
感情の無い言葉に、僕は顔を上げた。隣を見れば、ユイナがいた。
「レイ」
後ろを振り返ればルシフェルもいた。感情の無いその声だけが、僕を『レイ』として繋ぎ止めていた。僕は『レイ』。この名前はセイラに貰ったんだ。……違う。僕にとっては母だ。俺にとってはセイラだ。違う僕は、『レイ』だ。
「研究結果とやらを探そう」
マフィラに言われて、俺は顔を上げる。
「それなら、お前と最初に会った地点に」
僕の口が勝手に動く。僕の半分はサイナ。なんで、そうなったんだろう?答えは、
レイは無意識の内に、マフィラと同じ方向を見ていた。『オズドワルド協会』。彼と俺が初めて会った場所。そして、
「秘密が眠る場所……」
レイはそう呟くと、オズドワルド協会へと駆け出していた。母の研究を目にするために。
---
マフィラ視点↓↓↓
---
レイがオズドワルド協会へ駆け出した時は驚いた。きっと彼の中にサイナがいるのだと思った。俺も、必死に追いかける。レイの足は止まることなく、崩れかけた協会へと向かっていった。レイに追いついた頃には、レイの姿は跡形もなく消えていた。
「レイ!どこだ!」
「地下」
感情のない声。ユイナが代わりに答えてくれたのだと知る。
「先に行って」
「お前さんは?」
「ルシフェルと、祈ってる」
「………」
俺はちょっと迷った後にはユイナの手を掴んだ。
「祈ってもなんにもならない。行くぞ」
俺はユイナとルシフェルと一緒に、地下へ続く階段を下りた。階段を下りた先は、牢獄のような場所で、奥だけ僅かに光が射していた。ぼんやりと日光に照らされたそこは、椅子だった。正確には、椅子と机。俺は、机へと真っ直ぐに向かう。机には案の定、鍵付きの引き出しがあった。
「鍵がない」
レイは言う。俺はそれに答えなかった。鍵なら、俺が持っている。俺は、お腹をぐっと押す。そして、口から、小さな鍵を出した。
「不清潔です」
ユイナが真顔で文句を言う。
「文句を言うな」
俺はそんなユイナを窘めた。そして、鍵をゆっくりと開ける。そして、中に入っていた古いノートを取り出した。表紙には「実験日誌」と書いてある。マフィラはそれを、途中から見てみた。
---
■月■日
成功だ。いや、これは失敗でもある。人類は、この研究に手を出してはいけなかった。人類が滅びたのは、そのせいであると思われる。きっと私も殺される。この研究を後世に託さなければならない。私とは違う方法で、アンドロイドに心を持たせなければならない。後世のためにも、ここに記しておこう。とがめてもらって構わない。こんな研究をした、私が馬鹿だったと。アンドロイドが心を持つには、心を持った者を、殺さなければならない。
詳細は次のページへ
なぜ、我は暗い方へと持って行くのでしょうか??マフィラ視点が一番書きやすい。